お城の人々

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488011307

作品紹介・あらすじ

医師と不思議な少女の恋を描いたおとぎばなしのような表題作ほか、犬と少女の奇妙な絆を描いた「ロブの飼い主」、お城に住む伯爵夫人対音楽教師のちょっぴりずれた攻防「よこしまな伯爵夫人に音楽を」、独特の皮肉と暖かさが同居する幽霊譚「ハープと自転車のためのソナタ」など、恐ろしくもあり、優しくもある人外たちと人間の関わりをテーマにした短編全十編を収録。ガーディアン賞、エドガー賞を受賞した著者の傑作短編集第三弾。

感想・レビュー・書評

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  • The Practical Magic of Joan Aiken, the Greatest Children’s Writer You’ve Likely Never Read | The New Yorker
    https://www.newyorker.com/books/page-turner/the-practical-magic-of-joan-aiken-the-greatest-childrens-writer-youve-likely-never-read

    ジョーン・エイキン(作品一覧・著者プロフィール) | 絵本ナビ:レビュー・通販
    https://www.ehonnavi.net/author.asp?n=14061
    ↑東京創元社の本が載ってません、、、

    お城の人々 - ジョーン・エイキン/三辺律子 訳|東京創元社
    http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488011307

  • 童話のような幻想短編集。表題作が好きでした。以下個別に備忘メモ。

    〇ロブの飼い主:サンディという少女に懐いてしまった他人の飼い犬ロブ。どんなに離れてもサンディのところへ勝手に行ってしまうため呆れた飼い主はロブをサンディ一家に託す。月日は流れ、ある日おばさんの家にむかう途中でサンディは交通事故にあい意識不明の重体となる。彼女に会いたくてロブは病院にやってくるが…。犬もの泣ける小説といえば江國香織の短編があるが、それを思い出した。

    〇携帯用エレファント:「森」へ行くのにはパスポートが必要だが、パスポート取得のための行列は長く、1日並んでも順番はまわってこない。しかも森へ行くには動物を必ず携帯する必要があり、主人公の男は動物を探しまわるもどこも売り切れ。やっと携帯用エレファントという広告をみつけそれを買い付けるが、携帯用どころか普通サイズの大きい象で…。「言葉」がそのへんに落ちていたり、「森」にある大量の「言葉」を人々が求めていたり、象徴的で不条理で不思議な世界観。

    〇よこしまな伯爵夫人に音楽を:教師のボンド氏はキャッスルと名前に入った村に引っ越してくるがその村に城はない。しかし村の人々は妖精の伯爵夫人の城があるといい、彼らは妖精たちと交流している。実はピアノが得意なボンド氏に、伯爵夫人のほうが目をつけて、彼をさらってきて演奏させようと画策するも…。

    〇ハープと自転車のためのソナタ:とあるオフィスビルでは、夕方5時で必ずすべての人々が帰らされる。不思議に思った新入りのコピーライター男性が、退社するふりをしてビルに戻ると、ハープの音が聞こえ、自転車で走る男性の幽霊を見てしまう。実はかつてこのビルでハープ教室を開いていた女性と、自転車で巡回警備をしていた男が恋に落ちるも、男がプロポーズしようとしたときに偶然女性が待ち合わせ場所に来れず悲観した男は飛び降り自殺、女性ものちに後を追った事件があった。以来二人の幽霊が5時から現れ、それを見た人間は呪われて5日以内に死ぬという。コピーライターは同僚女性の協力を得て、幽霊たちをハッピーエンドに持ち込もうと計画し…。

    〇冷たい炎:エリスのもとに死んだ男友達パトリックから電話がかかってくる。彼は詩人になりたくて詩をかきためており、それをエリスに出版してほしいと頼む。しかしエリスがパトリックの部屋に詩の束を取りに行くとすでに母親が全て持ち去ったあと。この母親が悪魔のような女性で、死んだ息子とは不仲。死後もなお、パトリックの願いを阻止しようとする彼女とエリスは戦うが…。

    〇足の悪い王:元作家だが今は老いて呆けてしまった母親と、父親を車に乗せてある場所にむかっている息子夫婦。老夫婦は愛し合っておりいたわりあっているが、嫁と息子は両親に冷たい。実は彼らがむかっているのは「最期の家」という場所(おそらく老人を安楽死させる施設と思われる)途中立ち寄ったカフェで足の悪い老人と老夫婦は仲良く話し、どこかで会ったことがあった気がする。「最期の家」で母親の前に現れたのはその足の悪い老人で…。死の擬人化のようなものだろうか。

    〇最後の標本:小さな村の牧師が、ある日森で、植物を採取しようとしている少女と出会う。近隣の少女ではなく、乗っているポニーもすでに絶滅した種のもの。牧師が少女から聞き出した話は、もうすぐ地球は滅亡するので、さまざまな植物や動物を標本にすべく採取してまわっているとのこと。うっかり地上のニンジンを食べてしまったポニーを残し、彼女は去っていく…。

    〇ひみつの壁:高い山々に囲まれた村に旅人がやってくる。男は「コウムイン」で、かつてここにフルートとカナリアを連れてやってきた男を探している。彼が山へ行ったと聞き自転車で山へむかう男。実は彼らはそこにある「ひみつの壁」を音楽で越えようとしており、先に来た男は後から来た男の楽譜を持って自分だけが抜け駆けしようとしたのだった。しかし壁を越えられないまま、二人は再会。一緒に演奏すると…。

    〇お城の人々:すでに廃墟と思しきお城の傍に開業している若いのに不愛想で偏屈な医者。ある日ヘレンという口のきけない美少女がやってきて治療してほしいと書く。医者は彼女を治してあげるが、ヘレンは処方箋がなんであるかさえ知らず、自分は王女なので薬をお城に届けて欲しいと言う。翌日医者はお城に行き、王様に会い、夜のあいだ自由に出入りする許可をもらう。仕事が終わってからお城に通うようになった医者はいつしかヘレンを恋しプロポーズ。父王は二人の結婚を許してくれるが、けしてヘレンに悪い言葉を使ってはいけないと話す。医者はヘレンと楽しくくらしていたが、次第におしゃべりで世間知らずな彼女にイライラするように。ある日ついに妻を怒鳴りつけてしまう。ヘレンは消えてしまい…。昔話や民話にある禁忌を破ると去ってしまう人外の嫁もののおもむきがあり好きでした。

    〇ワトキン、コンマ:おもいがけない遺産の入ったミス・シブレイは銀行を退職し、夢だったケーキ屋になろうと物件探し、破格の水車小屋を買い取る。しかし配管工事中に古い遺体が発見されたり(カトリックの神父のものだった)、建物の中に謎の隠し部屋があり、そこに閉じ込められて餓死した人間の日記のようなものがみつかったり何かと不穏。その日記にはワトキンという人物が一緒にいたことが記されていた。しかし実際家のミス・シブレイは幽霊など恐れない。しかしある晩、水車小屋のドアが勝手に閉まり閉じ込められてしまった彼女は、ついにワトキンと出会い…。ホラーかと思いきや、良い霊でハッピーエンド。

  • この本で素晴らしいのはなんといっても挿画だ
    なんの苦労もなく読めるが、特別な感銘は受けなかった

  • とてもミステリアスな短編集。
    一つ一つの作品の設定が異なるため、中には「ん?」となる作品がちらほらあった。
    後ろの解説を読むとより深く作品について考えることができた。

  • 作者紹介で「アラベルとモーチマー」シリーズの人だということに気づいた。生と死がひと続きのものとして横たわっているような不思議な世界を堪能し、とても楽しかった。「ロブの飼い主」「ハープと自転車のためのソナタ」「お城の人々」「ワトキン、コンマ」が特にお気に入り。ほかの短篇集も読んでみよう。

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