漢字とアジア (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480435347

作品紹介・あらすじ

中国で生まれた漢字が、日本(平仮名)、朝鮮(ハングル)、越南(チューノム)を形づくった。鬼才の書家が巨視的な視点から語る2200年の歴史

感想・レビュー・書評

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  • 漢字から東アジアの文化圏を規定して行く本。書道家である著者のその視点は面白かったし、文字が文明を作って行くし思考に影響を与えるのもそうなんだろうと思う。面白い視点だった。もっと漢字の成り立ちとかそう言う漢字そのものの雑学みたいなものも知りたいと思った。ただ著者は左寄りというかちょっと理想論過ぎる気がする。特にあとがきとかを読むと大丈夫かなとも思う。もちろん戦争は良くないけど、自分が戦争を放棄しても攻めてくる人がいる。そうした時こういう人はどうするんだろう。今ウクライナにロシアが侵攻している時代だからそう思うだけなのかしら。もちろん平和な世界であって欲しいけど9条だけで守れると言うのは納得感はない。

  • 漢字文明圏とは何か/文字と国家の誕生ー中国史1/分節時代から再統一へー中国史2/深化から解放へー中国史3/立ち上がる朝鮮半島ー朝鮮史1/ハングルと朝鮮文化ー朝鮮史2/漢字文明圏の北限ー渤海・大陸東北史/漢字文明圏の南限ー越南史/琉球から沖縄へー琉球史1/ヤポネシアの空間ー琉球史2/無文字社会から問うーアイヌ史/東アジア漢字文明圏の射程

  • 漢字文明圏とは何か
    文字と国家の誕生―中国史1
    分節時代から再統一へ―中国史2
    深化から解放へ―中国史3
    立ち上がる朝鮮半島―朝鮮史1
    ハングルと朝鮮文化―朝鮮史2
    漢字文明圏の北限―渤海・大陸東北史
    漢字文明圏の南限―越南史
    琉球から沖縄へ―琉球史1
    ヤポネシアの空間―琉球史2
    無文字社会から問う―アイヌ史
    東アジア漢字文明圏の射程

    著者:石川九楊(1945-、越前市、書家)

  • 2018-8-17

  • ・石川九楊「漢字とアジア 文字から文明圏の歴史を読む」(中公文庫)を読んだ。副題に「文明圏」とある。たぶん、あまりきかない言葉である。「漢字がつくった東アジア。東アジアは漢字がつくりあげた文明圏である。」(325 頁)これは「終章」に出てくる一文である。ごく大雑把に言へば、東アジアは漢字で一つになつてゐる、かういふことであらう。これが漢字の文明圏である。 「第1章」にはかうある。中国は政治的な括りでは中華人民共和国だが、「言葉という文明文化的な括りからは、『中国はいくつかの国に分かれ、さらにそこに は朝鮮半島、越南、弧島、琉球、台湾が含まれる』というかたちで中国像を描けるでしょう。」(27~28頁)正に「漢字がつくった東アジア」である。本書 はこれで貫かれてゐる。著者は書家である。だから、かういふことにもなる。「おそらく、世界史上最大の事件は、紀元前二〇〇年頃に成立する秦始皇帝の『文字統一』にある。この篆書体の成立によって、欧州とは全く異なる文字=書字を共通語とする文明圏として東アジアが成立した」(330頁)。字体が問題とな るのである。かういふ、字体を問題とする発想は私にはない。篆書体は篆書体であり、隷書体は隷書体である云々、それだけである。それが、著者にかかると、 「殷から秦の始皇帝の前までの時代が、亀の甲羅や牛の骨に刻ったりした金文の時代です。それを払拭したのが始皇帝であり、彼によって統一された文字が、すなわち篆書です。篆書が文字に字画をもたらしました。」(50頁)「これは世界史上の奇跡」(同前)であり、「篆書がアジアを形成した最も大きな力です。」(同前)となる。あの文字が「アジアを形成した」のかと思ふ。同時に、「末端の実用としては隷書が生まれてゐる」(同前)のださうで、隷書といふの は実用的な文字だつたのだと思ふ。ただし、篆書、隷書は「政治的な文字」(51頁)であつたらしいから、それらとは「もう少し違う書体」(同前)として草書が出てくるといふ。「人間の労苦と病苦を謳いあげる詩が手紙を通して生まれてき」(同前)て、そこに使はれたのが草書であつた。これが王羲之の時代、つまり六朝時代であつたといふ。さうして次に、「人間的なるものを含めた新たな政治国家が、六五〇年頃に誕生します。その象徴が楷書です。」(52頁)さ う、楷書が最後なのである。私達は「『まず楷書が生まれ、楷書をくずしたものが草書だ』と考へている。」(同前)しかし、これはまちがひであるといふ。 「実際の順序は逆です。」(同前)初めに政治的な文字があり、「人間的なるものを含む草書が、政治的なる文字の位置に攻め上り、入り込むことに成功したのが楷書なのです。」(同前)これはこれで非常に筋の通つた説明である。ただ、かう見事に割り切つて良いものかと思ふ。本当に「末端の実用として隷書」があ つたのか。篆書は末端では使はれなかつたのか。篆書、隷書は政治的なだけの文字であつたのか。王羲之の草書は政治的な文字ではなかつたのか。こんな疑問がわいてくる。書道の歴史を知らないからこその愚問であるのかもしれない。著者を信ずれば「順序は逆」といふのも分かる。しかし、楷書から草書が生まれたといふ考へにも、当然、<根拠>はあるはずである。私はこれを知らないから、へえと思つてみるだけである。
    ・以上はごく最初のあたりだけである。この先、各論、中国、朝鮮等々が続く。それらにも興味深い点は多い。つまり、本書はおもしろいのである。ただし、この考へには相当に癖があると思つた方が良い。それは上記でも知れよう。私にはおもしろかつたがと書いておく。

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著者プロフィール

書家。京都精華大学客員教授。1945年福井県生まれ。京都大学法学部卒業。1990年『書の終焉 近代書史論』(同朋舎出版)でサントリー学芸賞、2004年『日本書史』(名古屋大学出版会)で毎日出版文化賞、同年日本文化デザイン賞、2009年『近代書史』で大佛次郎賞を受賞。2017年東京上野の森美術館にて『書だ!石川九楊展』を開催。『石川九楊著作集』全十二巻(ミネルヴァ書房)、『石川九楊自伝図録 わが書を語る』のほか、主な著書に『中國書史』(京都大学学術出版会)、『二重言語国家・日本』(中公文庫)、『日本語とはどういう言語か』(講談社学術文庫)、『説き語り 日本書史』(新潮選書)、『説き語り 中国書史』(新潮選書)、『書く 言葉・文字・書』(中公新書)、『筆蝕の構造』(ちくま学芸文庫)、『九楊先生の文字学入門』(左右社)、『河東碧梧桐 表現の永続革命』(文藝春秋)、編著書に『書の宇宙』全二十四冊(二玄社)、『蒼海 副島種臣書』(二玄社)、『書家』(新書館)、作品集に『自選自註 石川九楊作品集』(新潮社)、『石川九楊源氏物語書巻五十五帖』(求龍堂)などがある。

「2022年 『石川九楊作品集 俳句の臨界 河東碧梧桐一〇九句選』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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