- Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488146221
作品紹介・あらすじ
シカゴの路上で父を殺された18歳のエドは、おじのアンブローズと共に父親殺しの犯人を追うと決めた。移動遊園地で働き、人生の裏表を知り尽くした変わり者のおじは刑事とも対等に渡り合い、雲をつかむような事件の手がかりを少しずつ集めていく。エドは父親の知られざる過去に触れ、痛切な思いを抱くが――。少年から大人へと成長していく過程を描いた巨匠の名作を清々しい新訳で贈る。アメリカ探偵作家クラブ最優秀新人賞受賞作。
感想・レビュー・書評
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50年ぶりの新訳、復刊
何故、今新たに訳されて復刊したのか考えてみてもわからず。
気になって読み始める。
父親と同じ印刷所で働く18歳の青年が主人公
ある日、父親が路上で殺されてしまう。警察は当てにはならない。
カーニバル(移動式遊園地)で働く叔父に相談し、二人で事件を追う。
叔父がなかなか曲者で、捜査の方法や警察との付き合い方も心得ている。
事件の真相(何故父が死ぬことになったのか?)も物語の軸だが、事件を通して亡き父の意外な過去を知ることや、叔父との交流の中で、青年から大人へ変わる過程、責任を持って決意していく姿になるまでを描いている。
どちらかというと、自分は叔父よりの位置にいなくてはならない年齢だが
主人公に語る言葉が輝いて見えるくらいは未熟者です。
窓の外を眺めて、「ひどい眺めだ」と言った主人公に対して「それを見せたかったんだ、人が窓から外を見るとき、何が見えるかわかるかい?自分自身だよ」と、自分の心の状態が見せる景色を変えてしまう。自分の心を見せてしまうという事を伝える場面が印象に残った。また、コレに似た場面が終盤にあるのも素敵でした。
で、何故新訳なのか?についてわからないまま終わりそうだったのだが、
解説の方の名前を見て一安心
杉江松恋さんでした。
以前がどのような訳だったのか、作者がどの様な人なのかを抑えつつ、この作者の他作の魅力についても聞けて納得
時代背景が掴みづらいとか、古臭い感じはなかったので、やはり主人公のエドと同年代の方に読んでもらいたい名作詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
フレドリック・ブラウンの古典的な名作『シカゴ・ブルース』。アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀新人賞作品にして、〈エド・ハンター〉シリーズの第1作目でもある。
18歳の印刷工見習いエドは、ある朝目覚めると、父が帰宅していないことに気がつく。酔っ払った父は、飲み屋をはしごしている途中、何者かに路地裏で殺されていたのである。残された義理の母や妹とはうまくやっていけそうにない。エドは、移動遊園地で働く伯父のアンブローズを頼りに、父親殺しの犯人捜しを始める。
懐かしい。原書の刊行は1947年、創元推理文庫に入ったのは1971年である。私が以前読んだのはこの青田勝訳で、それこそエドの年齢に近かった。その当時ですら翻訳から四半世紀ほど経過していて、やや古い感じを受けたが、とてもおもしろかった。2020年、およそ50年目にして刊行された新訳版。涙を流して喜んだファンもいただろう。当然、おもしろくないはずがない。
本書はハードボイルドに分類される。ナイーブだが芯の強い少年エドが、アム伯父の力を借りながら、少しずつ大人のステップを踏んでいく。新訳の力か、作品がみずみずしさで満ちている。また、どこか哀愁漂うジャズの音色が作品の背景に流れているのを感じる。
この作品を若い頃に読んでおいてよかった。そしてまたエドに再会できてとても嬉しい。それにしても、旧訳を読んだ若いときも感じたが、中年になった今でも、アム伯父という庇護者の存在は羨ましい。願わくば、東京創元社さんにはシリーズ全体の新訳を刊行してほしい。 -
シカゴの路地裏で父を殺された18歳のエドは、疎遠だった伯父のアンブローズとともに犯人を追うことに決める。伯父が話す父の姿に、エドは自分が知っていたのは父の一部分だけだと気づき……。→
エドとアンブローズとの関係がとても良い。
印刷会社の見習いとして働き始めたエドは真面目な好青年。伯父のアンブローズは移動遊園地で働く変わり者。エドの真面目さの中にある大人になりきれてない部分をゆっくりと少し離れて見守ってあげている感じがたまらなく好き。私も18歳の時にアンブローズ→
伯父に会いたかった(笑)
事件としてはなんとも悲しい。物語の底にあるのは当時のアメリカ都市部の貧困問題なんだろうな(詳しくないけど)人間の弱さとかそういうのが行間から見える。
あと、杉江松恋氏の解説が良い。冒頭一文目が最高。これは是非読んでほしい。 -
すごくよかった。YA味もありつつ、最後はハードボイルド。ニール・ケアリーシリーズとも似ているかな。
伯父さんという立ち位置、いいんだよね。血のつながりはありながら、父親ほどどっぷりではない。少し距離のある関係が築ける。このアンブローズ伯父さんは、いまはカーニバルの芸人だけど、いろんな職を転々としていて、私立探偵をしていたこともあった。すごく世慣れていて、エドにとっては格好のメンター。しかも知恵があるだけじゃなく、温かくてふところが深い。いいよね。
エドは18歳。植字見習い工をしていたけれど、同じ職場で働いていた父がシカゴの路地裏で殺害されて、アンブローズ伯父さんといっしょに犯人を追うことに。シカゴらしく、あやしげなバーの店主やギャングの一味とおぼしき連中も登場し、エドは、とまどいながらも、おじさんの目の前でどんどん成長していく。その姿がまぶしい。
しかもなかなか大胆なんだよね。
かつて旧訳で読んだときも、「あーおもしろかった」と思ったのだけど、今回もおもしろかった。エドの若さ、アンブローズ叔父さんの滋味あふれる人柄などが生き生きと描かれていて、フレドリック・ブラウン、SF以外の作品もいいなあ、幅が広いなあとあらためて思った。 -
オリジナル版は読んだことがないのですが、19歳の主人公「エド」と、その叔父の「アンブローズ」のコンビが、父親殺しの犯人を捜すバディものに加え、少年エドが大人への階段を上り始める、成長物語にもなっています。
その成長を実感する体験は、アメリカ的な豪快さも感じるのだが、エドの家庭環境と、アンブローズの熟練した大人としての描写に納得させられ、プロローグとエピローグの関係もお洒落にまとまっていると思いました。
エドの何でも出来そうな心持ちは、その若さ故に、すごく分かる気がする。良いかどうかは別として。ただ、共感出来るのは、それだけ作者が心理描写に長けた人なんだろうなとは思いました。 -
大好きな本の新訳版って、買うかどうか迷うものですが、買っちゃいました。
単独で読むと旧訳との違いはあまり感じられませんでした。※レンズマンはかなり違ってたからねえ。
これはシリーズの第一作でもあるのですが、これが一番だと思います。 -
亡き父が職場のロッカーに残した小さなトランクには、知らなかった父の青春が詰まっていた。
ショートショートの神様、フレドリック・ブラウンの長編小説。
印刷工の父が、ある日路上で襲われて死んだ。
18歳の息子は変わり者のおじさんとともにシカゴの街で犯人を探す。
若き父の姿を追うごとに、子供から大人への扉を開けていく。
自らを制して父と同じ印刷工の道を歩み始めた主人公エドだったが、世界を冒険していた父を知るにつれて、不器用ながら徐々に自らの世界を広げていく……。
青春の旅立ちは、いくつになっても心を揺さぶる物語になる。 -
たまらない余韻が残る。
寂しくて、じんじん痛くて、でもきらきらしていて。
父親を殺された18歳のエドが、おじと共に犯人を追う中で大人になっていく、青春ミステリー。
シカゴは思い入れのある街なので、そこをエドが駆け回るのに胸がギュッとなった。
父を亡くした時の、これで永遠に父をより知ることはできなくなった、という絶望感、刺さったなぁ…。
おじ、継母と妹、刑事、クライマックスに出会う女性、皆一癖も二癖もあってとても良い。
ちょうど今年読んだドン・ウィンズロウの「ストリート・キッズ」と似た感触だが、今作の方が甘い(でもハードボイルドさもある)。
結末も良かった。
続編も読みたい。