士(サムライ)の思想: 日本型組織と個人の自立 (ちくま学芸文庫 カ 42-1)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480097361

感想・レビュー・書評

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  • 日本的な組織について旧来のステレオタイプを修正するなかなか勉強になる内容だった。もう少し西洋との比較があるとよかったのだけど。
    日本型組織の原型は中世の武家にあり、それが発展し最盛期を迎えたのが江戸時代後期であった。そして日本型組織ではイメージに反して、個人を尊重した能力主義が、なんと制度として社会的に確立していたと。また、伝統の形式と実情に即した制度を上手く統合した合理的な社会でもあった。幕末から明治初期の動乱を真に優秀な指導者のもとに潜り抜けることができたのはそのおかげだそうで。
    つまり、今現在において日本型組織が停滞しているのは確かだが、それは組織の仕組みが一律に悪いわけではないということになろう。では何が原因で日本型組織が機能しなくなってきているのかというと、どうも成員の能動性が弱まっていることにあると。江戸時代には武士道が個人の思想規範として強く働いていた。現代ではそういうものがない。それによって個人の能動性に強く依存する旧来の体系では個人と組織の相性が悪くなってきた。要するに変わったのは人々の方だと。そういうふうに理解した。
    まあ旧来の日本型組織がそれなりに高度なのは分かったのだけど、現代にそぐわないとの思いは変わらなかった。武士道が担っていた個人の自主性をどうやって補うか、同時に自主性がなくても効率的に機能する体制をいかに作るか、最適解を見つけるのは難しそうだ。

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著者プロフィール

国際日本文化研究センター名誉教授、大阪学院大学法学部教授。博士(文学)(京都大学)。専攻は日本近世史・武家社会論。主な著書に『主君「押込」の構造』(平凡社)、『士(サムライ)の思想―日本型組織・強さの構造』(日本経済新聞社)、『武士道の精神史』(ちくま書房)、編著に『徳川社会と日本の近代化』(思文閣出版)、『徳川家康─その政治と文化・芸能』(宮帯出版社)ほか多数。

「2020年 『信長の自己神格化と本能寺の変』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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