おいしいおはなし: 台所のエッセイ集 (ちくま文庫 た 74-1)

制作 : 高峰 秀子 
  • 筑摩書房
3.83
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本棚登録 : 145
感想 : 21
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  • Amazon.co.jp ・本 (294ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480431356

感想・レビュー・書評

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  • いろんな作家が食について書いたエッセイをまとめたもの。食べるのが好きな私にとってはどれもが興味深い話ばかり。

    特に気になったのは、向田邦子さんの「豚鍋」我が家では「水炊き」とか「豚ちり」と言ってますが、少々作り方が違うので忘れぬよう書いておきます。
    具材は豚肉とほうれん草のみ、湯の量の三割ほどのお酒に皮をむいたにんにくを一かけ、その倍量の皮をむいた生姜を丸のままほり込む。最初は豚からしゃぶしゃぶ、しばらくしてからほうれん草を、それをレモン醤油で食べる。

    早速用意ができてますので、今晩はこれを食べます。

    それと、秋山ちえ子さんの「ねこ弁」、小さいタッパーに入れたお弁当。鰹節のいいところを薄くかいてご飯の間にかけて醤油をパラパラとかけたもの。私の場合一番上に焼きのりを敷き詰め、その上に甘めに炒った卵を載せる、確か歌舞伎役者の大好物だったやつ。明日の昼ごはんはこれで決まりですな。

    食べたいものが、見つかるのが食べ物の本の一番の御褒美ですな。

  • 女優にしてエッセイスト、その双璧をなすのが、沢村貞子と高峰秀子。その高村秀子が編纂した、食べ物に関するエッセイ集。
    「編」という場合、名前だけ貸す場合が多いそうだが、このアンソロジーは、高峰自ら50冊余りの随筆集を読み込み、厳選したそうだ。「おいしい文章」を「舌なめずりしながら」楽しめる。

  • おいしい本でした。ごちそうさま。肩がこらない、気軽なお茶漬けのような。

    読書会の課題図書。
    筑摩文庫で、高峰秀子だ、というだけで、「良き本」な予感。(相当な偏見ですが)
    それで、読み終えてやっぱり、僕は好きな本でした。

    もともとは、何年ころに出版された本なのか。1998年とかなのか。
    各界の著名人?が、それぞれ「食」について書いた文章を、高峰秀子さんが選別して作ったエッセイ集。
    巻頭にまず、高峰秀子さん自身が短文を寄せています。
    執筆者(敬称略)は

    ・高峰秀子(俳優)
    ・向田邦子(脚本家・作家)
    ・沢木耕太郎(作家)
    ・北野武(タレント・映画監督)
    ・幸田文(作家)
    ・池部良(俳優)
    ・井上ひさし(作家)
    ・中山千夏(タレント・作家)
    ・玉村豊男(画家)
    ・安野光雅(画家)
    ・宇野千代(作家)
    ・川本三郎(評論家)
    ・鄭大聲(研究者?)
    ・石井好子(音楽家)
    ・秋山ちえ子(評論家)
    ・土井勝(料理研究家)
    ・松山善三(映画監督)
    ・沢村貞子(女優)
    ・林政明(あやしい探検隊の料理人)
    ・茂出木心護(料理人)
    ・水野正夫(デザイナー)
    ・宮尾登美子(作家)
    ・山田風太郎(作家)
    ・佐藤愛子(作家)

    というメンバー。僕は恐縮ですが鄭さん、石井さん、秋山さん、林さん、茂出木さん、水野さん、は、全く知りませんでした。

    何と言っても巻頭言の高峰秀子さんの短文がステキ。正直、この本の中のベストワン(笑)。

    わずか文庫本7頁。子役からの女優人生で料理が出来ないけど結婚してからちょっとは頑張ったのだよ、みたいな話をしているだけなのだけど、
    この人の文章は、おいしい。
    「高峰秀子の文章の素晴らしさを研究する会」の東日本支部があったら会員になってみたいです。

    話しは飛ぶけれど、この手のエッセイの、僕なりの好みのポイントがあって。
    やはり、謙虚さみたいなものは欲しい。
    結局は、自虐も含めて自慢話。なんだかんだと、とどのつまりは、「私ってこういう人だからあ」みたいなこと。
    「普通じゃないこんな体験してるからあ」みたいな。
    そういうのはあまり好きではないんです。好みの問題です。

    ところが高峰秀子さんの文章っていうのは、良く考えるとそういう意味で自慢になってしまいそうなところが、なぜだかそういう味わいにならない。
    ここンところが実に不思議です。チョット研究してみたいですね。なんというか、レタスのザク切りのようなキップの良さと、気持ちよさ。

    好きだったエッセイを(忘れないうちに)列挙。
    ●向田邦子さん=白眉。これも自慢話スレスレのところを突破する筆力。豚鍋、海苔弁、食べてみたくなりました。保存版。
    ●池部良さん=好きです。昔々の子ども時代。父親が天ぷら屋のネエチャンと良い感じで。それを母親が不愉快に思っていて。そのネエチャンに、たまたま天ぷらそばを奢って貰ったら、母親が怒った。と言うだけの話。教訓的なオチもなく、とりとめもない風景の風情。その投げ出し方、飾らなさ加減が、とても素敵。こういうのがエッセイとしては、僕は好き。しかも4ページ。
    ●安野光雅さん=好きです。笑っちゃいます。結局は「海苔とカイワレをはさんだパンが美味しい」ということだけなんですけど、最早、語り口が情熱が上滑って空回りも空回り。その空回り具合の微笑ましさがこの人の持ち味なんですよね。長嶋茂雄的というか…井上陽水の歌詞みたいなぶっとび方…。
    ●鄭大聲さん=日本が箸文化。朝鮮が匙文化。という見方が面白かった。純粋な「へえ~」度で言うと、いちばんでした。語り口も嫌味がなくて良いです。
    ●土井勝さん=この文は好きでした。何がって、敬語も含めてとっても文章が謙虚で素敵。お話も飾らない感じで。奥様が、妹さんが大変なときに食事を差し入れていた話とか。
    ●沢村貞子さん=このエッセイは別の沢村さんの本で読んだことがありました。名編ですね。若い人と一緒に付き合わなくて良いようにお弁当、という、飾らない語り口が印象的。
    ●林政明さん=この文、忘れられません…。鶏を殺して食べるという、現実をとにかくグサリと読まされる上に、そこに教義も正義も露悪も無い。このゴロンとしたゴツゴツ感。さすが怪しい探検隊。
    ●茂手木さん=謙虚な料理人さんの楽屋話。するっと読めて楽しかった。
    ●水野正夫さん=実はこれがこの本でいちばん好きだったかも。戦争、空襲、焼け落ちた家。残った玉子が見事なゆで卵に。鮮やかな印象。説教でも感傷でもない、写実と軽さとが、瑞々しい味わいの文章。極上です。
    ●山田風太郎さん=好みが分かれるところでしょうが、僕は好き。チーズの肉トロ、是非作って食べたいです。「戦争中、三越の雑炊に一時間並ぶ」とか「B級グルメ好き」とか。とりめもない話の、確信犯なまとまりのなさ。楽しいウンチクがあって、でもそれがなんの教訓にもメッセージにもならない肩の力の抜け具合。もともと、通底音に反戦や反権威があっても、テッテイしてそういう顔色を出さない文章家という印象で、そのテッテイさが実にもう反骨的。ある種、意地でも役に立たず、感動させない。そんな意気地を感じた一篇。

    他も素敵だった気がしますが、とにかく忘れないうちに、好きだったものを備忘メモしておきます。
    さすが筑摩文庫。さすが高峰秀子さん。最後はそこに戻ってしまいます(笑)。

  • ちゃんと選んだ感じがする、どれも美味しく上質。ごちそうさまでした。

  • 高峰秀子がみずから厳選した食にまつわるエッセイ23本。
    余計な飾り気がなく筋が通っている彼女の眼鏡にかなった文章だけに、ただのグルメとは一線を画する、食の根本を見つめなおすような、読み応えのある文章ばかり。
    1本1本、膝を打ったり、笑ったり考えこんだりしながらゆっくり味わった。
    巻末の著者略歴・出典を見て、芋づる式に読みたい本がふえてしまう。向田邦子、幸田文、安野光雅あたりはすでに原本を読んでいるが、またあれこれ読み返したくなる。

  • 文章の上手い、美味しいものが並ぶと思いながら読んでいました。ラインナップから当然ですが。最後のあとがきに代えてを読んで、ハットして納得です。

  • 向田邦子さんの鰹節と海苔の弁当がおいしそうで、今日の昼はご飯に鰹節と海苔をのせてたべてみました。鰹節はパックのやつで、ご飯も炊きたてではなく、海苔もあぶってませんが、それでもおいしかったー。ちゃんとやったらおいしいだろうな。誰か食べさせてー。
    いまは食が豊かになったけれど、ひと手間がかけられない自分を残念に感じました。
    あと他のエッセイに書かれていたことですが、
    食べることが恥ずかしいこと、という感覚も今はないものだけど、たしかになあと思うこともありました。

  • おさめられている随筆も古いものなので仕方ないけれど、
    ジェンダー感が突き刺さる

  • 玉村豊男さん、の文章が特に印象的だった

  • 食に関するエッセイは、出版されてから時間がたつととっつきにくくなりそうなものだけど、上質なものは、古くならないのだなぁと思いました。

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