白野真澄はしょうがない

著者 :
  • 東京創元社
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本棚登録 : 281
感想 : 30
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488028152

作品紹介・あらすじ

福岡のクリニックで働く「頼れる助産師の白野さん」には、自分とは対照的に美しい妹がいる。佳織は真澄の誇りだったが、真澄には仲の良い妹にも言えない秘密があった……。駆け出しイラストレーター、結婚して白野姓になった主婦、二人の男の間で揺れる女子大生、繊細な小学生。「白野真澄」という同じ名前を持つ者の五者五様のわだかまりと秘密。生きるのに少し不器用で頑固な者たちをを優しい眼差しですくいあげる短編集。

感想・レビュー・書評

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  • 同じ白野真澄という名前の人の、それぞれのエピソードが五篇入っている。

    それぞれ違う趣の話で楽しく読めます。
    僕は「砂に、足跡」が好きでした。若い時の焦りというか視野の狭さというか、後から思えば「何で」って思うような感情がよく分かって楽しかったです。

  • おなじ名前をもつ、年代も性別も環境もちがう5人の“白野真澄”。
    それぞれの抱える生きづらさとは?
    “白野真澄”が主人公の短編集。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    どのお話も、はじめに登場人物がどどっと数人出てくるので、主人公とそれらの人物たちの関係性をつかむのに少し苦労しましたが、そこを越えればとても読みやすくなりました。

    年代、性別、おくってきた人生、まったく違う5人の白野真澄たちですが、それぞれの抱える生きづらさは、どれも「わかるなあ…」と思いました。
    「両性花の咲くところ」は、主人公の両親のような生き方が在ること自体が、すごくうれしかったです。

    また「ラストシューズ」は、「ああ、熟年離婚はこんなふうにしておこるのか」と、とても納得してしまいました。
    長年、夫は外で仕事、妻は専業主婦という暮らしをしてきた“夫”は、「ラストシューズ」を読んで、自分のしてきたことをよく振り返ってみることをオススメします。
    夫はうまくやってきたつもりでも、妻は熟年離婚を考えているかもしれませんよ…
    そしてある日突然、この「ラストシューズ」のように、決断を迫られる日がくるかもしれませんから。

    ラストの「白野真澄はしょうがない」は、SNSトラブルのくだりが、まさに今の時代らしいエピソードであり、だからこそリアルでゾッとしてしまいました。
    画面を通して送りこむ悪意、自分が楽しむために画面の向こうにいる人をからかい続けた先になにが待ち受けているのか…
    ラストの短編は、オトナはもちろん、小・中・高校生にも読んでほしい物語でした。

  • やっぱすき、奥田さんの描く世界。白野真澄という同姓同名のそれぞれの物語。どの話も好きなんだけど、表題でもある白野真澄だからしょうがないっていう、名前がこうだからしょうがないっていうネガティブなイメージを持たれそうなのに前向きな様が好き。どれも一筋縄にいかなくていい具合にひねくれてて、好きです。

  • 同じ「白野真澄」だけど、
    それぞれ違う人生を歩んでいる。

    何でこんな設定の本を書こうと思ったのか。

    作家さんの発想ってすごいなあ。

  • 初読みでしたがすっごい良かった。
    装丁の軽い感じとは違って
    一つ一つのエピソードが
    とっても深い短編集。

    年齢性別の違う白野真澄さんたちの葛藤が
    どれも切実でまた、全員愛おしい。

    著者の今後の作品が楽しみ。

  • 「白野真澄」という同じ名前を持つ5人の物語たち。
    同姓同名って、姓名占いだと同じ運勢になるはずなのだけどね。ここにいる5人は5人とも全く重なるところのない人生のようで。同じ漢字の名前を持っていたとしても、別に同じ運命になるとは限らないということだろう。
    名前の字面を見ると、清楚な少女のイメージ。白くて清潔で澄みわたる水のようなヒト。
    けど、名前なんて、結局親(的な存在)が勝手に決めるもので、本人にとってそれは人生最初のプレゼントであるとともにある意味足かせにもなりうる。名前負け、とか、イメージと正反対な本人、とか。
    名前って、なんなんだろう。ほかの人と区別するものであり、自分を特定するものであり、そして、自分というものを入れる箱でもあり。でも、名前によって「決められた」人生って、結局その通りには行かないもの。
    自分の人生は、自分で作っていく。そういうこと。だって、「白野真澄」じゃしょうがないんだから。

  • はじめての作家さんの短編集。
    テーマと描きかたと構成のうまさが、朝比奈あすかさんの「憧れの女の子」とか山内マリコさんの「さみしくなったら名前を読んで」に近い感じがした。
    色んな「白野真澄」が悩みとかモヤモヤを抱えながら生きていて、それぞれがそれぞれの方法で乗り越えていく話。シンプルに元気がもらえる感じ。
    優しいやわらかな文体と、確かにえぐってくる強さ、いろんな意味で思い当たる節のあるストーリー、どれをとっても女の人っぽくて良かった。(私はなぜか、「どうしても女性の文章を読みたい!」となるときがある)
    「ラストシューズ」と表題作の「白野真澄はしょうがない」が全体的に好きだった。ラストシューズ、強い。自分の辛さをどうやって相手に分かってもらうか、の発想が素晴らしい。白野真澄はしょうがないって良い言葉。生きづらさを前向きな「しょうがない」で受け止めてもらえたら、強みになる。
    「名前をつけてやる」はどっちにも共感できなかったな~!!気持ちはわかるけど。めちゃくちゃリアリティあったな。同世代の女子に読んでもらいたい。笑

  • 様々な「白野真澄」がおくる人生を描いた短編集。
    助産婦の白野真澄は31歳で処女。イラストレーターの白野真澄はアルバイト先の書店で正社員にならないかと言われる。主婦や大学生、小学生など男女問わずの白野真澄たちが毎日を色々な思いで過ごしている。連作ものではないけど、共通して登場するのが赤ちゃんの名付け本。なぜ彼ら彼女らが真澄という名前になったのかも語られていて、名前の持つ意味がテーマ、なのかな。

  • 5人の白野真澄
    どれも最後温かい気持ちで終わる、面白かった。

  • 白野真澄は、から始まる同姓同名5人を描いた短編。所々繋がっていて、同じ本や前作の白野真澄がサラッと名前だけ登場したり。設定は面白いが、文章を読んでいて、心が動くような内容ではなかった。単純に作者の方が、こんな設定の物語書きたいなーて書き上げた内容かな?と思うような、自己満的な完結が多いような気がしました。個人的には読んでいる私の気持ちを置いてビュンビュン場面や時間が変わっていったり、気持ちが揺れ動くような深掘りしてほしい場面も、スッと一文で終わられてたりで、惜しいなと。奥田亜希子の他作品も読んでみて、良さを発見してみようと思います。

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著者プロフィール

1983年愛知県生まれ。愛知大学文学部哲学科卒。2013年『左目に映る星』で第37回すばる文学賞を受賞しデビュー。他の著書に『透明人間は204号室の夢を見る』『ファミリー・レス』『五つ星をつけてよ』『リバース&リバース』『青春のジョーカー』『魔法がとけたあとも』がある。

「2021年 『求めよ、さらば』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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