百年と一日 (ちくま文庫 し-49-2)

著者 :
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 595
感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480439437

作品紹介・あらすじ

映画館、喫茶店、地下街の噴水広場、島、空港……様々な場所の人間と時間の不思議を描き話題となった新感覚の物語集。一篇を増補。解説 深緑野分

感想・レビュー・書評

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  • 目次がもう、一つの物語みたい。

    「一年一組一番と二組一番は、長雨の夏に渡り廊下のそばの植え込みできのこを発見し、卒業して二年後に再会したあと、十年経って、二十年経って、まだ会えていない話」

    これが一話のタイトル。
    もはや、あらすじであるのと同時に「会えて……いないのか」とあらすじの結末に少し驚く。

    作中の時間の流れ方が不思議。
    諸行無常、栄枯盛衰。
    一日の出来事が、百年続くこともあるし。
    続いたことが、あっけなく、途切れることもある。

    「ラーメン屋『未来軒』は、長い間そこにあって、その間に周囲の店がなくなったり、マンションが建ったりして、人が去り、人がやってきた」が印象に残った。(分かりやすかった)

    変わらないことが、良いこととは言い切れないけれど、変わらないことを選んだ姿勢が、価値を生むことはあるんだと思う。
    そして、変わらないと決めたから、変わっていかない、わけでもないんだと思う。

  • 誰もが大きな物語の主人公になろうと成功を求め必死に努力するけれど、所詮ひとは時の流れの中に儚く溶け消えてしまうような存在なのかもしれない。けれど、この作品の一つ一つのエピソードに出てくる名もなき登場人物のような、小さな物語の地味な端役だったとしても、誰かと出会い関わり合いそして別れていくなかで、時の流れは確かに組み替えられ、新しい時の流れが作り出されている。時の流れは人を簡単に分解するけれど、他方で、人は時の流れを新たな方向へと導いている。人間と時間の奇妙な関係。時間が主役のこの不思議な物語は、自分のかけがえなさとか個性とかそういうものに執着する人生の虚しさを教えてくれると共に、小さくても豊かな人生がありうることを教えてくれる。素晴らしい作品。

  • 目次が変わっていて、その章の
    あらすじを紹介している

    どこかのだれかのある日、ある時の
    記録
    なんとなく散漫

  • 諸行無常がテーマのものを探していたらこちらをお勧めされた。
    不思議な一冊。とりたててドラマチックなシーンはなく、淡々と事は起こり、動いていく。
    終わるもの、形を変えて続いていくもの。
    色々な人が話に出てくるけど、この本の主役は時間そのものだという印象。
    そんな本を今まで読んだ事がなかったので、新鮮だった。

  • 過去現在未来をつなぐ短編集。
    現在残っている建物、写真、書物などは、過去を生きた人の物語でもある。最近、現在もある場所に、過去生きたの人々の残像を描いた絵画を見たことがあって、それを小説化したような作品だと思った。
    オチがしっかりめではない短編集なので、途中で諦めかけたけど読んで良かった。

  • 超短編小説といっても良い作品群。登場人物の過去・現在・未来をつなぐ関係性の変容が描かれる。ありそうでなかった設定を用いた革新的でありながら普遍性を持った小説。著者に関してはエッセイをきっかけに小説を読んだが、他の長編小説も読みたくなった。

  • ん~、面白かったと言えば面白かった。
    正直、前半部分、読み進めるのはなかなか苦痛だった。
    何が面白いの??みたいな話が続き、挫折しそうになった。

    それでも、新聞の書評が良かったことから、
    頑張って中間を過ぎたあたり・・・
    「銭湯を営む男たちは皆「正」という漢字がつけられていて~」
    「セカンドハント」というストレートな名前の中古品店で、アビーは~」
    のあたりから、一気の面白くなった。
    何だかわかる~みたいな話が続き、これはどれも本当にどこかの時代に
    どこかで生きた誰かが語ったこのような気がしてきた。
    ほとんどが、「一組や二組」だの、「娘や息子」、
    「彼や祖母」などの三人称で書かれており、なかなか自分の中に
    入ってこない。
    それが、面白くなりだした作品のあたりから、急に個人の名前が
    明らかになってくる。これが、私が面白味を感じてきた理由なのかな。

    多分、表題からも百年という時のなかで、切り取った一日、
    その現実が描かれているのだろう。
    妙な身近に感じるリアルな読み心地が不思議だ。

    時折、はさまれる「娘の話」と「ファミリーツリー」は
    同一の娘?家族?なのか、私には判別つかなかった。
    好き嫌いの分かれる本かも・・・

    一番好きだったお話
    「地下街はたいてい噴水が数多くあり、その地下の噴水広場は待ち合わせ場所で、
    何十年前も、数年後も、誰かが誰かを待っていた」

  • あの日あの時にあの場所で
    大切に思っていた人と過ごした
    何気ない日常があり
    ただすれ違っただけの人がいたことを
    振り返ってみる

  • 理想的本箱から。
    時間の流れの不思議。

  • 名前も知らないどこかに住んでる人たちの暮らし
    新幹線で車窓から致死量の住宅街見てるときの気持ち
    モディアノっぽい

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著者プロフィール

柴崎 友香(しばさき・ともか):1973年大阪生まれ。2000年に第一作『きょうのできごと』を上梓(2004年に映画化)。2007年に『その街の今は』で藝術選奨文部科学大臣新人賞、織田作之助賞大賞、咲くやこの花賞、2010年に『寝ても覚めても』で野間文芸新人賞(2018年に映画化)、2014年『春の庭』で芥川賞を受賞。他の小説作品に『続きと始まり』『待ち遠しい』『千の扉』『パノララ』『わたしがいなかった街で』『ビリジアン』『虹色と幸運』、エッセイに『大阪』(岸政彦との共著)『よう知らんけど日記』など著書多数。

「2024年 『百年と一日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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