木曜の男 (創元推理文庫 101-6)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (239ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488110062

感想・レビュー・書評

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  • ブラウン神父でおなじみチェスタトンの唯一の長編推理小説。津村記久子さんが何かの本で紹介していて知った。

    登場人物リストの「カブリエル・サイム 詩人、のちに木曜となる」の時点ですでにカオス。怪奇にして難解。よくわからないまま、うねりの勢いにのまれて読み進み、終わってポカンとする。読後に誰かとこれってこういう意味だよね、と確認したくなる不思議な小説。

  • 古典新訳文庫版を読んでそれほど日がたたないからか、今回はわりあい一気に読めた。話の性格上、なるべく勢いのままに読んだ方がいいように思う。訳は名訳と言われる割にところどころ意味の通らないところがあった(南條訳を参照してみると意味はわかる)が、きびきびしたリズムのあるいい文章なので、それに乗せられたところはあるかも。
    映画でいうと『ナイトメア・アリー』みたいなかんじかな。悪夢感が似てる。後半に、現在との関連を思わせる記述が時々入ってくるのが興味深い。

  • 光文社古典新訳文庫から本書の新訳版『木曜日だった男』が出版されたことを知った時は驚いた。あれほど癖の強い、あくの強い作品を新訳版で出す光文社の編集部の見識をまず疑った。この光文社のシリーズは商業的にも意義的にも世の読書家に好評をもって迎えられているらしく、その余勢を買ったあまりの無謀な行為ではと疑ったのである。
    しかしネットでの書評を読むと意外と良好のようで、不評コメントは私が調べた限りでは見当たらなかった。
    で、本作は間違いなく傑作である。しかし残念ながら万人に推奨できる傑作ではない。これを初チェスタトンとして選ぶとしたら、その後その人はチェスタトンと訣別するのではないだろうか。なぜならば一読しても、訳が解らないからだ。

    物語はガブリエル・サイムなる詩人が無政府主義者と論争になるところから始まる。主人公詩人!しかも相手は無政府主義者!もうこれだけでクラクラだ。
    この「クラクラ」には二種類の意味がある。
    1つは文字通り、理解不能という意味でのクラクラ。もう1つはこのチェスタトンならではの人物設定に対する酩酊感のクラクラである。
    実は私はこの本を2回読んでいる。したがって上述のクラクラ感は正に私が抱いた感覚なのである。

    さて物語はサイムが「日曜」と名乗る人物が議長を務める無政府主義者集団に加わる。実はサイムはロンドン警視庁の公安警察官であり、彼はこの無政府主義者集団を壊滅するために送られたスパイだったのだ。
    そして彼は「日曜」から「木曜」と名づけられる。そう、他のメンバーにはお察しの通り、「月曜」から「金曜」という委員会がいるのだ。そしてサイムはこのメンバーと接触していくのだが、実に意外な展開が待っている。
    そして最後に残った議長「日曜」を追い詰めるサイム。しかしそこで明らかになる驚愕の事実!そして・・・。

    このオチ―あえて真相と云わない―を知ったその瞬間、読者はきっと呆気に取られるだろう。そして唐突に訪れるカタストロフィに似た結末に呆然とせざるを得ない。
    通常ならば駄作のレッテルを貼られるべき作品なのだが、チェスタトンの作品を読んできた者ならばこの作品は甘美な麻薬の如き魅力に満ち満ちているのだ。

    上で述べたプロットを彩るのは全編これ、チェスタトンの哲学、逆説、宗教論とあらゆる思想論だ。サイムをチェスタトンの代弁者にし、事ある毎に登場人物と議論を重ねる。リアリティという観点から極北の位置に存在する人物たちはもちろんそんなサイムを変な奴だと一笑に付せず、論破しようと議論でもって対決する。この議論が実に面白い。いや正直に云えば1回目の読書では全く読みにくくてしょうがなかった。さらにその難解な文章の合間を縫うように展開するストーリーもまた曲者であり、何がなんだか解らないうちに1回目の読書は終ったと云えよう。
    しかし2回目に読むとこの難解さが逆に心地よくなってくるのだから不思議だ。恐らくそれは免疫が出来たのだろう。だからチェスタトンが読者に放つ悪夢としか思えないクライマックスシーンも実に愉しめるようになる。特に本書では一般大衆と警察が入り混じって大勢サイムを追いかけるシーンは悪夢さながらも一歩間違えば喜劇である、そんな余裕まで感じられるようになる。

    つまりこれはチェスタトンしか書けない奇書なのだ。それを愉しめるかどうかはまず本書を当たる前に「ブラウン神父シリーズ」を先に当たってもらいたい。その後なおチェスタトンを読みたいのであればこれは本当に読むべき作品である。
    数少ないチェスタトンの長編という意味でも貴重な1冊。当時私は創元推理文庫版の難解な訳にてこずったが、今は光文社から新訳版が出ている。今からこの作品に遭遇する人はなんと恵まれた人たちなんだろうと私は思わずにはいられない。

  • 秩序と平凡な人間の側に立つ詩人にして刑事である男が、ひょんなことから無政府主義者の集まりに幹部の一人「木曜」として忍び込み、その他のメンバーとともに、「日曜」の仕掛けた様々な試練に翻弄され、地獄の苦しみを味わう。冒頭のロンドン西郊の住宅地の強烈な夕焼けにはじまり、夏の夜の夢のような一夜が明けた後の朝焼けまで、そこここに散りばめられた豪奢な色彩(とその影でもある暗色)が素晴らしく、また、後半の日曜の追跡劇はやがて妖精の国と宗教劇と若かりし日の記憶の領域に滑りこんで、不思議な美しさをかもし出している。

  • 無政府主義者の秘密結社に潜入した刑事サイム。「木曜日」の暗号名でトップたちの会合に参加。秘密結社のリーダー「日曜」。曜日の暗号名を持つメンバー。ロシア皇帝の暗殺の為に出発した「水曜」「土曜」。正体を明かすメンバーたち。水曜との決闘。月曜に率いられた群衆からの逃亡。追い詰めたはずの日曜の語る真実。

     2010年2月4日購入

     2011年5月20日読了

  • 米澤穂信の100冊その78:直接的影響では「ブラウン神父」。とのこと。

  • つまり、そういういことです。

  • ブラウン神父シリーズの作者チェスタトンが書いた幻想小説?
    人は「神の平和」を許すことができるのか。

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