侠気と肉体の時代 現代マンガ選集 (ちくま文庫)

制作 : 夏目 房之介 
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 73
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (315ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480436757

作品紹介・あらすじ

格闘技、スポーツ、アクション。劇画によって解放されたの展開をたどり、怒りと美学のジレンマを生きる男たちの美学を読者にさしだす。

感想・レビュー・書評

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  • 夏目房之介・編『侠気と肉体の時代 現代マンガ選集』ちくま文庫。

    筑摩書房の創業80周年記念出版。全8巻の第5巻。第5巻は『侠気と肉体の時代』と題して、格闘技、スポーツ、アクションをテーマにした劇画作品をセレクト。

    白土三平、平田弘史、梶原一騎・川崎のぼる、高森朝雄・ちばてつや、梶原一騎・つのだじろう、雁屋哲・池上遼一、バロン吉元、宮谷一彦、高寺彰彦の9編を収録。

    少年漫画雑誌に子供から大人まで楽しめる劇画やスポ魂漫画が掲載された時代。主人公の超人的な能力は並々ならぬ努力の賜物であり、主人公は挫折を味わいながら成長し、必ずしもハッピーエンドで終わらない結末にリアリティを感じた。

    白土三平『ざしきわらし』。既読であり、内容もかなり鮮明に覚えていた。忍者組織から逃走し、抜け忍となった老忍者が東北地方の寒村で『ざしきわらし』として、或る一家を見守るという物語。

    平田弘史『太刀持右馬之介』。主君には逆らえぬ侍の悲哀を描いた時代劇画。類い稀なる怪力の持ち主の主人公・右馬之介が主君に愛でられ、無意味な巨大な太刀持ち役を申し付けられる。齢60を迎えた右馬之介には太刀持ちはきつく……

    梶原一騎・川崎のぼる『巨人の星』。伝説のスポ魂漫画の代表作の最終回。大リーグボールを操る巨人軍の投手・星飛雄馬の左腕はいつ壊れてもおかしくないという状態で、かつての親友・伴との最後の闘いに挑む。激闘を終えた星は親友たちの幸せを喜びながら、独り静かに立ち去る。その背中には星が背負う宿命の証しか、十字架が……何年か後に青年漫画誌で『新・巨人の星』が連載され、子供の頃に左投げを強制された星飛雄馬は実際には右利きで、右腕投手として復活するという設定だったと思う。

    高森朝雄・ちばてつや『あしたのジョー』。『巨人の星』と人気を二分するスポ魂漫画の傑作。こちらも最終回を収録。ホセ・メンドーサとの激闘を終え、真っ白な灰になった矢吹丈は死んでしまったのかということが当時の読者の間で議論になった。矢吹丈のライバル・力石徹が死んだ時もファンによる葬儀が行われた。

    梶原一騎・つのだじろう『空手バカ一代』。後に極真会館館長となる大山倍達を主人公にした実録格闘技漫画。途中から作画が、つのだじろうから影丸穣也に交代したことに驚いた。

    雁屋哲・池上遼一『男組』。マフィアのような高校生が暴力的な支配を続ける学園に少年刑務所から送り込まれた主人公の流全次郎。常に両腕を手錠で捕縛される圧倒的に不利な状態で流は、学園の悪と闘う。

    バロン吉元『柔侠伝』。柔術をテーマとしたシリアスな物語の中に突如現れるギャグ描写。相変わらずバロン吉元の描く女性は魅力的。

    宮谷一彦『肉弾時代』。明らかに三島由紀夫をモデルとしたMという男が地下格闘技にパンチドランカーの男を送り込む、怪しい雰囲気の中で、やたら肉体描写の目立つ闘いが繰り広げられる。

    高寺彰彦『友よ急げ』。大友克洋っぽい画風のドタバタ漫画。大友克洋のアシスタント経験があるのだろう。どうせなら大友克洋の漫画を収録して欲しかった。

    本体価格800円
    ★★★★

  • テーマ別選集において、このテーマを見たとき、おそらく自分に合わないだろうなと思っていたが、予想通りだった。
    しかし、宮谷一彦「肉弾時代」だけは、これだけは、その熱気にやられた。
    三島をモデルにした男が、侠気ならぬ狂気を全開にする、果ては自らの腹中の薔薇をかっぴらく……!!
    三島を文スト的にしか味わえない世代。
    しかし、だらだら続く散文的日常に対して、詩的瞬間が垂直に立つのだと、当時の熱気をそのまま作品に置き直したら、こうなるだろう。

  •  本シリーズの刊行も二分の一を超えて、各巻の収録作を見ると、60年代から70年代の作品をメインに、多少それ以降も取り上げるという傾向を感じる。自分はマンガをあまり読まなかったので、良く分からないが、その時代が現在に通じる変革期だったのだろうか。

     テーマがテーマだけに、編者が言うとおり、かなりアツ苦しい一冊。少年マンガ誌を購読していなかったので、巨人の星も明日のジョーもTVでしか知らなかった。原作のマンガを読んだのは、大人になってからである。

     宮谷一彦の『肉弾時代』は、三島由紀夫を思わせるMの思想性と肉体讃美という内容もさることながら、劇画ならではの描写に痺れた。

  • ほぼ外見三島由紀夫のボクサー?が主人公の宮谷一彦「肉弾時代」はヤバい。

  • 男性の世界での抑圧と破滅を描いているものが多い。
    白土三平『ざしきわらし』は少し手塚治虫っぽいと思った、民話的で良い結末。梶原一騎・川崎のぼる『巨人の星』最終回を初めて読んだ、自身の肉体が壊れるまでに全てを注ぎ込んで幕を引く、というラスト、美学かぁ〜…。高森朝雄(梶原一騎)・ちばてつや『あしたのジョー』の最終回は久々に。意外とあっさりしてたけど、当時読んでたら衝撃を受けるだろうな。宮谷一彦『肉弾時代』は、Mと表記される三島由紀夫そっくりの男性が、地下試合でパンチドランカーのボクサーと白人ボクサーを対決させる。緻密なタッチで迫力ある描写、過激なまでの男性の肉体と暴力への賛美。

    平田弘史『太刀持右馬之介』がとても良かった!封建的な社会で抑圧されながら、それでも異議を示すために自死する主人公。制度によって生き、制度によって死ぬんだけど、美しい…。
    豪傑で、大太刀持という力を誇るような役目に尽かされた馬之助は、年齢が上がってきて続けるのが厳しくなってくる。たびたび辞退を申し入れるが、藩主は受け入れない。病弱な息子・金次郎はそんな父の様子を見て、後を継ごうと努力するが、無理が祟って病状が悪化し、ついには死んでしまう。馬之助はもう大太刀持という役割で死ぬ人はいないようにと、役割を引き受けて最後に大太刀を折って自刃。
    特にいいのが、すれ違ってしまうが最後まで貫かれる父子愛。馬之助は金之助の病状を常に心配していて、無理をしないで、えらくならなくても元気に育ってほしいと思っているのが素晴らしい…。絵のタッチも渋いがストーリーに合っていて、無駄な線がなく、特に金次郎のさらりとした美少年ぶりが好み。

  • <目次>


    <内容>
    今回は「侠気と肉体の時代」なので、男臭い話が多い。「巨人の星」や「あしたのジョー」は最終回が、「空手バカ一代」や「男組」、「柔侠伝」は連載の途中が載っている。でも、最初の白土三平の短編「ざしきわらし」が良かった。

  • 川﨑のぼるの画力など堪能。あしたのジョーの最終回って、今見ると割とあっさりしている。

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