ルネサンス精神の深層: フィチーノと芸術 (ちくま学芸文庫 シ 16-1)

  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (490ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480087294

作品紹介・あらすじ

マルシリオ・フィチーノ(1433‐99)はイタリア・ルネサンスを代表する哲学者。「プラトン・アカデミーの長」であり、プラトン、プロティノス、ディオニュシオス・アレオパギテス、「ヘルメス文書」などの翻訳者にして『プラトン神学』の著者である彼を軸に据えると、ルネサンスの隠された精神の動因とその広がりが見えてくる。プラトン主義、ヘルメス主義、古代神学等々の大復興は、いかなる思想的・芸術的風土を創り出したのだろうか。本書は、平板なルネサンス理解を大きく超える気運をもたらした先駆作であり、著者の麗筆は、数々の神話的形象の下にダイナミックな美的宇宙を開示して余すところがない。待望の改訳決定版。

感想・レビュー・書評

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  • ルネサンスは、ギリシャ世界を現代に再生させると息巻いた、当時のヨーロッパ全体で花開いた芸術運動です。特に中世まで権威を持ったアリストテレス注釈も、極められた後に尻すぼみとなり、変わってプラトンを中心にした新プラトン主義という一派が不穏な気配を醸し出していた。宇宙神学を最終的に課題にしたフィチーノなどのプラトン派が、よくモデルにしたのが、デミウルゴスという存在だ。プラトンのティマイオスにて登場したデミウルゴスは、宇宙創造の神格で、イデアの理想的観念を現実界に、模倣をしながら、実現していく存在。新プラトン主義は、プラトンの詳細かつ完全なる注釈を著そうとする動きの中で、かなり自由な宇宙的と云っても良い哲学大系を築いていった。ヘルメス主義などの流れを強く受け継ぎ、神秘的な異端性に染まっていく。日本の国学再生のドラマも、江戸後期のルネサンスと云っても良く、本居宣長の古事記伝が、日本神話の総体的注釈を狙ったものである事は、古代の復古を願うルネサンス(復活・再生)と位置付けられるだろう。古代の奥義を現代に再生させる事は、泥から金を生む錬金術とも親和性があると云える。派生的に分かれていき、異端に組み込まれていった思想は、魔女を生んだし、国からの弾圧を受ける運命にあった事も、ルネサンスの裏にあった真実である。フィチーノという人物に焦点を当て、神秘の淵から宇宙的な飛躍を遂げた新プラトン主義の全貌を、本書は大きく紹介している。

  •  フィチーノの思想を中心に、ルネサンスの(特にフィレンツェの)哲学・思想を読み解く。内容は難解だ。何時も思うのだが、ルネサンス期の哲学には入門書と、この本のような上級者向けの間を埋めるものが無い。誰か書いてくれ。そして、訳者後書きのヴァールブルク学派の話はとても好きなんだけど、ユングの思想と絡ませるのが嫌いだ。好みの問題で。分析心理学は分析心理学だけでやろうぜ。

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著者プロフィール

(André Chastel)
1912年パリに生まれる。イタリア・ルネサンスを専門とした美術史家。1957年から1969年までパリ大学文学部美術史学科教授を務めた後、1970年から1984年までコレージュ・ド・フランス教授として教鞭をとる。ド・ゴール政権での文化相アンドレ・マルローと近しく、1964年の「フランス記念建造物及び芸術的富の総目録」、通称「総目録」の作成を提言した。1975年に碑文・文芸アカデミー会員に選出。1990年死去。邦訳された主な著作に、『グロテスクの系譜』、『ローマ劫掠――1527年、聖都の悲劇』、『ルネサンス精神の深層――フィチーノと芸術』などがある。

「2019年 『遺産の概念』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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