琥珀捕り (創元ライブラリ)

  • 東京創元社
4.17
  • (1)
  • (5)
  • (0)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 150
感想 : 3
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (458ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488070823

作品紹介・あらすじ

この作品には、A(対蹠地)にはじまりZ(回転のぞき窓)で終わる、ギリシャ神話、中世キリスト教聖人伝、アイルランド民話から望遠鏡や潜水艦の発明に至る、一見無関係な26の単語にまつわる物語が納められている。それぞれの物語は登場する単語やイメージによって、次々と別の物語に高飛びし、そして終点にたどり着いたとき、読者はひとつの長い物語を読んでいたことに気づく。「文学におけるカモノハシ」と言われた驚異の物語。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 祝文庫化!

    幻想百科事典  キアラン・カーソン『琥珀捕り』 - 奇妙な世界の片隅で
    http://kimyo.blog50.fc2.com/blog-entry-277.html

    琥珀捕り - キアラン・カーソン/栩木伸明 訳|東京創元社
    http://www.tsogen.co.jp/sp/isbn/9784488070823

  • 目次をみるとアルファベットAからZで始まる26のワードが並んでいる。短編集かな、と思って読み始めたけれど、なんだろう、どう説明していいのかわからない。基本的には「物語」ではない。どちらかというと、澁澤龍彦のエッセイみたいな感じだ(と思っていたら最後の解説で柴田元幸がやはり澁澤龍彦を引用していた!)

    ものすごーく博識な人が書いた、雑学エッセイみたいな感じで、話題は連想の赴くまま次から次へと変わっていく。各話の共通点は、とにかく毎回多少なりとも「琥珀」に関わる話題が出てくること。メインの話のこともあれば、何か別の話のついでにちらりと琥珀という言葉が出てくるだけのこともあり、そのたび「あ、ここにも琥珀発見!」と、琥珀を集めながら読書している感覚になった。まさに琥珀捕り。

    基本的には著者自身と思しき語り手の記憶なのだけど、シリーズものとして、著者の父親が語ってきかせた「冒険王ジャック」の物語というものがある。父も誰かしらから伝聞したアイルランドの民話らしい。千夜一夜的な枠物語で、ある謎めいた裕福な女主人のいる屋敷では、おもしろい話をした者には宿と食事を提供してくれるという。ただし話は実話でなくてはならない。ジャックがそこに行くと、女主人の他にそれぞれ女性を肩に乗せた12人の男たちがいて、彼らの前でジャックは七日間かけて七つの話を語る。

    その他、オランダ人のボス氏が語る絵画関連の話と、彼の友人のポーランド人の船長が語る話など、いくつも物語が入れ子になっている構成。フェルメールの贋作画家メーヘレンの話は面白かった。ジギタリス(キツネノテブクロ)などの植物学、琥珀含む鉱物、あとはギリシャ神話や聖書ベースの伝説などが多く散りばめられていましたが、個人的にはいくつかあった人魚のエピソードが好きでした。以下備忘メモとして人魚のエピソードを抜粋。

    ○オランダで嵐のあと、浜辺に打ち上げられていた人魚は、親切な人間の女性に助けられ、絵を描くことを覚える。海の底の世界を描いた素晴らしい絵はたちまち評判になるが、彼女はその絵をけして売らなかった。何年か人間に混じってくらしていたが、世話をしてくれていた女性が亡くなり、その葬儀中ひとりで留守番しているときに蝋燭を倒してしまい、絵も彼女もすべて燃えてしまった。(Kipper 燻製ニシン)

    ○リトアニアにはバルト海の海底に人魚女王ユラテが住む琥珀の宮殿の言い伝えがある。あるときユラテは人間の漁師と恋に落ちるが、ユラテに横恋慕していた雷神ペルクーンは嫉妬のあまりこの漁師を殺し、宮殿を破壊してユラテをその廃墟に繋いでしまった。今もユラテが零し続ける涙が琥珀に変わっている。(Nemesis 思い上がりを罰する女神)さらに人魚女王ユラテは、恋人の漁師の遺体が魚に食べられてしまうのを悲しんでその両目を二つの緑の星に変えた。(Submarine 潜水艦)

    ○アルスターの若い王子トマスが海釣りに行くと美しい人魚に出会う。人魚は王子を魚に変え、海底の城に連れていく。しばらくは竜宮城の浦島よろしく歓待され楽しく過ごすが、やがてこの人魚のもとにバルト海の人魚女王から挑戦状が届く。人魚の騎士同志の決闘をすることになり、トマスも見物に出かけるが、アルスター人魚のフィアナ戦士団は、バルト海の七人の黒騎士たちに敗北。全員殺され、トマスは泣きながら人間界に戻る。(Undine 水の精)

全3件中 1 - 3件を表示

キアラン・カーソンの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
ルーシー・ウッド
スザンナ・クラー...
ジョン・コナリー
エラ・フランシス...
クリス ウィタカ...
劉 慈欣
ヴィクトール・E...
米澤 穂信
カズオ・イシグロ
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×