動物と人間の世界認識: イリュ-ジョンなしに世界は見えない (ちくま学芸文庫 ヒ 11-1)
- 筑摩書房 (2007年9月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (202ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480090973
作品紹介・あらすじ
ある日、大きな画用紙に簡単な猫の絵を描いて飼い猫に見せた。するとすぐに絵に寄ってクンクンと匂いを嗅ぎだした。二次元の絵に本物と同じ反応を示す猫の不思議な認識。しかしそれは決して不思議なことではなく、動物が知覚している世界がその動物にとっての現実である。本書では、それら生物の世界観を紹介しつつ人間の認識論にも踏み込む。「全生物の上に君臨する客観的環境など存在しない。我々は認識できたものを積み上げて、それぞれに世界を構築しているだけだ」。著者はその認識を「イリュージョン」と名づけた。動物行動学の権威が著した、目からウロコが落ちる一冊。
感想・レビュー・書評
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ユクスキュルの環世界の話を中心に、動物や虫それぞれの世界の見え方、人間の世界の見え方の違いを書いた一冊。
詳しく知ろうとすると難しい部分があるものの、ざっくりとどういうことなのか学ぶ分にはかなりわかりやすくためになる本でした。
今でいう「世界に対する解像度」があがる話だと思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
勉強になった⁉️
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同じ内容をダラダラと繰り返しており、くどい。論旨をまとめるとせいぜい3ページくらいで収まることを、ひたすらに薄めてページ稼ぎをしていると感じた。
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ドイツのユクスキュルが提唱した「環世界」と「唯幻論」を展開した岸田秀氏を踏まえて筆者はイリュージョンという言葉を使っている。非常に面白かった。昆虫も動物も人間も知覚の枠の中でしか生きられないという事だ。輪廻や死の発見まで言及しており、納得がいくものだった。
「新しいイリュージョンを得ることを楽しんでいる」(p195)と書かれているように、私自身も実践していきたいものだ。 -
【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/738084 -
人間以外の動物たちが、どのように自分の周りの世界を知覚し認識しているのかを興味深く知ることができる前半と、人間がいかに倫理的な(つもりの)枠のなかで世界を捉えているかを、生物学から哲学へと枠をまたぎつつ気づかせてくれる後半で構成された一冊です。平易で読みやすい文体でした。
動物行動学者である著者が、「環世界」「イリュージョン」をキーワードに人間・動物がいかに世界を構築するかを説きます。
同じ環境にいても知覚能力に差があれば、まったく違う世界になる。紫外線を見ることができるモンシロチョウは、人間とは違う風景を見ていることでしょう。視覚は微弱でも嗅覚がするどい動物は、嗅覚をメインに世界を構築するでしょう。でも、嗅覚で世界を構築するって何だろう?人間には想像すらできません。そんな興味の途切れない不思議さを味わえます。生き物はすべて、それぞれが知覚できる範囲でしか世界を切り取れないし、本能や行動様式に沿った形で都合よくものごとを選びとって世界を認識しているのだなという気づきもありました。
そして後半部を読みながら「人間は他の動物より優れている」という無意識に付け上がったようなところが自分の中にあったことに気が付きました。「あらゆる生物のなかで人間こそが唯一 "客観的に" 世界を捉えている」「人間が真理に一番近いところにいる」となんとなく思っていたかも、と…
本書の最後に著者は「学者や研究者はいったい何をしているのだと問われたら、答えはひとつしかない」と語り、著者が導き出した答えがなんともユーモラスで思わず息がもれました。とても味わいのある読後感はこのオチのおかげかもしれません。おすすめです。 -
【2021年度「教職員から本学学生に推薦する図書」による紹介】
川村悟史さんの推薦図書です。
<推薦理由>
本書のサブタイトルは「イリュージョンなしに世界は見えない」.折角大学生になったのだから「客観的世界」なるものに疑念を持ってしかるべきです.ネコの世界,ダニの世界,チョウの世界…動物たちの生きる「環世界(かんせかい)」を解説しながら,それは当然人間にも当てはまるというお話です.
図書館の所蔵状況はこちらから確認できます!
https://mcatalog.lib.muroran-it.ac.jp/webopac/TW00365972 -
以前から「自分が感じている世界と他の人が感じている世界は本当に同じなのか」という疑問を持っていましたが、それに対してのひとつの解答を得られたような気がしました。
文章も読み易く、読書が苦手な私でもサクサクと読み進めることができました。
丁度、写真家クレイグ・バロウズさんのUVIVFという技法を使った花の写真をネットで拝見したところだったので、モンシロチョウの世界はこんな感じなのかしら?と、思いを馳せつつワクワクしながら拝読させて頂きました。 -
日高敏隆『動物と人間の世界認識 イリュージョンなしには世界は見えない』を読んでた。かなり平易な文章ですごくサクサク読めた。動物や人間の認知の仕組み的な本なのかなと思ってたら、ミーム概念からさらにその先の哲学的領域まで走り抜けた。
著者は日本における動物行動学の草分け的存在ということで、わりと現在よく聞くように認知のことを考えてるように見えた。というか2003年の本だ。イリュージョン、なかなか面白い考え方だ。
実際にさらに最近の認知科学とか脳科学とか、そのあたりの学問では世界を認識するしくみについてどのように考えられているのだろう。また、ユクスキュルの「環世界(環境世界)」のあたりも深掘りすると楽しそう。