- Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488028978
作品紹介・あらすじ
ススキ野原のまんなかに立つ秋葉図書館。ごく普通の市立図書館に見えるけれど、実はちょっとした伝説がある。それは、ここの司書さんは探偵で、図書館の本で謎を解決してくれるということ。帰郷の折にふらりと訪れた人から、地元の小学生や恋する大人まで、悩みを抱えた人たちにそっと本を差しだすと……。図書館開館準備の舞台裏を描いた「人日」や、書き下ろし「春嵐」など、全6編を収録。本好きにはたまらない、ほんわか図書館ミステリのちょっぴり番外編。
感想・レビュー・書評
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シリーズの3作目。
秋葉図書館の四季
今回も名探偵ばりの司書さんらの活躍があり悩める利用者さんの心に寄り添う。
良夜〜リトル・ブック・ルームのオーナーが亡くなり『私に何かあったら猫を見てね』とスタッフに託した言葉の意味とは。
事始〜佐由留の父の幼い頃の思い出と元妻の愛読書『風と共に去りぬ』の解釈の違い。
聖樹〜平野の同級生の光彦の苦悩の理由は、事故の犯人ではないことの証明をすること。
春嵐〜司書・日野のお茶仲間であるバス事故で亡くなった藤代さんに関わる出来事となった謎。
星合〜秋葉家の大刀自が鍵をかけていた文箱の中には…。
最後の歌が良い
〈生かされてまた迎えたる星合う夜
家人の寝息安らかに聞く〉
人日〜図書館開設準備中に寄贈依頼をした議員宅の秘密とは…。
今回は各短編の中にいくつかの懐かしい本が出てくる。
また読み返したいと思いながらちょっとした日常にある謎と絡ませているところにも興味をひく。
この本の隠れたテーマは「どこにいたの?」である。
「いるべき場所にいなかった人」によって起こった物語。
図書館の文子と能瀬さんも遠景に退きつつ、しっかりと顔を出しているとわかる。
存在無くしては成り立たない図書館員たち。
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シリーズものとは知らず、3作目のこちらから読み始めたけど、特に問題はなかった。
「どこにいたの?」がテーマの図書館ミステリー。
ミステリーというより謎解きの方がしっくりくるかな。
架空の田舎町である秋葉市や、はっきりしないけど少し昔の時代設定が、優しさや懐かしさを感じさせる。
名作もたくさん登場し、その逸話も面白かった。
図書館ものが好きなので、前作も読んでみようと思う。 -
秋葉図書館の四季シリーズの3冊目、前作からは随分と時が経っての発刊だが、物語の中ではそうでもない。
一読後、シリーズとは言うものの、これはスピンオフか外伝かと思ったら、表紙カバーの折り込んでいる部分に「ほんわか図書館ミステリのちょっぴり番外編」とあった。なるほど、そうかと首肯した。
前作までの登場人物たちがよく動いている。彼らの図書館との関わりがとてもよい雰囲気で、司書さん方の対応もあたたかい。かつての新人司書さん、登場シーンは多くないが、成長した雰囲気がうれしい。
司書さん方がふんわりと問題解決に関わっていく温かさ、距離感にほっとする。
問題・謎に囚われて離れられなくなる気持ちがよくわかる。その時に頼る場所があるというのは嬉しいことだと思う。
さて、次作はどのような趣向で楽しませてくれるのだろう。番外編とあったのだから、次作は司書さん方の活躍が中心になるのか、それとも、町の推移に関わる人々の様子が中心になるのか、ずっと読み続けたいシリーズである。 -
いかにも司書さんが書いた小説だった。最近の図書館はイベントやマルシェで交流の場になっているところが多いけど、こういう図書館も恋しい。
図書館に持ち込まれるレファレンスを解決する司書たち。登場人物たちの過去が意外に、皆訳アリなのがミステリー感を盛り上げていた。 -
「どこにいたの?」をテーマに描かれる日常ミステリ。図書館の本が、謎と訪れる人々の心のしこりを解きほぐす過程と、悩める利用者にそっと寄り添う姿が温かくて良かった。「星合」のお話が特に好き。最後には図書館開館までの準備過程も描かれていて興味深い。図書館の良さと居心地の良さを改めて感じられる作品。
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舞台は東京、秋庭(架空の地名?)。
秋庭にある秋葉図書館に持ち込まれる利用者?からの謎。
その謎を図書館員の本にまつわる知識で解き明かすミステリーの短編集です。
ただ、ミステリーと公式に書いてますが、ミステリーというよりは、持ち込まれた謎を解決していく過程を楽しむ物語という感じで、読み手である読者は、知識がないと謎解きに参加するのは難しいと思うのと、そもそも、後出しみたいなものが多いので、謎解きを楽しむことは難しいかな?と思う作品です。
ミステリーというジャンルとしてはどうよ?とは思うものの、読んでいて面白く、純粋に物語として楽しめる作品ではないかと思います。
持ち込まれる謎が、基本的には令和や平成の常識では通じないものが多く、作者のあとがきにあるように、確かに、昔話とかわらないところがあるなと思います。
ただ、そういう時代も確かに聞いたことあるよなぁという程度なのですが、確かに、昭和40年代頃の話って、今や昔話なんだなぁと感じました。
また、短編のタイトルが綺麗で、日本人の漢字の使い方って綺麗だよなぁと感じました。
そんな本作からは感じたことは、今の常識や価値観で昔のことは考えられないということ。
当たり前でしょ?といえばそれまでなのですが、そんな当たり前のことをわかっていても、少し前のことでも今の常識で考えてしまうことです。
今なら、夫婦共働きも当たり前ですし、女性が大学に進学して学んで、社会に進出することも当たり前。
勿論様々な課題はまだまだ残っていますが、女性は寿退社が当たり前、定年は30歳という時代は50年前くらいまでは当たり前、女性が学問なんかするものじゃないという考えは100年前にあったわけです。
よくよく考えれば、私の世代(40代)を軸に考えても、親世代、祖父母世代で常識や馴染んだものが違うし、私の下の世代はポケベルの存在自体知らないし、考え方も違うわけです。
そういう当たり前のことをわかってはいても、なぜか他の世代のことを考える時は、今の自分を軸に考えてしまう。
そういうことってあるよなぁと気付かされる、そんな日常の謎が多かったなと感じました。
そして、実はそんな過去とのジェネレーションギャップを埋めることができるのは実は図書館だったりするんだろうなぁと思いました。
図書館は過去と未来をつなぐもの。
まさに失せもの探しは図書館へと思う作品です。 -
とても心地よく読める謎解き小説でした。
本書を読んで知ったのですが、シリーズ物の番外編でした。
内容としては、シリーズ物を読まなくてもすぐに世界観に浸ることができました。
前作の2作ともとても読みたくなりました。
とにかく沢山の積読本が読み終わったら読んでみます。
本当に心優しくて心地の良い小説でした。 -
読了。