説得 (ちくま文庫 お 42-7)

  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (430ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480425348

感想・レビュー・書評

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  • 8年前に別れた恋人と再会する話。最後の会話が聞こえていたっていうのがオースティンらしい。名誉とか自分がどう思われているかにしか興味ない人っているよなー、と思いながら読んだ。8年前の説得はアンを心配するラッセル夫人なら当然と思うけど、それを乗り越えられなかったことが悔しい思われるのかな。大切な人と離れ離れになってしまった人におすすめ。

  • オースティンは本当に素敵だ。頭をからっぽにして、難しいことを何も考えずに、ただただ小説世界の面白さに没頭できる。大人になると色々とこまっしゃくれた小説ばかりに取り囲まれてしまって、こういう単純なようでいて読ませる力のある小説に出会うと、「小説を読むってこういうことだった」と思い出される感。27歳の主人公、最年長だがしみじみとした味わいがあり、繊細な恋の駆け引きが相変わらず読ませる。主人公が高潔さを最後まで失わないというのも信頼して読めるところか。「説き伏せられて」という邦題もあり、私は通読した上で「説得」よりも「説き伏せられて」のほうがぽいかもと思った。アンは一度「説き伏せられた」女の子なのだ。「られて」というところに、説得のその後を感じさせるような余韻があって私は好きだな。

  • オースティンの物語の主人公たちはいつもジェントリ出身であり──それは当時の文学界(作家・批評家・読者たちの構成する世界)のあり方の一端を想像させるけれど──、当時で言えばよほど生活に余裕がある人びとではあるけれど現代的にいえば「上流」に近接した「中流」である彼らの精神世界は、意識されるものであれそうでないものであれ、隣接する"クラス"との関係性により規定されている。

    上級貴族階級に対する憧れ・上昇願望はいつも公式の階級制度(爵位)によりさまたげられており、商人階級や農民階級に対する優位は彼らの経済的成功によりいつも脅かされている(産業革命、植民地帝国の版図拡大や第一帝制フランスとの戦争がこれを助長した)。

    したがって、公的権限の制約、経済的優位性の危機、構成メンバーの流動性(≒歴史と伝統の欠如)という事態に直面して、「教養」や「理性」、「礼節」や「気品」といった概念が持ちだされる。ようするに用法次第でどうとでもなる概念であり、メンバー間の暗黙の合意のもとで使用されることで"閉鎖性"を創り出すことば。それらの涙ぐましい努力について、作者は明らかにときに真剣にときに茶化して、繰り返し言及している。

    加えてオースティンの作品を読んでいて気が付くのは、19世紀初頭のそうしたジェントリの子女たちのこころが、いつもどちらかと言えば上方への同化願望ではなく下方への差異化願望により多く占められていることであり、当時における男女の対称性が透かし見える気がしなくもない。つまるところ上昇婚よりも、その反対のほうが大いにあり得るし、実際女性の側で何か"手を打つ"ことができるとすれば、それはやはり自身の地位を守るという方面においてだったということ。

    作者は、以上のようなことをどこまで意識的に自身の作品の中に織り込んでいったのか。それやこれや考えながら読むことができるのがおもしろい。

  • オースティン作品では一番のお気に入り。大した事件がないのに続きが気になって、一気読みしてしまう。再読しても何か発見がある感じで飽きない。

  • 映画「ジェイン・オースティンの読書会」の中で一番印象に残った作品。

  • 面白かった。オースティンハズレなし。ただ、オースティン最後の作品だからか円熟味が凄すぎて渋く、難しい。魅力部分がストレートじゃないのでじっと考えてわかる感じ。5作読んで一番しっくりこなかった。わりと年齢きてるけどまだまだ重ねないと飲み込みにくいのかもしれない。もっと年取ってから再読したい。喜劇的キャラは今回も光ってた。よくこんなにも被らず多彩なキャラを生み出せるものよ。

  • 久々にオースティンが読みたくなり、積読してたこちらを手に取ってみた。
    最初は登場人物の多さに慣れなかったけど、慣れていくうちにあっという間に進んだ。
    相変わらずオースティンの書く人間模様やキャラの濃さはすごい。父親も姉も妹もだいぶぶっ飛んでるのにアンはよく控えめに育ったなと関心。周りが周りだから、逆に自分が冷静になって客観的に物事を見れたのだろうか。
    心が移り変わりやすいのは男なのか女なのか問題はこの時代から論争されているのだなと面白かった。
    破天荒な展開も多く、(ほぼ破天荒かもしれない)特にルイーザ事件には笑った。ウェントワース大佐の描写にこれは嫉妬だよね…?と想像しながら読むのも楽しかった。
    さすがオースティンといった作品でした。

  • 小説のおもしろさって、ストーリーはもちろん、主人公が魅力的かどうかによって決まる部分も大きいと思う。
    ジェイン・オースティンの描く主人公は、どれもタイプは違うけど、それぞれとっても魅力的!
    今回のアンは、知的で優しく、それでいて人間臭いところもある素敵な女性。
    しかも、紆余曲折の後、最後は必ずハッピーエンドなのも良い。
    主人公を取り巻く脇役たちも、キャラ濃いめで楽しませてくれる。やれ家柄がー、玉の輿よー、いや容姿大事だよーとか、200年前の人たちも同じこと言ってたのかと妙な親近感もわく。
    不思議な魅力を持つオースティンの世界、ハマる人はハマると思います。

  • 私にとって二作品目のジェインオースティン。彼女の書く美しい文章と読者を引きつける魅力的な主人公がたまらなく好きです。世界観もお洒落でどストライクです。あっという間に読了しました。

  • ジェーンオースティン作品2つ目。
    高慢と偏見の主人公とも違う、少し内向きなアン。自分は彼女と似た性格だからこそ、自分のことを書かれているように、心理描写の一つ一つに大いに共感しながら一気に読み終わった。
    タイトルは日本語だと説得。英語だとpersuasion
    説得と訳すなら英語体取りはconviction であるべきだと思う。この2つの言葉の違いは、疑問の余地の有無。persuasion の場合は、納得してはいるが、しきれておらず、まだ一抹の不安と疑いが残っている。
    アンはとても冷静で、感情と人の分析に長けているけど、この人はこうである、と言い切る自信はない…言い切ることができるものではないと思っている。時と場合によっていろんな一面を持つのが人間だと分かっているから。

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著者プロフィール

ジェイン・オースティン(Jane Austen)
1775年生まれ。イギリスの小説家。
作品に、『分別と多感』、『高慢と偏見』、『エマ』、『マンスフィールド・パーク』、『ノーサンガー・アビー』、『説得されて』など。
1817年没。

「2019年 『説得されて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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