聖書男(バイブルマン) 現代NYで 「聖書の教え」を忠実に守ってみた1年間日記
- CCCメディアハウス (2011年8月31日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (632ページ)
- / ISBN・EAN: 9784484111117
作品紹介・あらすじ
ひげをのばし、全身白の衣服を身にまとい、杖をもって街を行く"いちおうユダヤ人"のおかしくも真摯な387日。
感想・レビュー・書評
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これは、ユダヤ人だけどほとんどユダヤ人らしく育たなかったリベラルなニューヨーカーのライターが、聖書に書いてあることを実践していく体験本である。
本書にあるように、聖書とか宗教って知りたいけど近づきすぎたら怖い感じだ。
宗教に異常にはまっちゃって、誰でも彼でも勧誘するようになっちゃったらちょっといやだと考える著者の感覚はよくわかる。
その聖書を言葉通りに実践しようとするのだが、現代のニューヨークという最も進んだ都市では困難がいっぱいだ。聖書に書かれる無理難題をゲームのようにクリアしている様子はとても面白い。
興味深かったのは、かなり保守的な人たちへのインタビューだ。
たとえば、進化論を信じず、聖書の創世記をそのまま信じ、博物館を作っている人たちが、一方では、人種差別をしないというのは意外だった。神は人間を作っただけだから人種の優劣などはないのだというのだ。
そういえば、進化論って確かに優性劣性という考え方も持ち込んだといえることに気づかされる。
また、過激な発言でしられる宗教家の教会に行ってみても、その日は特に過激な発言はなく、ありきたりな説教を聞かされるだけだったりして拍子抜けしたりしている。
著者は、自分と相容れないだれかを聖書や宗教を理由に否定する考えに、嫌悪を示しながら、一方で、先入観で保守的な人々をとらえていた自分の考えと、議論が巻き起こっていること(同性愛とか)以外のところでは、同じような考えをもっていることを知って驚きをみせ、読者(多分著者と同じようなリベラルな人が多い)もその驚きを同じようにうけるようにしている。
好きなシーンは、ユダヤ教のお祭りをやってみて、そこに招いた親戚が、自分の子供の頃のそのお祭りのことを書いてきて、朗読するシーンだ。お母さんが大きな魚を買ってきて、浴槽に入れ、お祭りのときに調理して、一族みんなで食べるのだ。
その祭りには宗教心はもちろんあるが、基盤には、家族であったり母親であったり人と人との結びつきが描かれている。ユダヤ教徒でない私も懐かしい気持ちをもつし、暖かい心になる。
宗教がクローズアップされるが、現代社会では、本当は、著者のように宗教から遠ざかっている人のほうが増加しているのではないだろうか。
だから宗教に基づいて何か言われると、違和感をもったり怖かったり、狂信的だと思ってしまうのだろう。昔はもっと宗教は身近で、よく信じている人もそうでない人も、自分はどう信じるのかを考えていた。
今は、前よりも、先入観をもって判断するだけになってしまい、信じる人の言い分と自分たちとは相容れないものとしてすましてしまうのではないだろうか。
信じない側の人も、まずは、著者のように訪れてみる、聞いてみることをしてみると、本当の危険や相容れないものとをつかむきっかけになるのではないだろうか。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ニューヨークに住む、ごく一般的な感性を持った人間が、率直に思ったことを(しかもちょっと面白く)書いているので、面白く読めました。
現代社会の仕組みに宗教がどのように関与しているのか、宗教がどのように対応しているのか、その一端が分かったような気がします。
著者自身が変化していく様子が時を追ってリアルに描かれていて、興味深かったです。
周囲の人間の意見が多様なので、面白かったし、きっとそれは普通の生活の仕方だと分からない部分だと思いました。
宗教にも本当に色々あるのだなあと、そして宗教の教えだけでなく信者の性質にもいろいろあるのだなあと感心しました。
そんなにいろいろの考え方の人がいる世界…広くて、深いです。難しくて、おもしろいです。
著者の人が、自分の頭で考えて日々を送っているのがよかったです。面白半分でない感じがして。 -
自慢じゃないが私は義務教育以外は全てカソリック系で学び、聖書も「フェニキア人からの手紙」「放蕩息子の章」という言葉だけを記憶し、未だに正式なアーメンの祈り方を知らない典型的なナンチャッテ仏教徒だ。
本書の著者もまた現代のニューヨークに住む聖書にもキリスト教にも特に興味の無かった一応ユダヤ人の雑誌編集者にしてライターである。
「聖書男」は著者が、本のネタとして聖書の教えを学び実践してみた一年間の奇妙でちょっと笑える日記形式の体験記であると共に聖書のトリビア紹介と現代米国において聖書の教義を信じて(著者の如く実験ではなくて)それに生活を捧げる人々の観察記だ。
例えば、そもそも聖書を読むに当りどの訳の聖書を使うのかが問題で、聖書専門店に行くと約三千もの英語訳があることを知り驚き、勧められたのは雑誌「セブンティーン」みたいな表紙のもの。「地下鉄なんかで聖書を読んでいると恥ずかしいでしょ」だと。中年男にとり聖書と少女向け雑誌のどちらを読むのが恥ずかしいか悩むところだ。
聖書の中には数多くの解せないきまりがあるが、そのうちの一つで笑えるのは「殴り合いの最中、相手の妻に大事なところをつかまれたら、その手を切り落とさなければならない」。一体全体どういう経緯でこの教えが生まれたのだろうか。
仕事でDVDを見る必要があるがセクシーシーンが多いので、姦淫の罪を犯さないようにモルモン教徒が経営するレンタル・サービスに加入した。そこでは全ての映画から暴力・セックスシーンがカットされているし、F,S, H, Bワード(H?B?)などの汚い言葉もカットされているので安心。だけどカットだらけで内容が判らなかった。
色々なエピソードが満載で全600ページに及ぶ分厚い本書なので手に取るとちょっと引いてしまうが、気楽に前後の脈絡に関係なく読め、聖書(特に旧約聖書)の教えが笑いとともに身に付く、はずはない。 -
聖書に慣れ親しんだ無宗教の私にとっては、彼の根性と気づきにはかなり笑わされた。電車でたまに思いだし笑いが出て、毎日がラッキーに感じるよ
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宗教を信じている訳でもないNYに住む著者が1年、旧訳聖書、新約聖書の内容を実践した体験記。
著者の「これって必要?」っていう純粋な問いや、他の女性に目がいくのを止める方法とか、宗教の存在が遠い私でも共感できて、ついつい笑ってしまった。
キリスト教と言っても、宗派は複数あり、その宗派によって、聖書のどの部分をどう解釈して教義とするかが違うことを初めて知った。さらに、様々な宗派の人にアドバイスを求めたり、インタビューするなど、内容も豊富。
日本でも、仏教の宗派はいくつかあって、少しずつ違うのだろうが、葬式くらいでしか認識することは無いように思う。その点、キリスト教、聖書は掟、習慣、心構えとして、生活に大きく関与してくるようだ。
ただ、どの宗派も(原理主義でさえ)全ての内容を守ることはできないらしい。そして、どう解釈するかで、宗派対立が起きているようだ。
著者のユーモア溢れる比喩では、現代アメリカの俳優やコミックなどアメリカ文化を知らないと分からない部分も多く(旧訳聖書的には、偶像化は禁止かもしれないが・・・)、アメリカ人でないと笑えない部分が多かったのが残念。
ぜひ映画化して欲しい〜! -
十戒に従う
産んで増え
隣人を愛す
収入の十分の一の捧げ物をする
嘘をつかない
悪口・噂話をしない
混紡の服を着ない
姦淫の罪を犯したものを石打ちにする
毎月初めに角笛を吹く
生理中の女性に触れてはいけない
植えてから5年経っていない木の実は食べてはいけない
などなど
現代NYで、聖書の教えに忠実に暮らそうと思ったらどんなことになるか…。
“ユダヤ人とは名ばかりの”“信仰心のかけらもない”著者が、それを実行した1年間の記録である。
私自身は、カトリックのミサに通って、神の存在を実感できるようになったか?というと、NO。
逆に、キリスト教に否定的な印象を持つようになってしまった。それでも、当時の神父様のことは大好きで、それはこの本にもあった“道徳的指導者”という見方をしているからなのだろう。
聖書や教会や宗教との関わり方として、それもありなのだなぁと、この本を読んで思えた -
【由来】
・最初はLifeHacking.jpでの紹介。
【期待したもの】
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※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。
【要約】
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【ノート】
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【目次】
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特に信仰に熱心でない、ニューヨーカー(ユダヤ系)が一年間、聖書の教えに従う生活を実行した内容をまとめたノンフィクション。
600ページ以上あって分量は多いけど、ユーモアたっぷりで読みやすい。
旧約聖書には、ちょっと意味が分からない戒律が多くて、作者がそれをどうこなしていくかが見どころ。
例えば、日曜日に働いてる人には罰を与えなければならないし、生理中の女性には触れてはいけないのだ。
聖書になじみのない僕には、聖書の内容だったり、現代のアメリカ人がどのようにキリスト教に向き合っているかの勉強になった。 -
旧約聖書と新約聖書の違いはなんとなく知ってるくらいの自分でも分かりやすい内容だった。また、たまに挟まれる奥さんとの会話もユーモラスであり、共感もできるものだった。
自分にとって宗教ってザックリと祈る対象といったイメージだったので、キリスト教もユダヤ教もイスラム教も祈る相手や祈り方が違うってことかなぁ、くらいに思っていた。こんなに日常生活に宗教が入り込むんだなと不思議な感じがした。
個人的にノアが500歳から方舟を作り始めたという記述は傑作だった。
百科事典を読破する本も出しているようなので、機会があればそちらも読んでみたい。