美麗島まで (ちくま文庫 よ 23-1)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (341ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480426833

作品紹介・あらすじ

東京に生まれた沖縄人二世の著者が、母の残した言葉を頼りに家族の歴史をたどる旅に出た。沖縄本島、戦後密貿易の行われた与那国島、そして母の育った台湾…人に出会い、巡り合わせの不思議に出会い、掘り起こされる数々の事実は、日本、沖縄、台湾近代史と交錯し、明治以来、日本、台湾、アメリカの狭間で揺れながら生きた沖縄人たちの姿を浮き彫りにする。

感想・レビュー・書評

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  • 世界はもっと豊かだし、人はもっと優しい (ちくま文庫)つながり。台湾で医院を開いた母方の祖父、舞台女優だった母方の祖母、官僚の父、フリーアナウンサーの先駆けだった母、画家の伯父。ロシア、台湾、与那国、東京、那覇、とその足跡と日本・琉球の近代史を重ね合わせて語られる家族史。森鴎外の日記に出てくる祖父。母の放送局時代の仕事でつながりのあるジョン・カビラ、川平慈英兄弟の父。単純な善人な面だけではない、女にだらしなかったり、謹言だったり、お嬢様育ちすぎて決められた額でのやりくりができなかったり、今から考えると首をかしげる運動と繋がってたり、熱烈な愛情を注ぐも一度裏切られたと感じると放り捨て見向きもしなかったりと、様々な面を描きつつ、けれど、彼らが何を考え、何を見て、何を成し遂げようとして、どのような道筋をたどったか、丹念に辿る旅は、濃密だった。/「ちっとも苦しくなんかなかった。お金はなくても若さがあった。何も恐ろしくはなかったわ。あそこには”自由”と”希望”があったもの」。2・28事件を真正面から取り扱った侯孝賢監督の「非情都市」も観てみたいと思った。

  • 沖縄にルーツを持つ、与那原恵の系譜を辿るエッセイ。彼女の母は、彼女が12歳のときに病で没した。

    美麗島というのは現在の台湾のことである。彼女の母方の祖父は沖縄出身であったが、日本占領下の台湾で医師として名士として名を残したため、母は台湾で育った。彼女は、子供時代、繰り返し聞かされた母の美しい台湾の記憶を手がかりに、今は亡き両親や親族の足取りを、廃藩置県から戦後に至るまで辿っていく。その中には、森鴎外だったり、ゾルゲだったり、意外な名前がふらっと出てくるのだ。

    本書は、ただ単に個人の系譜を辿るだけではなく、本土ではあまり知られていない沖縄の歴史を解説しながら巡っていくので(首里士族のあり方、石垣島の台湾移民、与那国島の密貿易など)、歴史と人々の足取りが交差して、ときどき人名が脳裏からとんでゆくのだった。それでも、これだけ取材をすれば、系譜が辿れるというのは興味深いものであった。

  • 頼朝も信長も活躍しない、もう一つの“日本”史。
    美麗島(びれいとう)は台湾の別名。ポルトガル語の「イラ・フォルモサ(なんて美しい島だ)」に由来するという。

  • 娘は母と父とその母と父の姿を追って、沖縄から石垣島、そして、台湾へと。現実の生活は東京椎名町であったが、そこに来るまでの母と父の生涯は想像のつかないなんともダイナミックな時代の潮流の中にあった。家族の由来を知ることは、自分の自分たるありかをさぐることにほかならない。

  • 娘は母と父とその母と父の姿を追って、沖縄から石垣島、そして、台湾へと。現実の生活は東京椎名町であったが、そこに来るまでの母と父の生涯は想像のつかないなんともダイナミックな時代の潮流の中にあった。家族の由来を知ることは、自分の自分たるありかをさぐることにほかならない。

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著者プロフィール

与那原恵
1958年東京都生まれ。96年、『諸君!』掲載のルポで編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞作品賞を受賞。2014年、『首里城への坂道――鎌倉芳太郎と近代沖縄の群像』で第2回河合隼雄学芸賞、第14回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞を受賞。他の著書に、『美麗島まで』『サウス・トゥ・サウス』『まれびとたちの沖縄』『わたぶんぶん――わたしの「料理沖縄物語」』『帰る家もなく』『赤星鉄馬 消えた富豪』などがある。

「2022年 『琉球切手を旅する』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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