- Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488209223
作品紹介・あらすじ
退役した海軍司令官、ホーカン・フォン=エッケは、自宅から散歩にでかけ、そのまま戻らなかった。ヴァランダーは娘のために、ホーカン失踪の謎を調べ始める。海軍時代の経歴に手がかりがあるかもしれないと、当時の知り合いにも話を聞くが、なんの収穫もない。そんな中、今度は妻のルイースまでもが姿を消してしまった。ときおり襲う奇妙な記憶の欠落に悩まされながら、ヴァランダーは捜査を進める……。刑事ヴァランダー最後の事件。
感想・レビュー・書評
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ヘニング・マンケル『苦悩する男 下』創元推理文庫。
北欧ミステリーの最高峰クルト・ヴァランダー・シリーズ第11作の下巻。刑事・ヴァランダー最後の事件……
リアリティあふれる北欧の警察小説。スウェーデンの文化や風土を背景に繰り広げられるミステリー。間違いなく北欧ミステリーの面白さを最初に日本へ伝えてくれた傑作シリーズであろう。
時折襲う奇妙な記憶欠落症状に苦しみながらもヴァランダーは捜査を進める。さらには心臓に痛みを覚えるなど満身創痍のヴァランダーが辿り着いた真実とは。
失踪した娘のパートナーの両親。ホーカンの失踪の後にルイースも失踪。そして、ルイースは何者かに殺害される。やはり、事件の背景にあったのは……
静かに幕を閉じたヴァランダー最後の事件。しかし、シリーズはこれで終わりではない。近日、第12作の『手』が邦訳されるとのこと。我が郷土、岩手県一関市出身の柳沢由美子さんの偉業に感謝。
本体価格1,200円
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クルト・ヴァランダー最後の事件である。最後は悲しくて寂しくて泣いた。でも彼にはお疲れ様と言ってあげた方が良かったか。老いへの恐怖、死への恐怖、年を取れば取るほど私自身にも迫りつつある。若い時に政治に関わらなかった後悔も、体力や気力を失いつつあっても、生きねばならない虚しさも。人種も環境も全く違うのに、いつも共感があり、親しみを覚えた。大好きなシリーズ。
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退役した海軍司令官、ホーカン・フォン=エッケは、自宅から散歩にでかけ、そのまま戻らなかった。ヴァランダーは娘のために、ホーカン失踪の謎を調べ始める。海軍時代の経歴に手がかりがあるかもしれないと、当時の知り合いにも話を聞くが、なんの収穫もない。そんな中、今度は妻のルイースまでもが姿を消してしまった。ときおり襲う奇妙な記憶の欠落に悩まされながら、ヴァランダーは捜査を進める……。
物語はこれで完結。過去の事件や登場人物が様々な形で現れる。読了後、しばらく感慨にふけってしまった。 -
恥ずかしながら、ヴァランダー・シリーズを読むのは初である。終わってしまうシリーズの最後の一作と知れているところから手をつけるというのもどうだろうと思われたが、それもまた一興、と運を天に任せて読み始める。そもそもこのシリーズはドラマ化されたものをWOWOWで見ており、心惹かれる印象があった。いつか読まねばならないシリーズの一つとして常に宿題となっていたのだ。現在ではAMAZON PRIMEでの視聴もできるので、シリーズ全作の読書に取り組んだ後、ドラマで追体験してみるのもよいかと思う。この一作を読み終えた今、その思いはむしろ強まったと言える。
スウェーデンの得意とする北欧ミステリの底力を、マルティン・ベック10作で十分に味わったぼくが、その後、ヘニング・マンケルや『ミレニアム』のスティーグ・ラーソンなどの王道を味わうことなく来てしまったのは何故だろう? いずれにせよ『イタリアン・シューズ』という普通小説でこの作家の筆力に唸らされて以来、マンケルへの食指が改めて動き始めてしまった。それにしても創元推理文庫の翻訳の遅さは毎度のことながら驚嘆させられる。王道の作家でありながら未だにシリーズ完訳が成っていなかったとは。しかしそのおかげでこの作品を手に取っているのだ。深謝すべきかもしれない。
本作は、思いのほかスケールの大きな国際冒険小説を思わせる意味深なプロローグに始まる。しかし、その後の描写は、ヴァランダーという個人の行動、思考、体感、心理などを描くことに費やされる。ヴァランダーという刑事を、まるで普通小説の一個の人間のように読者は追跡することになる。家族のこと、過去とのこと、不穏な未来のこと、彼の体や心に起こっている奇妙なこと。微々たるように思えるが異常な、ことのほか重要と考えねばならないのかもしれない出来事などなど。
休職中のヴァランダーの娘婿の親の失踪という、極めてヴァランダーにとって近い事件が発生。通常の警察小説というより、私立探偵小説に近いものを感じさせる全体なのに、違和感さえ感じさせる冷戦時代のロシア潜水艦にまつわる謎。グローバルで歴史に関わるスケールを持つ大掛かりな事件と、今現在ヴァランダーが追跡する親類縁者の失踪事件は、どのような関わりを持つのか?
本作では、『イタリアン・シューズ』でも見せてくれた自然描写も、もう一つの魅力を見せる。島々や礁に満ちたフィヨルドを疾駆するボート。農場や大地を走り抜ける車。ヴァランダーはめくるめく多種多様な人々に出会う。それぞれの風土の差を、肌で感じる。出会いと対話と別れ。中には過去からやってきた女性との悲しき再会が語られる。心を抉られる時間。厳しくも美しい自然の中で。天と地のはざまで。
『いままでの人生に満足している。(中略)現在私の体は一日二時間だけ機能する。その二時間を私は執筆に当てている』とは、がんで余命いくばくもない自分を知ったヘニング・マンケル自身の言葉だが、本書のヴァランダーも、自らの体や心に起きている極めて不安な事象と闘いながら、真相に迫る日々を刻一刻と生き抜いてゆく。初老というには早すぎる60歳という刑事の年齢を64歳のぼくは複雑な想いで追跡する。
命。自然。心。家族。時間。そうした極めて重たい要素をぎっしりと詰め込んだシリーズ最後の高密度な作品の中、ミステリー的要素は少し重心から外れて見える。しかし、最もミステリアスに見えてくるものは、人間たちそれぞれの関わり方であり、彼らの距離感、信頼、不信、沈黙、その他諸々の感情、ふるまい、表情等々である。
終わったところから、始まってしまったヴァランダーへの興味。ぼくは新たにヴァランダーの過去へとこのシリーズを遡行してみようと決意している。そうさせる何かがこの作品には十分に込められて見えたからだ。 -
ヴァランダーシリーズ。娘のリンダの義理の父が失踪。事件か事故か。ヴァランダーの捜査が始まるけれどなかなか思うようにいかない。ヴァランダーは60歳になり色々考える。仕事、生活、死。そういうところがこのシリーズの好きなところでもある。ヴァランダーの迷いや怒りが溢れてくる瞬間とかとても読み応えがある。捜査を通して、娘や自分との向き合い方を考える。行方不明者の捜索とヴァランダーの体の不調や時折起こる記憶喪失への恐怖。事件そのものよりそちらが気になる。苛立ちや悲しみ、孤独が襲ってくる中にあって孫ができたことで変わったもの。シリーズの中で登場した過去の女性も出てきたりと懐かしさもあった。とうとう終わってしまったこのシリーズ。訳者あとがきによればもう一作あるみたいだけれど実質的には今作がラスト。一番好きなシリーズ物で本当に楽しませてもらった。翻訳ものは途中で発売されなくなるものもあるなかで20年近く経っても最後まで読めたのはありがたい。また一作目から読み返してみようと思う。
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ヴアランダーの最終作。自分の年齢同じなだけ想いが投影する。全作ずいぶん前から時間をかけ読了、また初めから読み直している。Google earthを開きイースターの道、海、街をヴアランダーの通った場所を空から見ながら読む。前よりグッとリアルによめる。素晴らしい翻訳に今回も魅了された。
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ひとつはっきりしてるのは、何事も外側から見える姿とは違うということ。
シリーズの終わり方が、らしいな。やっぱ最高だった。 -
11月3日読了。図書館。
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終わってしまった。なんか泣いてしまいそう。
ヴァランダーとマンケルがめちゃリンクする。