悩みはイバラのようにふりそそぐ: 山田かまち詩画集

著者 :
制作 : なだ いなだ 
  • 筑摩書房
4.04
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本棚登録 : 79
感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (174ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480803214

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  • 俵万智の彼にあてた歌集で知る。
    17歳。それはやはりものすごく特別な年齢だつたのだと思ふ。サガンが初めて自分の感情に「悲しみ」と名づけて迎へた年。僕を貫くかぐや姫がはじめて「わたし」と呼んだ年。太平洋の防波堤から遠い海の先を望んだのも同じくらいの年ではなかつたか。18歳ではない、17歳。自分にもさういふ年齢がきつとあつたはずだ。
    確固たる迷ひのない輪郭。けれども放つ色はそこからはみ出ざるを得ない。どの絵も、音が鳴り響いてゐるやうな気がする。動きを殺すはずの絵画が、音をたてて崩れていく。
    彼のことばは、よくわからない。彼の苦しみ、痛み、叫び、何ひとつわからない。抽象的…といふことばとは違ふ。彼の流れにことばが追付いてゐないといつた方がいいか。わからないけど、彼がその身に宿すひりつくやうな痛みが流れてくる。考へてゐるのは脳みそのはずなのに、ことばはものすごく脳みそでこねくりまはしてゐるはずなのに、身体中がひりひりと焼きつく。
    何かが残るわけではないのに、山田かまちといふ人間が忘れられない。何がどれほど残されてゐるかあまり知らないが、きつと自身の作曲したものもあつたのではないか。
    もしも彼が生きてゐたらといふのは、あまりに不毛な空想だ。彼の生きる燃えるやうな時間を他でもないその時代に書き、現したことこそ、彼の生命だ。

  • 混沌なエネルギーに満ち、
    自問自答の末に溢れ出た詩と絵。

    あまりにも速く生きぬいた。

    自分の中のマグマだまりが
    また活動し始めそうな本。

  • 色彩がとてもすてきで、おそらく本で読んだだけではその魅力が伝わりきっていないのだろうと推測する。表紙の絵「プリーズ・ミスター・ポストマン」はとてもいい。全体的に澱んだ水の色、腐った緑色なのが17歳ゆえの鬱屈を表しているようだった。
    デッサン画はあまり目を引くものがなくて、おっと思うものがあってもおそらくアレを真似ているのかな?と思うものがある。詩も、若さゆえの不安定な精神と未熟さ故の勢いを感じた。それに、投げやりになっているのだな、と思わせる事に混じって、一部本質を突いている。……かまちさん自身は、まさか自分の死後に作品が公開されることを見越してつくったものではないだろうから、これにも何か思想的な影響があるのかもしれないけど。
     どうも鼻につくのが、夭折の天才として大々的に売り出したいんだろうな、という汚さを感じるところ。うまいもんだと思った絵も詩もあったから、かまちさんの才能を否定するものではないけど、これは未来を見すえてこれから飛翔しようというエネルギーをもったまま亡くなったがゆえの武器でもあると思う。未熟で不器用な才能の原石。どう磨かれていったかわからないもの。その叫びを人前に晒しているように感じるし、かつて17歳だった自分としてはその痛々しさ、恥ずかしさを感じずにはいられない。なんだかなあ。なんだか、嫌だった。

  • 言葉に対する柔軟さに感嘆した。
    憧れと嫉妬が心に渦巻いて、これが天才かとしみじみ感じた。

    「8月80日 もうこれが最後です」

    この一節の、溢れんばかりの焦燥感に鼻水出る

  • 若いって苦しい。

  • この本は何年も前に出会って、
    そのときに衝撃を受けた本。

    そしてまたこの本に出会った。
    当時は感じなかったことを改めて感じる。

    痛い。本当に痛い。心の叫びが聞こえてくる。

    心の声って、本当は大きいんだ。
    もっと出していいんだ。

    そう思える本です。

    何度も読み返したい。

  • <font size=\\\"3\\\">ためらうこと?
    ない。
    おびえること?
    ない。
    ただ、    書けばいい。</font>

    0416-0419
    /////
    他に何があるというのだ。他にぼくの言いたいこと 言いたいことを言える場所が。…17歳になったばかりの時、エレキギターを弾いている最中に感電死した、山田かまちが残した強烈なメッセージ。
    /////
    中学校の美術の時間、自画像を描くという事で先生が『ナイフを持つ自画像』を見せてくれました。
    その時は彼の生涯について全く知らなかったのですが、それでも絵に力強さを感じました。
    詩と絵、共にやはり彼の生み出すものには内面からの力を感じます。

  • 彼の作品で一番好きな詩画集。痛いくらいに少年の青春時代を感じる。「ナイフを持つ自画像」が衝撃的だった。

  • 学校祭の古本市で10円だかで売っていました。即買い☆

  • エレキギターの感電で夭逝した作者が残した詩画集。若い頃は誰でもたくさんの葛藤を抱えてあがいて越えていくと思うけれど、それを心のままに表現できる人はそうはいない。彼はどんな大人になっていたのだろう。

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