ノーベル賞経済学者の大罪

  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (182ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480863416

作品紹介・あらすじ

クライン、サムエルソン、ティンバーゲン。ノーベル賞受賞に輝く巨匠たちの方法論がそもそも間違っていたとしたら!?現代経済学の不毛さを暴く、衝撃の書。

感想・レビュー・書評

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  • 最初は、主観的な記述と客観的な記述が入り混じっていて、ちょっと読みづらく感じましたが、著者が『性転換―53歳で女性になった大学教授』(文春文庫)という人だと知ってからは“田嶋陽子”から“マツコデラックス”に脳内置換されて、毒々しく感じた部分もなぜか面白く読めました。


    本文にはありませんが、こんなジョークがあるそうです。

    無人島に、物理学者、化学者、経済学者がいた。空腹で途方に暮れていると、岸辺に缶詰が流れ着いた:

    物理学者が言った、「岩をぶつけて缶を粉砕しよう」
    化学者が言った、 「火にかけて缶を破裂させよう」
    経済学者が言った、「缶切りを持っていると仮定しよう」

    みんな、缶を開けて空腹を満たしたいのですが、物理学者と化学者は、缶詰を開けること自体に執着していて、空腹を満たすことは頭にないように見える点で、非現実的なことを言っているようにみえます。
    一方、経済学者は、空腹を満たすことを問題にしているので、その点で、とても現実的に現状の問題に取り組んでいるように見えますが、缶を開けようとはしていません。そのため、3人の中では最も非現実的です。

    もし、経済学者が、“ブルジョア的な実用知”に基づいていれば、「他の食べ物をさがそう」とでもなったのでしょうか。

    本書では、経済学は、誰のために、どのような知見を与えてくれる学問であるべきなのかという点を、3人のノーベル経済学賞受賞者の研究を批判してみせることで、問い直していると思います。


    ところで、著者が批判している統計的有意性と経済学的な重要性の混同という点については、今でも時折みられるのではないかと思いました。というのも、最近以下のような会話を聞きました:

    「この係数の値は、とても小さいと思うのですが、この指標は本当に重要なのでしょうか?」
    「確かに、小さいかなぁとは思っており、我々もその点については議論していました。ただ、有意水準1%でも有意であったわけですし、意味があるとは思っています。」

  • ノーベル賞経済学者っていうか経済学の方法論についての批判。
    著者が批判するのは
    ?統計的有意性を経済学的重要性と勘違いしているという誤った計量経済学の理解、
    ?研究室の中から出ないで紙と鉛筆のみで経済を描写しようとする「黒板経済学」、
    ?そして?と?の現実世界への適用
    の3点。

    どれも誰もが思っていることで、真新しいことは何もない。ただ「学者のあんたがそれを言うのかー!」って思わされるところにこの本の価値があります。
    経済学に関わらず社会科学系の学問には当然限界があります。それを乗り越える努力をするのが学者であり、著者の言葉を借りれば「機械化された方法論」をただ「機械的に」あてはまて論文を量産し、学者になっていくというのは確かに良くないかもしれませんね。

    あとは、理論だけでも実証だけでもダメなんだなと思いました。
    物理学でさえ、理論の論文よりも実証の論文の方が多く、多くの理論物理学者は実証分析の論文も深く読み込んでいるとか。
    かたや経済学の世界では理論は理論、実証は実証と、きれいにすみ分けがなされています。
    現実の世界から理論を語り、経済学を議論したいものです。

  • 経済学はどの方向に向かっていくのか?「役に立つ」経済学とは?ノーベル賞経済学者批判をすることで、現在の経済学についての問題提起をする一冊。

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