- Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480438126
作品紹介・あらすじ
この世界を生きる唯一の「きみ」へ――人生のためのヒントが見つかる、39通のあたたかなメッセージ。傑作エッセイが待望の文庫化! 解説 谷川俊太郎
感想・レビュー・書評
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「わたしたちはともすれば、自分は自分だと言えば、それが自分であるというふうに思いなしがちですが、それはちがいます。わたしたちの自分というのは、むしろ自分でないものによってしか語ることができないものです。わたしたちの中にいる自分は、言葉をもたない自分です。あるいは、言葉に表すことのできない自分です」
村上春樹のカキフライを彷彿とさせる。
自分でないものによってしか、自分を語ることはできない、ということ。
でも、私が私でないものを、どんな風に見、感じているかも、また言葉にしないと分からない部分がある。
「人は記憶によって育てられ、その記憶にみちびかれて、自分にとって大切なものを日々のうちに手にしてきました。人の人らしさをささえるのが、記憶です。記憶は、しかし、何もしないでどこかにあるものでもなければ、自分のなかにもともとあるものなのでもありません。人それぞれがみずから時間をかけて育てなければならないのが、記憶です」
記憶を育てる、という言い方を初めて聞いた。
何を残していくのか、どう残していくのか。
確かに、そんな破片への眼差しが、自分を象っていくんだろう。記憶は、象だ。
「地声を失ってしまっている役者がいる。それも主役をつとめてきたような役者に多い。『声を鍛え、あれこれと表現テクニックを身につけている間に、だんだん声が自分を離れてしまって、十数年もたつと、声だけが独立してしまう。そうなるともともとの声がどんなだったか、もう本人にもわからない。』セリフは上手でも、『自分自身と声との間につながりがないから』、心の底から感動させられるということがなくなっている」
この言葉にも、ハッとさせられた。
私は、私の声を失っていないだろうか?
仕事モードと名付けて、その立場でその顔で生きる中に、なんでもない自分は繋がっているだろうか。
そういうことと切り離した言葉は伝わらない。
それは、よく分かる。
でも、演じることは、多分楽でもある。 -
エッセイ。
はじめから、最初の一行から、心に刺さりました。
確かにそうだ。と。
とても短くて、雑学があって、読みやすく、
あっという間に読み終え、
カフェで読みたい本に入れたかった。と
今更ながら感じました。
いつも手元におき、時間が空いたらふと読むような
本。 -
詩と手紙と散文との境目が消失した名編。論ずることの不毛と、「引く(=引用)」ことのゆたかさを教えてくれている。これは、「体験」する本である。以下、後日を待つ(2022/05/13)。
https://www.kyobunkwan.co.jp/narnia/archi...
https://www.kyobunkwan.co.jp/narnia/archives/weblog/b1dc784a
と書いたが
解説を一読してウルウルしている。
そして全く失念したいたのですが『言葉殺人事件』(晶文社...
と書いたが
解説を一読してウルウルしている。
そして全く失念したいたのですが『言葉殺人事件』(晶文社)所収の「Pathography」を谷川俊太郎が「パソグラフィー」として訳していたコト("長田弘 詩人一匹"云々と)を、、、
https://www.asahi.com/sp/articles/DA...
https://www.asahi.com/sp/articles/DA3S15335665.html