- Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480874092
作品紹介・あらすじ
トランプ大統領の下、加速度的に分断が進行したアメリカ。音楽をめぐる環境も激変する中で、ポップアイコンたちの様々な闘いの軌跡を追う!
テイラー・スウィフト、ケンドリック・ラマー、ブルーノ・マーズ、カーディ・B、ラナ・デル・レイ、チャンス・ザ・ラッパー、そしてBTS――
2010年代以降のアメリカ音楽シーンを彩るポップスターたち。激変する政治経済、人口動態、メディア、そしてコロナ禍の中で、彼らの輝きはいかなる現代アメリカの相貌を描きだすのか。『アメリカ音楽史』の著者にして、ポピュラー音楽研究の俊英が放つ最新のアメリカ音楽グラフィティ!
感想・レビュー・書評
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2017年頃だったか。中高生向けの英語教材を開いてみると、そこにBruno Marsの紹介コラムが掲載されていて仰天した。教材に載るようなアーティストと言えば何十年も前の、そしてBeatlesやMichael Jacksonといった、歴史をも動かした人達の印象しかなかったから、このとき時代というものを痛感せざるを得なかった。
本書においては聞き覚えのない人や曲が出てきた際は(MVの解説もあるから)YouTubeも動員しなくてはいけない。んでもって皆んなそこそこ音楽史を動かしているから、何とか知識のアップデートにも努めた。以下、幾つかピックアップ。
Taylor Swift...カントリーミュージックのファン層を大幅に開拓したに留まらず、そのファンを繋ぎ止めたままポップスにも躍進、ヒットを連発。既に常識なんだろうけど、これだけ見ても商才や行動力が一流だと分かる…
Bruno Mars…変わった芸名だと思っていたけど彼のバックグラウンドが大きく関係していたとは。それでいて曲の中に「懐かしさ」がある。以前父親が彼の曲を聴いて同じ事を言っていたけど、そういうことだったのか。(どういうことかはネタバレになるので言えない…)
Lana Del Ray…MVの分析・解説が秀逸。読む前にMVを観ていても「何かメッセージ性があるのか」で終わったと思う。時代錯誤しているようで彼女なりの歴史・政治観が大きく反映されているのか。
Kendrick Lamar…一番心に深く沈んだ章。一度観たら忘れられないグラミー賞授賞式でのパフォーマンスから始まり、演出の意味とそこに至るまでの経緯を徹底解剖。ここまで読み込んでいかないと歌詞の意味すら掴めないのが情けなかった。黒人コミュニティ内の「内なる差違」にも耳を傾けなきゃいけないという切実な訴えもリスナー達に届いているのだろうか。
「俺たち自身がまず自分たちをリスペクトしなければ、奴らのリスペクトをどうやって得られると言うんだ」
BTS…「Beatlesの再来」に「アジアン・インベイジョン」。音楽史と言わず、このまま全史ごと動かす気が一番している。(言い過ぎ?笑)『アメリカン・ハッスル・ライフ』(彼らがLAでヒップホップの研鑽を積みアーティストと交流する企画)、いっぺん観てみようかな笑
歴史が動けば地図も変わる。歌い手と聴き手がどのように変化していくのか楽しみでもあり、恐ろしくもある。 -
2010年代後半以降のアメリカ音楽のメインストリームの動きを通じて、アメリカ社会の変遷がどのように音楽業界に影響したかを考察した一冊。生活しながら肌で感じていたことも多く、とても興味深い内容ばかり。
カントリーからキャリアをスタートしたTaylor Swiftが2020年の大統領選を機に共和党不支持を表明するようになった話は有名だけど、Bruno Marsの来歴にアメリカの植民地主義と宗主国の文化の関係をなぞらえたり、人種的には黒人も入っているのに音楽的にはBlack Musicとは見做されてこなかったBrunoがSilk SonicとしてAnderson Paakと組むことによってそこもカバーできるようになったという考察などは、なるほど納得。
他に取り上げられるアーティストはLil Nas X, Lana Del Rey, Chance the Rapper, Kendrick Lamar, Cardi B, BTS, Lil Baby, Tyler the Creatorなどなど。
この本を読み終えて感じたことは、これらのアーティストの活躍の仕方は共通して従来の音楽ジャンルや人種などの属性の枠を超えているということ。その既存の価値観や分類に当てはまらないことでしばしば批判や論争を招いているけれど、それこそが現代のアメリカ社会そのものを反映しているのだと思う。
そして、毎年なんだかんだ言われながらもやっぱりグラミーが楽しみ。(1/31→4/3に延期) -
ここ10年ほどのアメリカ音楽の潮流や変化から、アメリカの人種や文化について考察したような書。
元々はWebちくまのコラムをまとめて加筆修正した感じ。
なぜこのアーティストがこの時代に生まれて売れたのかを社会的に読み解いていて、少し難しい部分もあったが楽しく読めた。 -
テイラー・スウィフト、ブルーノ・マーズ、BTS、ケンドリック・ラマー、チャンス・ザ・ラッパーなどなど
複雑極まりないカオスなアメリカ社会において、アーティストはいかにしてその時代性を手に入れ、爆発的なヒットを生んだのか
大学の授業みたいな小難しい単語が連発する文体にはちょっと辟易しつつも、全てのヒットには背景があり、そこにはアメリカが歩んできた歴史との密接な関係があることを膨大な時代検証を元に紐解いてくれます
人種差別、地域格差、多様性、そしてSNSによる可視化が変えたマイノリティの地殻変動など2局化による一触即発な「新しい戦前」におけるアーティストの闘いに、日本のポジションを考えずにはいられないですね -
特に、近年の洋楽にそれなりに着いていけている人におすすめの本。歌詞やサウンドだけではなく、背景の考察までされているので、知っていると興味深く読めると思います。
2010年代にアメリカでヒットした曲をもとに、アメリカの人種的・政治的・社会的状況を掘り下げていくような構成でした。
基本スタンスとして、音楽づくりには作者の背景や周囲の状況が色濃く反映される、という考え方があるようです。
残念ながら洋楽にもアメリカの歴史にも疎いわたしは、本書で論じられていることが正しいかどうかの判断ができません。でも、まるで国語の問題のように、出来上がったものに対しこういうふうに分類していく手法があると垣間見えたのがおもしろかったです。 -
NDC767.8
「テイラー・スウィフト、ケンドリック・ラマー、ブルーノ・マーズ、カーディ・B、ラナ・デル・レイ、チャンス・ザ・ラッパー、そしてBTS―2010年代以降のアメリカ音楽シーンを彩るポップスターたち。激変する政治経済、人口動態、メディア、そしてコロナ禍の中で、彼らの輝きはいかなる現代アメリカの相貌を描きだすのか。『アメリカ音楽史』の著者にして、ポピュラー音楽研究の俊英が放つ最新のアメリカ音楽グラフィティ!」
」
目次
1 テイラー・スウィフトとカントリーポップの政治学
2 ブルーノ・マーズとポストコロニアル・ノスタルジア
3 ヒップホップにおけるアフロ=アジア
4 音楽メディアとランキング・システム
5 ラナ・デル・レイとフェイクの美学
6 チャンス・ザ・ラッパーとシカゴの政治/文化
7 ケンドリック・ラマーと黒のグラデーション
8 カーディ・Bとリズム・オブ・ジ・アメリカス
9 BTSと「エイジアン・インヴェイジョン」
10 パンデミックとアメリカ音楽
著者等紹介
大和田俊之[オオワダトシユキ]
1970年生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科英米文学専攻後期博士課程修了。博士(文学)。慶應義塾大学法学部教授。2011年、『アメリカ音楽史―ミンストレル・ショウ、ブルースからヒップホップまで』 -
おもしろい!!とくに1章カントリー2章のポストコロニアルノスタルジア、7章の黒のグラデーションと9章のアジアンインベイション
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閲覧
コメントいただき有難うございます!
私もびっくりしました笑 本書の刊行が昨年12月だったのもあるのでしょうか…?他のアーティスト...
コメントいただき有難うございます!
私もびっくりしました笑 本書の刊行が昨年12月だったのもあるのでしょうか…?他のアーティストもさることながらBTSほかアジア系の音楽や時代背景について知らないことが多く、調べていく内に俄然興味が湧きました^ ^これからも要チェックです!