現代哲学 (ちくま学芸文庫 ラ 4-3)

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  • Amazon.co.jp ・本 (532ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480096166

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    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/737974

  • 世界の有り様、人間の有り様をかなり緻密に考察しているが、目を引くのは物理の解説に多くのページを割いていることだろう。当然考察に関わってくるものであるが、それ以上に物理の発展が哲学者に与えた衝撃が大きかったのではないかと思う。哲学こそが世界、人間とは何かを解き明かそうとしていたところに、物理が先んじてしまった、特に量子力学が世界を確率で記述されうることを示し、相対性理論が時空の概念を変えてしまったため、人間を含めた物質的な「モノ」の存在が危うくなってしまった。しかもそれらは正しいこととして受入れられてしまった。この衝撃は相当なものだっただろう。そこで哲学と科学の折り合いをつける必要が出てきたのだろう。そのため、物理現象を含めて思考、心の動きを考察することとなり、ただでさえ回りくどい哲学的言い回しが余計に回りくどくなってしまっている。そしてそれは、新たな問題を提起してしまった。あるモノを指したとき、果たして皆が同じものと認識しているのか?違う捉え方をしているのではないかという漠然とした疑問が、科学的にありえる、すなわち確率の偏りによって本当に違うものに見えている可能性が出てきてしまった。この問題について本書では直接的にはほとんど扱われておらず、また扱いに苦慮している様子がうかがえ、なにより明確な答えを避けている。しかし、哲学に物理的な物の見方を厳密に導入する試み、そしてこの問題の指摘はにより哲学を次のステージへと進めた功績は大きい。

  • さすがラッセル。文章は知的センスに溢れている。訳者の文章力も素晴らしいのでしょう。ただし、難解過ぎて理解できない。最後の解説で少し理解できたが、それでも理解できなかった。ただ、ひと時の知的探訪をするには最高。

  • 数学の分野でも著名な書物を書いたバートランド・ラッセルは、やはり、超一流の知性である。その超一流の知性が、このように読みやすく、たいへんわかりやすい哲学書を書いてくれたことに賛嘆する。ラッセルの哲学はケレン味がなく、バランスの取れた温厚なものなので、より一層親しみが湧く。
    1927年刊行の本書は、当時心理学に革命をもたらしたワトソンの「行動主義」とかなり真っ正面から対決し、延々と言及し続ける。現在にあっては、ワトソンの行動主義心理学など極論ばかりの偏屈な言説にすぎず、もはや部分的にしか同意できる部分はないということは明らかであるが、本書刊行当時はよほど話題だったのだろう。しかしラッセルは緻密にこれを批判すると共に、その優れた部分もちゃんと指摘している。
    さらに、物理学分野においては陽子-電子の物理学説と、相対性理論を詳しく論じている。当時最先端だったこれらの新奇な(と当時は映ったことだろう)学説を、ラッセルは詳しく論じる。
    しかも、科学万能主義ではなくて、科学的な知を踏まえた上で「哲学はなにをなしうるか」をきちんと呈示しており、見事である。
    当時は超ひも理論もまだなく、脳科学の爆発的な進歩も到来していなかった。しかし、そうした最新の自然科学の成果を踏まえてもなお、本書のラッセルのスタンスはほとんど修正の必要がないように思える。
    こういう第1級の書物に、若い頃出会えていたらなあ、と思う。

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著者プロフィール

1872-1970。イギリスの哲学者。17世紀以来のイギリスの貴族ラッセル家に生れる。ケンブリッジ大学で数学・哲学を学ぶ。1895年ドイツを訪れ、社会民主主義の研究に打込む。1910-13年にはホワイトヘッドと共に画期的な著作『プリンキピア・マテマティカ』(3巻)を著わし、論理学や数学基礎論に貢献した。第一次大戦が勃発するや平和運動に身を投じて母校の講師の職を追われ、1918年に4カ月半投獄される。1920年労働党代表団とともに革命後のロシアを訪問。以後社会評論や哲学の著述に専念、ヴィトゲンシュタインとの相互影響のもとに論理実証主義の形成によって大きな影響を与えた。1950年哲学者として3度目のノーベル文学賞受賞。また原水爆禁止運動の指導者のひとりとして99歳の生涯を閉じるまで活動を続けた。多数の著作のうち邦訳の主なものは『西洋哲学史』(1954-56)のほか『懐疑論集』(1963)『ラッセルは語る』(1964)『人生についての断章』(1979)『私の哲学の発展』(1979、以上みすず書房)『哲学入門』(1965、角川書店)『ラッセル自叙伝』(全3巻、1968-73、理想社)など。

「2020年 『西洋哲学史【新装合本】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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