- Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488118389
作品紹介・あらすじ
密室殺人の被疑者となった青年の立場は圧倒的に不利。弁護に当たるH・M卿に勝算はあるのか。法廷ものとして謎解きとして間然するところのない絶品、創元推理文庫に登場!
感想・レビュー・書評
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初読の時のビックリした感じ、再読では薄れてしまうのかと思ったが、どうしてどうして~新訳のせいか読みやすくカーの持ち味を生かした段割りのお陰で途中で本を離すわけにはいかなかった。
でも時間がかかってしまったのは丁寧に読み込んだから。(常々私にはこの丁寧さが足りないと思ってるが)
これを機会にまたカーの世界に浸りたいと思ったけれど、解説にあるとおり当たり外れがあるので二の足を踏んでいる状態。いくつか読んだけどイマイチ分からないのもあったので。(当たり外れと言っても良かったんだ~)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
本格ミステリ感は薄かったけど、逆転裁判みたいにスリリングですごくおもしろかった。
法廷ものやカー作品をもっと漁ってみようかなという気持ちになった。 -
プロローグの事件時の被疑者視点以外は殆どが法廷でのお話。トリック(有名ですが私は結び付かなかった)を楽しむより法廷ミステリとしてとても楽しめました。プロローグで引っ掛かる点があったこともありグイッと掴まれて、あとはH・M卿の弁護に圧倒されながらぐいぐいと読み進めていきました。見えているものが見えている通りでなかったり、少し遠回りすることで優しさを感じたり、人間関係の浮き彫りになっていくところも素晴らしかったです。また巻末の瀬戸川猛資、鏡明、北村薫、斎藤嘉久4氏のミステリ談義が本当に楽しそうで素敵でした。
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【オールタイムベスト級の傑作】というオビほどかどうかはともかく、ユダの窓がアレだったかはわからなかった!犯人も登場人物は少ないものの誰もがそうなようでそうでないようで。
カーのストーリートテラーぶりが冴え、たまに鼻につくファースぶりも抑えられた愉しめる一冊。
巻末座談会も興味深いが、ワク内の鏡氏コメントにある「カーはもうほとんど読まれなくなっている」ってホント?ホントなら残念。カーはばかばかしいのが沢山あるけど、面白いよ! -
事実が2転3転する法廷劇。魅力的なキャラクター。そして『密室』への挑戦。 読者を驚かしてやろうというような、作者の悪戯心が見えるような楽しい作品。
加えるなら、巻末の座談会が豪華すぎて素晴らしかった。 -
【ミステリーの古典名作を今さら読む】
いや、これ、好みです。
カーの怪奇趣味な味付けは全くない(「密室」という謎はありますが)、法廷でのやり取りを主とした異色作な訳ですが、なかなか面白く読みました。
カーは以前は翻訳の悪いものが多かったようで、私も若かりし頃に数冊読んで「どうも読みにくい」と感じ、ほとんど面白さが分からなかったのですが、その後「新訳」が多く出て読みやすくなっていますので、「今さらながら」読んでみようと思う次第です。 -
冒頭いきなり事件が起こる。男が恋人との結婚の了解を得るため、恋人の父親の元を初めて訪れる。結婚はなんなく許されるが、すすめられたウィスキーソーダを飲むやいなや人事不省となる。意識が戻ると、恋人の父親は壁に飾っていた矢で刺し殺されている。自分のポケットには入れた覚えのない拳銃が入っている。デキャンターのウィスキーは少しも減っておらず、グラスも使った形跡がない。窓もドアも内側から鍵がかけられている。男は察する、明らかに自分は誰かの罠にハメられたに違いない……。
これ以降は最後まで、この殺人事件をめぐる法廷劇が続く。H・M卿は果たして絶体絶命の男の潔白を証明することができるのか? 密室殺人のトリックは? そして真犯人は誰?
法廷メインの構成は無駄がなくスリリング。真相は二重仕掛けで感心した。総じて、大変面白かった。 -
言わずと知れた有名作。でも読み始めてすぐに事件が起こって、あとは法廷シーンばかり。ってので派手な演出のミステリが好きな私としては、ちょっと退屈かなあ、なんて思ったのですが。いやいやこれがものすごく読まされました。さすが。
単に密室の謎を解くだけにあらず(正直、この密室トリック「だけ」ではそれほど驚愕もしないんだよね)。すべての事象の検証から導き出されると真実の数々。まさかそんな齟齬があっただなんて! 次々出てくる新たな証言と証拠に頭はぐるぐる、それでも不思議と謎は少しずつ解きほぐされてきて、なるほどこれこそ本格ミステリの楽しみだよなあ。 -
結婚予定の女性の父親に呼ばれて訪問したところ、薬物で眠らされ、目が覚めるとその父親が密室状態で殺されていたために、殺人の疑いをかけられたアンズウェル。ヘンリ・メリヴェール卿が被告側の弁護人となって、疑いを晴らし、無罪を勝ち取っていく話。
密室殺人の大家カーの作品の中でも有名な密室トリックが使われている作品として評価が高いが、オカルト趣味は見られないし、ほぼ全編にわたって法廷を舞台に弁論が繰り広げられるという、作者としては異色の作品。
ヘンリ・メリヴェール卿が「ユダの窓」と呼んだ、意表を突く密室トリックは確かに秀逸。ただし、このトリックは個人的嗜好からは外れているので、それほどの面白味は感じられなかった。それよりも、"行き違い"を巧く利用して出来上がった、事件発生時の不可解な状況が面白いと感じた。また、その"行き違い"に気づいたり、スーツケースの置かれていた場所に違和感を感じたり、スタンプ台が見つからなかった理由を推定するなどによって、組み立てられたヘンリ・メリヴェール卿の推理には感心した。しかしながら、被害者の父親がやろうとしたことは不自然であり、無理を感じる。
なお、本作品の密室トリックは、講談社BLUE BACKS「推理小説を科学する」で図入りで詳しく説明されている。