黒死荘の殺人 (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (395ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488118334

感想・レビュー・書評

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  • 【プレーグ・コートの殺人】
    H・M卿初登場作品。

    曰く付きの幽霊屋敷を訪れる前半の不気味な雰囲気が最高です。
    更にその最中に起こった密室殺人事件の不可解さが恐怖に拍車をかけており、怪奇小説としてのドキドキ感とミステリとしての不可能犯罪の発生にワクワクしました。

    幽霊騒ぎなどトリックに過ぎないと前半ではマスターズ警部が意気揚々と黒死荘に乗り込んでいますが、密室殺人の不可解さにあえなく退場してしまいます。
    一層混迷を極め、恐怖が募るばかりな状況の中で登場したH・M卿が、その個性的な風貌と態度とで奇怪な雰囲気を壊していく後半が爽快です。

    特にテッドの取調べの場面を、後でH・M卿がその心理を辿っているのがおもしろかったです。
    これまでの異常な出来事やダーワースに心酔しているほかの人物達に惑わされて、テッドの取調べ時の異常な態度を自然に受け入れてしまっていました。

    石室での密室殺人の真相は素晴らしく楽しい。
    とても稚気に富んだアイディアを恐ろしいエピソードで目隠しにし、ストーリーの上手さが光っていす。

    気味悪い前半、H・M卿の活躍が楽しい後半、そしてドラマティックな結末と贅沢な一冊でとても楽しく読みました。

  • 面白かったー。
    幽霊があるきまわる館で
    降霊会の夜に
    出入り不可能な密室で
    めった刺し。
    それだけでも面白いのに
    H・M卿のクセのある感じと、
    しっかりした解決とが
    すっごく面白かったです。

  • いわく付きの幽霊屋敷『黒死荘』でのおどろおどろしい雰囲気の描写は見事に英国怪奇小説。 物語前半は、降霊術のイカサマを見破ることに慣れているマスターズ警部が、見事に幽霊しか出入りできない完全な密室での不可能犯罪に振り回されて、超自然的なモノの存在が強調されるような演出。参加者達のヒステリックな反応とあわせて、怪奇テイストてんこ盛り。
    後半、HM卿が登場すると、地に足のついた生身の人間が犯人であることがあぶり出されていきますが、アレはちょっと「えっ」と思われる方がいるのも判らなくもないような…。伏線もあるけど、アレに気づくのはなかなか難易度高いですね…。ラストは見事なドラマでした。

    幽霊屋敷内の描写が精緻で、それがまた怪奇風味を増すのに一役買っています。詳しい人は、文章内の記述から見取り図書けたりするんじゃないですかね。建物の位置関係がトリックに関係しているわけではないので実害はないのですが、こういう英国建築物の知識に疎いので、モヤッとしたまま読んじゃったのはなんとなく残念。
    (ハヤカワでは『プレーグ・コートの殺人』)

  • 密室と猟奇、そのすべてが鮮やかに解体され、悲劇が幕を下ろす。

  • ヘンリ・メリヴェール卿シリーズの第1作です。
    前半の怪奇的な雰囲気は好みでしたが、ヘンリ・メリヴェール卿が登場してから、物語の雰囲気が変わって戸惑っているうちに読み終えた感じでした。(^^;
    密室トリックも、今ひとつ驚きがなかったかも。

  •  1934年作。カーター・ディクスン名義で、探偵役ヘンリ・メルヴェール卿が初登場した作品。
     原題「The Plague Court Murders」のPlagueはまさにペストのことだから「黒死荘」となる。小栗虫太郎の珍作『黒死館殺人事件』も連載されたのは1934年なのだが、タイトルに関してリアルタイムにパクったんだか、どうだか。
     作者の「怪奇趣味」は今回は、事件の背景にある降霊術や「呪われた幽霊屋敷」の要素に現れている。が、そういう雰囲気が色濃いのは最初の方だけで、結局は理詰めで真相を暴いてゆくのだから、最後には超自然的要素は払拭され人為のみが問題になる。この点は、やはり怪奇小説的な楽しみとは全然違うところで、ちょっと肩すかしを食らってしまう。
     本作も例によって「密室もの」である。どうしてカーはそんなに密室殺人が好きなのかよくわからないが、一見ありえなさそうなことを遂行するという犯罪のパズルがそんなに面白いのだろうか。あり得ない→あり得た、というプロセスが、辛うじて怪奇小説のスタイルと幾らか似ているのかもしれない。
    『夜歩く』(1930)は描写が充溢しすぎていて読みにくいところがあったが、本作ではやや地の文体が抑制され、おかげでスムーズにストーリーが流れる。
     しかし、あまりにもややこしい「真相」が、どうにも私にはすっきりしなかったが、本格推理小説のマニアならメモでも取りながら読み、本当にパズルを解くような読書に喜びを見いだすのかもしれないなと思った。

  • 初めて読んだカーター・ディクスン(ジョン・ディクスン・カー)の作品。

    幽霊屋敷、降霊会、密室殺人...
    こういったワードだけで、ワクワクして読み進めました。
    自分で推理してみたのですが全く分からず...笑
    ヘンリ・メリヴェール卿(H.M)の解決編を読んで納得しました。

    1930年代のロンドンが舞台で、降霊術や霊媒といった設定に馴染むのに少し時間がかかりましたが、前半の不気味な屋敷の描写やトリックの見事さに圧巻でした。

  •  カーター・ディクスンというのはこんな小説を書くのだ、というイメージどおりでまるで見本のような本。前半のゴシックロマン風の展開は何となく読みにくかった。じっくり読んでいけばそれなりの味が出てくるのだと思うし、思わせぶりの複線っぽいものが次々と出てきて興味深いのは確かなのだけど、やっぱり「早く本題に入れ」という気分が否めない。実際に事件が起きて、本命の名探偵HMが出てきて俄然おもしろくなる。そこからはラストまで、勢いのまま読みふけることができる楽しさで、前半はいわば助走の長さなのだなと思う。

     どう考えても不可能きわまりない密室殺人のトリックは、××を使うというもの。これにはまったく驚いた。というのは、この密室トリックはあまりにも有名で、実際にこの本を読む前に知っていて、しかも「こんな子供だましなトリック、だれがひっかかるものか」なんて出典も知らずに思っていたものだからだ。実際に作品の中に溶け込んでくると、これがすばらしい効果を上げていて、しかも最後の最後まで、このトリックが使われていることに気づかない。改めて、そのあたりがミステリの醍醐味、密室殺人の巨匠カー(カーター・ディクスン)のすごさなのだと改めて舌を巻いてしまった。このびっくり感だけでも読む価値はある。

  • 友人ディーンに幽霊屋敷で
    一晩明かして欲しいと頼まれたケン。
    幽霊退治の専門家マスターズ警部に
    協力を要請。
    館では心霊サークルの面々が
    怪しい集いを催していた。
    その夜心霊研究家が石室で殺害された。
    完全なる密室での不可能犯罪。
    ケンらはH・Mに事件解決を依頼する。



    記念すべきH・Mの初登場作品。
    真相は好みではなかった。
    推理小説はそもそもフィクションで
    リアリティを求める事自体おかしいの
    かもしれないが、
    サーカスやら、変装やらと言われると
    それはないだろうと思ってしまう。
    凶器も検死で特定できるだろうに。
    ちょっと現実離れし過ぎていた。
    その辺も古典の醍醐味だろうか。
    しかし見事な伏線、複雑な構成は凄い。
    読み物としてもなかなか。
    ホラーを思わせる怪綺談は楽しめたし、
    ラストは背筋がゾクゾクした。
    印象に残る一冊には違いない。

  • 「白の僧院」よりはるかに好み。
    第2の殺人や協力者については薄々察っしがついたが、密室トリックはまったく分からなかった。正直なところ、そんなにうまく警察の目を誤魔化せるものか疑問に思わなくもない(いや、そもそも実行可能?)。
    でもオカルトちっくな演出と事件が程よく絡まり、トリック云々よりもストーリーに面白味があり、想像以上に論理的な真相解明がなされて満足な読後感。
    ただ「白の僧院」といい「黒死荘」といい、H・M卿の犯人に対する詰めの甘さが少し気になる…。情深いと言えば言えなくもないけど。

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著者プロフィール

Carter Dickson (1906-1977)
本名ジョン・ディクスン・カー。エラリー・クイーン、アガサ・クリスティーらとともにパズラー黄金時代を代表する作家のひとり。アメリカ合衆国のペンシルベニア州に生まれる。1930年、カー名義の『夜歩く』で彗星のようにデビュー。怪事件の連続と複雑な話を読ませる筆力で地歩を築く。1932年にイギリスに渡り、第二次世界大戦の勃発で一時帰国するも、再び渡英、その後空襲で家を失い、1947年にアメリカに帰国した。カー、ディクスンの二つの名義を使って、アンリ・バンコラン、ギデオン・フェル博士、ヘンリー・メリヴェール卿(H・M卿)らの名探偵を主人公に、密室、人間消失、足跡のない殺人など、不可能興味満点の本格ミステリを次々に発表、「不可能犯罪の巨匠」「密室のカー」と言われた。晩年には歴史ミステリの執筆も手掛け、このジャンルの先駆者ともされる。代表作に、「密室講義」でも知られる『三つの棺』(35)、『火刑法廷』(37)、『ユダの窓』(38)、『ビロードの悪魔』(51)などがある。

「2023年 『五つの箱の死』 で使われていた紹介文から引用しています。」

カーター・ディクスンの作品

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