- Amazon.co.jp ・本 (573ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488010751
作品紹介・あらすじ
穢れの町は炎に包まれ、堆塵館は崩壊した。生き延びたアイアマンガー一族は館の地下から汽車に乗り、命からがらロンドンに逃れた。だが、その頃ロンドンでは奇怪な現象が頻発していた。住人が、いきなり跡形もなく消え失せてしまうのだ。人々に何が起きているのか? アイアマンガー一族に反発するクロッド。そしてひとり難を逃れたルーシー。物語はいかなる想像も凌駕する驚天動地の結末を迎える。アイアマンガー三部作堂々完結。
感想・レビュー・書評
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ゴミはいつからゴミになるのだろうか。
……肺都。
物はいつから物だったのだろうか。
……肺都。
人間はいつから屑なのだろうか。
……LUNGDON。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ページ数が少なくなるにつれて、ああ、まだ終わらないでと思ってしまうくらい、愛しい物語でした。
訳者のあとがきを読み、作者の物に対する溢れるほどの想いの深さを知ると共に、物語のテーマの深さも伺い知れたような気がします。物と人との関係性について。それは、決して薄いものではないこと。特に、ローランド・カリスの生き方は考えさせるものがあったし、彼の行動は意外だった。
また、終盤のアイアマンガー一族の展開については、因果応報という言葉も浮かんだが、結末を見ると、そうでもないと思えました。こんな結末にすることも出来るのだと。クロッドもルーシーも本当に感情を激しく動かされて、色々と大変な思い、経験もしてきたのに、それでも、自分の信念を曲げずに自ら考えて行動している姿に、私はずっと釘付けで、心動かされました。訳者の古屋美登里さんには、センスある語彙が素晴らしくて、感謝しかありません。
最後に、私個人が最も素敵だと思った、クロッドとルーシーの台詞を。
「きみ、ぼくを引っぱたいたね」
「ほかにどうすればわたしだってわかってくれた?」 -
550ページを一気読み。
うん、満足。
ロンドン市民や貴族たちからは、アイアマンガ―一族や穢れの町の人々など、一段下の人間、または人間以下としか 見られていない。
しかし原因不明の伝染病が蔓延し、人々はより安全なロンドンへと向かう。
もちろんロンドンはそれを阻止するために、彼らを迎え撃つ。
いったい何が原因でこんな戦いになってしまったのだろう。
最初はアイアマンガ―一族の話だったのに。
物やごみがあふれかえった堆塵館に住んでいたアイアマンガ―一族は、結集という、ごみが互いに引き寄せあいくっついて、巨大化する現象のため住む家を失った。
穢れの町では、人間が物に代わる奇妙な病気が流行っていた。
あふれかえるごみと、人間がゴミになる病を連れてロンドンに来たアイアマンガ―たちは何を企んでいるのか。
アイアマンガ―たちも穢れの町の人たちも、ロンドンの人たちですら次々に命を落としていく。
これは、自分たちの居場所を求め、守るための戦いの話だったのか。
いやいや、やっぱりこれはクロッドとルーシーの愛の物語だったのだ。
200ページを過ぎるまでルーシーの生死はわからない。
ルーシーの生存が明らかになるとクロッドに危機が迫り、クロッドが危機を脱出するとルーシーが敵に襲われ…。
少しずつ近づいているはずなのに、なかなか出会えない二人。
構成の妙は目次にも表れている。
第1部 外から見ると
第2部 中から見ると
第3部 裏が表に
第4部 表が裏に
第5部 逆さまに
幕切れ 新しい居場所
でも実は一番純愛だったのは、クロッドの婚約者のピナリッピーじゃないかと思う。
クロッドがルーシーを愛しているのを知りながら、年上で、毛深い自分を振り向いてくれないかと願う。
そのためにはルーシーの命を奪うことになっても構わない。
大事なのはクロッドと自分だけ。
ものすごく自己中だけど、純愛ってそういうものじゃないかしら。
自己中と言えば、物に執着する私たち。
物はいつかゴミになる。
壊れたら、汚れたら、年月が経ったら。
ゴミになるはずのものを大量に抱えている私たちが、アイアマンガ―であり、ロンドン市民なんだなあ。きっと。
ゴミと汚物にまみれた物語の最後は、生き残った者たちの安らぎの日々。
初めて居場所を得た人たちの穏やかな表情は、あの苛烈な日々があったからこそなのか。 -
★4.0
アイアマンガー三部作の最終巻。堆塵館、穢れの町を経て、遂に舞台はロンドンに!クロッドの脆さと怒りに居た堪れない気持ちになったけれど、ルーシーはどれだけ逆境に立たされても常に真っ直ぐで力強い。大量の汚物に塗れようとも、彼女の生きる力はただただ尊敬に値する。と同時に、あの人やこの人の最期を目の当たりにするのが何とも遣る瀬無い限り。中でも、クロッドの婚約者ピナリッピー、藁人形のアイリーニの死が切なかった。三部作を通して感じたのは、物への愛着と人類の共存。そして、生きる上で必ず塵芥が出続けるということ。 -
命が助かるためでも、トースト立てに戻ることを拒絶したローランド・カリスの矜持が痛ましい。私が物に変わるとしたら、何だろうと考えてしまった。理不尽な命の奪われ方をした穢れの町の子供たちもいるので、ハッピーエンドとは言えないけど。エレナーの家族は元に戻れたのか。理不尽な命令を下すウンビットと、子供を助けなさいと命を下したヴィクトリア女王。君臨する者の差が出たね。1876年ってヴィクトリアがインド皇帝になった年なのね。この年を舞台に選んだことと関係あるのかな。ルーシーは最強だった。クロッドはやっぱり優しかった。ウンビットみたいに無慈悲にはなれなかった。だから生き残れたのね。
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読み終わってしまった・・・。
おもしろかった。しばらくたったら再読しよう。
また違った発見があるようなそんな奥深い本です。 -
「穢れの町は炎に包まれ、堆塵館は崩壊した。生き延びたアイアマンガー一族は館の地下から汽車に乗り、命からがらロンドンに逃れた。だが、その頃ロンドンでは奇怪な現象が頻発していた。住人が、いきなり跡形もなく消え失せてしまうのだ。人々に何が起きているのか? アイアマンガー一族に反発するクロッド。そしてひとり難を逃れたルーシー。物語はいかなる想像も凌駕する驚天動地の結末を迎える。アイアマンガー三部作堂々完結。」