- Amazon.co.jp ・本 (411ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488025403
感想・レビュー・書評
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短編でさくさく読めるけどちゃんとミステリで面白かった。
特に「四分間では短すぎる」が良かったかな。
月光ゲームの後、気持ちが日常に戻り切れないところとか、
リアルでよかった。
小説の中の人物たちも毎日生活してるんだと。
そりゃそうだよね、殺人現場に居合わせたらダメージ受けるよなぁと思ったのがリアルで新鮮でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
お金はないけれどたっぷりと時間があり、すぐに結論を出すよりもあれやこれや考えて意見をぶつけあって、いつまでも続くお喋りが楽しくて仕方がない。
いま思えばまぶしく懐かしい、そんな青春時代。
それを肌で感じながら、時には繊細で優しく切ない物語、時には少年探偵団のような冒険活劇等をくるんでいるオブラートであり、核でもあるミステリを味わう。
至福の時間だけれど、いつも傍にいてくれるのに誰も知らない謎を抱え、誰も考えの及ばないところにひとり軽々とたどりつく江神さんの姿は、いつもどこか切ない。すこし、叶うことのない初恋の切なさに似ている気がする。
「除夜を歩く」の新しい元号あてのロジックはさすがで、今後も通用しそう。つまりは「平成」の次は、「N」か「K」のはず? -
学生アリスシリーズ短編集。
アリスの入学から、マリアの入部まで。
EMCのEMCらしい活動と出来事と談義。
長編は論理の本格ミステリだけど、こちらはいたって青春ミステリ。
おかしくて、甘酸っぱく、少しせつない。
「除夜〜」と「四分間〜」が好きだな。
ずいぶん前から、長編は五部作で完結と言われているけど、五作目はいつになるんだろう。
生きてほしい、だけど卒業はさみしい。
名探偵の推理は、いつも少しだけせつない。 -
「瑠璃荘事件」
「りら荘事件」のもじり?
「四分間では短すぎる」
「9マイルは遠すぎる」が未読だったのが痛かった。ミステリ好きなら必読本であったのに
「ハードロック・ラバーズ・オンリー」
シンプルでいい。発想の転換。
「桜川のオフィーリア」
物悲しい青春群像。語らなかった部分を無理に明かして、余韻をぶっ壊すのもアリだったか?
「焼けた線路の上の死体」
たぶん、読みドコロはミステリ談義部分。
「二十世紀的誘拐」
あまりにも犯人が幼稚だから、たぶん、相手にもされないと思う。成功したとしても。
「除夜を歩く」
ミステリ談義がいい。
「蕩尽に関する一考察」
これも発想の転換。実務上は上手くいくかは疑問。 -
学生アリスシリーズ5作目。
アリスが英都大学に入学してからマリアがEMCに入部するまでの1年間を、移り行く季節と共に描いた短編集です。
何をするにも全力で楽しむ大学生のノリがいい。汚い下宿にお菓子や料理やお酒を持ち寄って夜通しミステリ談義なんて、本当に楽しそう。いつも学生アリスを読むとこんな学生生活いいなぁ憧れだなぁと思います。
アリスの江神さんに向ける憧れとか尊敬とかがキラキラしててまぶしかった。
お気に入りは他のアンソロで既読だったけど「開かずの間の怪」。珍しくウキウキしてる江神さんがかわいい。アリスが駅で耳にした会話から物語が展開する「四分間では短すぎる」も面白かった。先輩達の優しさが泣ける。アリスはいい先輩をもったなぁ。「月光ゲーム」再読したくなりました。
学生アリスはキャラクターの楽しいやり取りももちろん魅力なのですが、どこか少し影を落とすような重い雰囲気もあって、それは江神さんが時々見せる憂いを帯びたような雰囲気のせいもあるのかなと思ったり。
今回「除夜を歩く」でそういう雰囲気がちらっと垣間見えて、江神さんは一体どんな秘密を抱えているんだろうか、より江神二郎というキャラクターに惹かれるようになりました。
大好きなシリーズなのにあと2作で完結だなんて寂しい。 -
学生アリスシリーズの短編集。
アリスが推理小説研に入部してからマリアが入部するまでの1年間に起きた話を時系列で並べてある。
学生の日常なので奇妙な出来事系の話が多く、青春小説的な甘さに少々照れるものの、登場人物たちの(そして作者の)ミステリ愛が微笑ましく楽しい。
ベストは「九マイルは遠すぎる」へのオマージュ「四分間では短すぎる」。
あとがきによるとこのシリーズは長編5作で終わりらしいので、残りあと1作か。待ち遠しいような終わるのが惜しいような。 -
その人の落とした『虚無への供物』が、英都大学推理小説研究会(EMC)入部のきっかけだった。
大学に入学した1988年4月、アリスは、江神二郎との偶然の出会いからEMCに入部する。
江神、望月、織田とおなじみの面々が遭遇した奇妙な出来事の数々。
「瑠璃荘事件」「ハードロック・ラバーズ・オンリー」「やけた線路の上の死体」「桜川のオフィーリア」「四分間では短すぎる」「開かずの間の怪」「二十世紀的誘拐」「除夜を歩く」「蕩尽に関する一考察」の9編収録。
アリス入学・入部からマリア入部までの1年が描かれた、学生アリスの短編集。
合間で、夏に遭遇した『月光ゲーム』のことがちらりちらりと出てくるので、思わず読み返したくなってしまいました。
長編よりも、彼らの普段の生活がより多く描かれていて、とても楽しかった。
ミス研の人たちって、いつもこんな感じでこねくり回してたりするのかなぁ。
特に「除夜」。
作者と読者、両方の思考回路を読み取れ、有栖川さんのミステリ観も垣間見え、一番のお気に入り。
あと「瑠璃荘」の「うちにくるか?」は、何気に名セリフですね。
同じく名探偵の名を冠した作品、ということで比べてしまうのですが、『火村英生に捧げる犯罪』よりもこちらの作品に軍配をあげちゃう。
なんだか久しぶりに、本格が好きでいいんだ、って勇気をもらえた気分。
やっぱいいなぁ、江神部長。でもこれを読んで、ますます謎は深まるばかり。
そして早くも次が読みたい気分。
でもそうすると完結しちゃうから、まだ先でもいい・・・。 -
江神二郎シリーズ初!短編集。加筆によって時系列の連作短編集に生まれ変わりました。読んだものも読み逃したものも、EMCの皆がどやどやとああだこうだ推論を交わしている様がなんて嬉しいことか。「四分間では短すぎる 」は特にたまらない。
書き下ろし「除夜を歩く」で江神さんは本格の様式美を愛しながらも、それすらも、幻だと言う。そしてそれこそを素晴らしく人間的だと言う。けれどこの短編の終わりには「ハードロック・ラバーズ・オンリー」のいわば【正解】が描かれている。この短編集内で「四分間」以外ではひとつだけ【正解】のなかった謎に。それなら作者のスタンスをここに読んでもいいんではないかな。
そして東京創元社ありがとう!ありがとう!何度でも言うありがとう!まとめて読めて幸せでした。 -
待ちに待った、江神シリーズの新作で、シリーズ初の短編集。
すでに長編を4本も読んでいる読者にとっては、
お馴染み過ぎるキャラクターたちだが、
各キャラクターたちの出会いのシーンや、
(しょーもない)ピンチなど、意外な一面が垣間見れる、
ファンにとっては嬉しい内容だった。
短編とはいえミステリのレベルは決して低くないが、
長編とはいえ事件の規模は比較的小さめで、
北村薫系のミステリに近い。
ハードな読み味のミステリは、次作の長編に期待したい。