文豪たちの怪談ライブ (ちくま文庫)

著者 :
制作 : 東 雅夫 
  • 筑摩書房
3.13
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本棚登録 : 114
感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480436122

作品紹介・あらすじ

「百物語」の昔から、時代の境目では怪談が流行る――泉鏡花没後80年、「おばけずき」文豪たちの饗宴を追う前代未聞の怪談評論×アンソロジー!

感想・レビュー・書評

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  • おばけずきで知られる泉鏡花。当時の手記や新聞記事などを多数引用しながら、彼と文豪・芸術家ら文化人の参加した百物語怪談会の様子を紹介している。森鷗外の参加した、素封家が贅を尽くした怪談会など、当時の一大怪談会ブームの様子に驚く。文豪に詳しくなくても大丈夫だけど、多少知ってるとより楽しい。

  • “おばけずき”の鏡花さんが、仲間たちとした百物語。
    中心に泉鏡花を据えつつ、明治末~昭和初頭の怪談についてまとめたもの。

    泉鏡花は天守物語や草迷宮など読みやすいものしか読めていないけれど、美しい世界を書く人で、これから色々と読んでみたい人。当時、どんな人たちとどのように付き合っていたのか知らなかったので、柳田國男や芥川龍之介とかなり仲良さそうだな、と興味深く読みました。

    夜な夜な集まって百物語を行う文人たち。会場選びや小道具にもこだわって、食事も不気味に仕上げてくる……楽しみながら怪談ライブを作っているのが伝わってきて、この場に行ってみたかった。これが現代だったら、オンライン配信してほしい。部屋を真っ暗にして、布団をかぶりながら視聴したいですね。

    巻末の登場人物紹介に生没年も載っていて、親切な本。

  • 摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB50163873

  • 柳田國男の言葉として、昭和2年に「甥や姪と怪談を聞いても笑うばかりでちっとも怖がらない。教育が違う」との記述がある。現代でも都市伝説やネット怪談、職業怪談などが生まれているから、怪談の質が変わってきてるのかもしれない。
    以前は「噂」をもとにした怪談(昔ここでこういうことがあったらしい)だったが現代は「事実」をもとにした怪談(昔ここでこういうことがあった)に移り変わってるのではないか。
    当時の百年前と違い現代の百年前は記録が残っていることも多いだろうし、噂と事実の差がはっきりしてるだろうし。

  • 夏といえば怪談、というのは昔から変わらないのですねえ。文豪たちが行った怪談会の様子を描いたドキュメンタリーにして評論にして怪談アンソロジー。どこかしら見たような話も……と思えば、この怪談を元ネタとしてあの作品が書かれたのか、ということもわかって興味深いです。怪談好き必読。夜中にじわじわ読みたい一冊です。
    しかし、怪談なんて所詮作り話、と思っていると(実は思いたいのかも)。そうとも言えないような話もあるのが怖いところ。怪談会で出た死者の話なんて本当に怖い……!

  • ・東雅夫編著「文豪たちの怪談ライブ」(ちくま文庫)を 読んだ。相変はらずよく調べてゐる、読んでゐると思ふ。これまでの様々なアンソロジーのまとめとしてあるのであらう。これは正確にはアンソロジーとは言へない。かと言つて……と書いてはみても、これに続く単語はなささうである。解説文の間に掌編(怪談)や新聞雑誌記事、そしてその他の文章が紹介されてゐる書といへば良いのであらうか。それを何と言ふのか。単純にアンソロジーとは言へない。だから編著なのであらう。私はかういふのは初めてである。ただ、かういふ書であればいい加減なことは書けないと思ふ。とにかくどんな文章でもここに引かれうるわけである。見解を同じくしないとか、言つてゐることに矛盾があるとかする文章もあるから、そのあたりをきちんと見極めねばならない。本書はそれができてゐる。全く気にもしなかつたが、明治40年以降が近代怪談の絶頂期であつたらしい。これ以降、大正の前半あたりまで、怪談に関する実に様々な活動が続く。百物語や怪談会に様々な人が集まつて怪談話をしたりして楽しむ。 それを新聞や雑誌に連載したりするし、単行本化したりもする。明治43年刊の「遠野物語」もこの流れに入る(144~145頁)らしい。大体、柳田国男や 佐々木喜善はそのやうな怪談会の参加者であつた。喜善は三陸の人だから、生まれた時からさういふものと生きてきた。吉本隆明風に言へば、共同幻想の中で生 きてきた。柳田は違ふ。しかし、泉鏡花となると、喜善とはまた別の共同幻想の中で生きてきたはずである。鏡花は無類の怪談好きであつたといふ。鏡花の名が 表に出てゐなくとも、鏡花が関係した怪談会は多いらしい。それは本書で確認できる。鏡花関連だけでも見て行けば、第1回鏡花会は明治41年6月に浜松で開 かれた(137頁)。明治44年で第9回である(146頁)。年3回は開かれた勘定になる。その間に鏡花は傑作をいくつも書いてゐる。明治39年「春宵」 「春宵後刻」、明治41年「草迷宮」、明治44年「吉原新話」等、これ以外の作品ももちろんあり、新派で「婦系図」が上演されてもゐる。お蔦が喜多村緑郎、主税が伊井蓉峰であつた(138頁)といふ。この二人もまたお化け好きで、鏡花関連の怪談会等にはほとんど顔を出してゐる。私もお化け嫌ひではないが、こんなところにこんなにも深く、新派の名優2人が顔を出してゐようとは思ひもしなかつた。このやうに、本書にはきちんとしたデータも載つてゐる。明治から大正の怪談会を調べようと思つたら、本書で先ず概要をつかんでといふのが早さうである。かなり細かいことまで書いてあるし、その出典も載せてある。それが新聞記事であり雑誌記事であつた。
    ・本書の「怪談ライブ」といふ書名は、このやうに新聞雑誌の怪談会関係の記事を載せ、時にはそこで話された怪談話を載せて、しかも、それらの怪談会をある程度参加者別にまとめてあることによる。硯友社に始まり、芥川の死を経て鏡花で終はる。文豪も確かにゐる。鏡花はそれほど怪談好きだつたのだと改めて思ふ。さすがに漱石や鴎外は本書にはほとんど出てこないが、硯友社系の作家や明星系の歌人は出てくる。私に意外だつたのは小栗風葉が関係してゐたことであ る。硯友社の作家であれば当然なのであらう、鏡花に薦められてか自ら望んでか、いくつかの怪談会に出てゐる。硯友社の作家は江戸戯作をひきずつてゐた。明星は浪漫を追つてゐた。それに対して、自然主義の作家はこのやうな怪談とは縁が無いのである。かういふことも分かる<ライブ感>が本書の醍醐味なのであらう。意外におもしろかつたと書いておかう。

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著者プロフィール

1958年、神奈川県生まれ。アンソロジスト、文芸評論家。「幻想文学」「幽」編集長を歴任。ちくま文庫「文豪怪談傑作選」「文豪怪談ライバルズ!」シリーズはじめ編纂・監修書多数。著書に『遠野物語と怪談の時代』(日本推理作家協会賞受賞)『百物語の怪談史』『文豪たちの怪談ライブ』、編纂書に『ゴシック文学入門』『ゴシック文学神髄』、「文豪ノ怪談ジュニア・セレクション」「平成怪奇小説傑作集」「赤江瀑アラベスク」「文豪怪奇コレクション」の各シリーズ、監修書に「怪談えほん」シリーズなどがある。

「2022年 『桜 文豪怪談ライバルズ!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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