- Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488027506
感想・レビュー・書評
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中途半端な謎解きに目を眩まされてるうちに、主人公の人間関係と状況はどんどんとシビアになっていく。
言葉でいうと今更だけれど、戦争の悲惨さを、1アメリカ兵から書いたもの。
匂いまで漂ってきそうでした。
エピローグは涙なしには読めません。 -
最初は退屈な推理ものかと思っていたら後半の伏線回収がレベル違い。これは凄い。
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コックと言っても、ノルマンディー上陸作戦で、敵の真っ只中に、パラシュートで降下し、死地をくぐり抜けたコックたちだ。戦争ドラマで、僕が一番好きな「バンド・オブ・ブラザーズ」とほぼ同じ激戦地を転戦している。よく、考えぬかれた素晴らしい作品。ぜひ、ハリウッドで、映画化してほしいぐらいだ。また、この作者の本を読みたい。
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合衆国陸軍の特技兵(コック)ティムは、1944年パラシュート降下でノルマンディー上陸を果たす。戦火という非日常での「日常の謎」を描く連作という形式でありながら、末端兵の目を通して戦争を描く小説でもある。
直木賞からもれたんですよね、この作品。なんともったいない。感情移入しやすい人物造形で、読みやすい物語の構造で、第二次世界大戦下のヨーロッパの戦場を知ることのできる優れた小説なのに。エンタメの顔をしているから、こわがりのわたしでも手に取れる。楽しめるのは、知識や想像力の欠如なのかもしれないけれど、この胸の痛みを物語の消費として片付けるつもりはない。
貸してた本が返ってきて今回5年ぶりくらいの再読だった。この間、『史上最大の作戦』を観て、少し知識が増えていた。知れば知るほど「おもしろい」し、その興奮は罪悪感を伴って。消費問題は実のところ個人的な課題であったりもするのだけれど。
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戦争の中でコック兵たちがちょっとした謎を解いたり友と話したり兵士を支えるため食事を作ったり、、
それを上回る戦争の描写が印象に残りました。
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「謎解きすら影を薄くする、戦場という非日常の現実」
第二次世界大戦での米陸軍第101空挺師団で、ノルマンディー作戦、マーケット・ガーデン作戦、バストーニュの森とくれば、スピルバーグとトム・ハンクス総指揮のTVドラマ「バンド・オブ・ブラザーズ」(原作は同名のノン・フィクション)
この物語でも、上陸直後の捕虜の処刑や市民の歓迎とリンチの実態、バストーニュの森での兵士の精神状態、ユダヤ人収容所の状態など、ドラマとソックリと思ったら、巻末の参考資料に原作もドラマも記載されており、納得。
違いは戦場で食事を提供する「特技兵」達の群像劇であること。
戦場という「非日常」的状況にあっても(当然に)食事という「日常」が存在することで、かえって最前線の過酷さが浮き彫りになる。
そこには、本来ならミステリーの主役となるべき「謎解き」すら、戦争の残酷さを強調する「道具」になりさがってしまうほどの主題が存在する。
ラスト数ページ、心の中にズッシリと重くのしかかる。
オマケとしては「ヤークトパンター」「Ⅲ号突撃砲」「ドイツ88ミリ砲」「M4シャーマン」など、「タミヤMMシリーズ」(1/35プラモデルシリーズ)でお馴染みの名前がポンポンと出てきてワクワクしたとともに、少し前に読んだ『その裁きは死』のホーソーン元刑事の嬉しそうな顔が何故か目に浮かんできた…。 -
タイトルからはうかがえないが、謎解き要素を含んでいます。とっても好み!読んでよかったと思う小説です。
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まるで映画を観ているかのような情景描写が素晴らしく、夢中になって読み進めた。
最初は戦場で起こる小さな事件を解決したりしていくのがメインだったのに、戦況が混乱していく中で人が淡々と死んで、主人公ティムの感覚が麻痺していく様子が悲しかった。
この小説の素晴らしいところは、第二次世界大戦末期のあの混沌とした状況をきちんと描いているところだと思う。
終わりが見えない戦争に振り回される下っ端の兵士達、ホロコーストや、戦争によるPTSD、巻き込まれる名前も知らない市民達、戦争の虚しさ、悲しさ、忘れてはいけないこと。
ここがしっかりしていなかったら、ここまで夢中になって読み進めることも、掻き毟られるような胸の痛みも感じなかっただろう。
戦争は終わっても、何も終わってなんかいないのだ。
生き残った人達は、過去の傷を一生抱えて生きていかなければならないし、未来を生きていく次の世代のために過去にあったことを伝えていかなくてはならない。
同じ過ちを起こさないために。
戦争の代償は大きく、結局それを抱えるのは政府ではない。
兵士であり、国民である。
私は第4章のラストで泣いて、エピローグで泣き崩れてしまった。
あまりにも悲しくて、喪失感にしばらく立ち直れなかった。
戦争を生き延びたからといって、幸せな人生が送れるなんて保証はどこにもない。
それでも、そういう理不尽な世界をちゃんと描いてくれるこの小説だから、この小説を支持したいし、これからも大事にしたい。
私は読後の喪失感を忘れたくないし、この痛みを胸にこれから生きていけると思う。
この小説に出逢えて本当に良かった。