夜明けの睡魔―海外ミステリの新しい波 (創元ライブラリ) (創元ライブラリ L せ 1-1)
- 東京創元社 (1999年5月23日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (357ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488070281
作品紹介・あらすじ
様々なタイプの作品が陸続と出現し、昔の単純なジャンル区分では捌ききれなくなってきた現代ミステリ。“パラダイムの転換”は推理小説の世界でも着実に進行しつつあるのだ。こういう混沌とした状況のなかで、本当に面白い作品を独特の語り口で紹介しようと試みた、俊英・瀬戸川猛資の代表的著作が装いも新たに甦る。解説=法月綸太郎
感想・レビュー・書評
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ミステリファンの間では広く知られる伝説的な書評集。著者の瀬戸川さんは早逝されたが、同窓の北村薫さんはじめ、多くのミステリ作家、特に新本格派の作家たちが氏の評論に影響を受けたことを語っている。
早川書房の『ミステリマガジン』で「夜明けの睡魔」の連載が開始されたのが1980年。当然、私はリアルタイムでは知らず、20年ほど前、文庫になって初めて手にした。1960〜70年代の作品の紹介が多く、その当時でさえ絶版ものが多々あったので、本書を読みつつ、図書館や神保町を歩き回ったのが懐かしい。『ホッグ連続殺人』はまだ押入れのどこかにあるだろうし、私がジョン・ディクスン・カーを好きなのは間違いなく瀬戸川さんの評論によるところが大きい。
今回懐かしく読み返してみて、瀬戸川さんが、ミステリ評論をしつつ、意外なほど「文学」を意識していることにも気がついた。早く喫茶店で珈琲を片手に、古き良き翻訳ミステリにどっぷりと浸かれる社会に戻ってほしいと思う。息の詰まるような昨今、それまではせめて自宅で、コリン・デクスター、ロスマク、ピーター・ラヴゼイ…お気に入りの作家たちの、息をのむようなミステリでくつろぎたい。
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これは史上稀に見る大傑作評論・エッセイである。全てのミステリ評論家は本書をバイブルとして座右に置く事を義務付けるべきだ。
入り込んでいきやすい文章と作品に対する着眼点の鋭さ。これは本書が数十年前に書かれた事実を忘れさせてしまう。
特にロス・マクドナルドは本格ミステリ作家であるだなんて提言は、昨今正にそのような再評価が成されている状況を鑑みるとその先見性に驚嘆そして戦慄を覚えたし、『赤毛のレドメイン家』の分析も、正に眼からウロコ物であった。
享年51歳。改めて早過ぎる死だと痛感した。 -
著者の名前は前から知っていながら瀬戸川猛資氏の著作は中々読めていなかった。ここ最近ネットでも氏の再評価が行われている事から氏のミステリー評論を集めた本書を買って読んで見たけども、本当に面白い!
猛資氏の博覧強記ぶりもさる事ながら、ミステリーの作品の世界を誘ってくれる文章に引き込まれてしまいました-
そして、GW最終日の今朝喫茶店でモーニング取りながら読んだ本書の評論の中で、猛資氏が1980年の広島と近鉄の日本シリーズで近鉄応援してた事を...そして、GW最終日の今朝喫茶店でモーニング取りながら読んだ本書の評論の中で、猛資氏が1980年の広島と近鉄の日本シリーズで近鉄応援してた事を告白していた...スポーツとミステリという一見関係ない繋がりから、あえてこの両者をくっつけた、スポーツを題材としたミステリに結びつけ、最後は「死の競歩」という、「本格ミステリ史上に類例のないほどの特異な作品」を紹介する
なんかその作品も読んでみたくなりました2023/05/07
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≪わたしが題名にこだわるのは、題名は作品の大事な顔だと考えているからである。純粋にオリジナルな、イマジネーションを喚起する優れたタイトルは、中身に関係なく、それだけで称賛されるべきものだと思う。≫
この文章にとても救われた。
TwitterのTLでよく「タイトルが決まらない」「タイトルが決められない」と嘆いている方をちらほら見かける。その度に不思議で仕方ないのだ。なぜ先に決めない、考えない、考えながら書かないのだろうかと。
わたしも著者と同じ考えだ。ゆえに悩むし、決まらなければ先に進めない。候補があって決めきれないままの場合は除くが、書きあがるその時までタイトルが決まらないと不安で仕方ない。
内容とタイトルはあっているのだろうか。伝わるなにかがあるだろうか、と。
素人の二次創作で、pixivでの評価などほとんど貰えないに等しい、粗末な腕ではあるが、書くことが楽しく、そしてなにかを伝えたいから書く。プロの作家さんのようにその作品にメッセージを込めるなど大それたことではない。ただこのネタいいでしょ?!という思いだ。そして拙すぎて本文では伝わらないかもしれない。ダイレクトに届いて欲しい。と願いを込めて、話に愛着を持って欲しい。気に入ってもらえたら嬉しい。と考えながらわたしはタイトルをつける。
○○な話。とタイトルなのかあらすじなのかわからないタイトルが悪いとは言わない。プロの作品でもそのタイトル意味あるの?と首をかしげる物もたくさんある。書いた本人がそのくらいの認識しか持たずにタイトルを付けるのならそれは仕方ないことだ。でも、ちょっと立ち止まって欲しい。考えて欲しい。キャラありきだから。ストーリーありきだから。それがあればタイトルなぞどうでもいいと思っている、あるいは深く考えていない方に。
せっかくの作品、もう少し気を使いませんか。
作者(親)として最初、或いは最後に作品(子)に与えるプレゼントであり、名刺であり、洋服です。
内容で勝負できれば嬉しいが、このタイトル良かったよっていつか言われてみたい。
考えていることが肯定されたのだと。この本読んで救われました。
この本を手に取ったきっかけは別件だったけれども、読んで良かった。と心から思えた一冊。 -
すべてのミステリファンにおすすめ。たとえ好みの方向性が違ったとしても、間違いなく読む価値あり。文庫で1100円、それが安いって思える。
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昔の本だけれども、読みたい本がいっばいあった。
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暫くぶりに読み返してみると、普段自分の意見として語っていたベースがここにある事にあらためて気付かされる。かなり影響受けてます。
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(何度目かの)再読。
読むたびに、前に気づかなかったことに気付かされる。あまりにも瀬戸川さんの筆致が軽妙(かつ巧妙)なため、本来ならじっくり読まなければならないところをうっかりつるつると読み進めてしまうからだ。
これからもまた何度も読み返すことだろう。 -
堅苦しくなく、さまざまなミステリについて語られている。
にもかかわらず、それぞれの作品についてかなり深いことを言っていると思うし、事実そうなのだろう。
古典的な作品の盲目的な評価を止めて論じてみたり、広く膾炙されている味方とは違った見方をして見たりと、最後まで一気に読ませる評論集だった。
都筑センセーの印象に似ていると感じた。
偶然昨日、福永武彦、中村真一郎、丸谷才一の「深夜の散歩」(ミステリ・マガジンの前身の雑誌に連載)を読みました。この題名は、おそ...
偶然昨日、福永武彦、中村真一郎、丸谷才一の「深夜の散歩」(ミステリ・マガジンの前身の雑誌に連載)を読みました。この題名は、おそらくそれを受けてのものだと思います。