水時計 (創元推理文庫) (創元推理文庫 M ケ 2-1)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488278052

感想・レビュー・書評

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  • 「刑事ドラマ」がブームになる前、ミステリーの主役は新聞記者だった。

    弩ストライクの「新聞記者ミステリー」が、このジム・ケリー「新聞記者ドライデンシリーズ」。

    氷結の川下と塔の上で見つかった、死亡時期も死因も大きくかけ離れた二つの死体が、過去の事件と次第に結びついていく。
    大都市とはかけ離れたイギリス東部の町イーリーで、主人公は新聞記者としての「日常のお仕事」とともにこの事件の調査を独自に進める。
    その理由は……そして、迫りくる洪水の危機。

    自身の「水」に対するトラウマと、病院で目覚めない妻への贖罪。
    逃れるようにして事件に没入する主人公の姿。
    厳しい自然と謎をまとう事件が描かれる中、主人公の契約タクシードライバー〝ハンフ″が、相棒として味を生かし、暗い底から引き上げてくれる。

    早くから読みたかった本で、期待どおりの読後感を得た。

  • 日が暮れようとしている氷点下の11月。沼沢地帯支流の黒い川面から引き上げられたのは、ねじ曲げられトランクに押し込まれた無残な遺体だった。さらに翌日、白骨化した死体が大聖堂の屋根で発見される。イングランド東部の素朴な片田舎に似つかわぬ不吉な出来事……週間雑誌『クロウ』の記者ドライデンは日々地方紙ならではの小さいエピソードを取材していくうちに、ふたつの事件の繋がりに気付く。秘めた思惑から更なる調査をはじめて━━━

    ドライデンシリーズ第1作目。入念に練られたプロットがどっしりと基盤をなし、劇しい描写はないものの、読後登場人物達の過去を呑み込む鬱々とした沼沢地帯が胸に重く残る。物語は終わり、キャラクターは存在を持ち歩き始めた。次回作に期待。

  • 英国ミステリ。事件記者が主人公。氷結した川から引き上げられた死体、そして大聖堂の屋根から現れた白骨死体。
    政治家、実業家、刑事などキナくさい連中との駆け引きをしながら事件の解決に向かう。事故に遭ってしまって寝たきりになってしまった妻に対しての思い。
    全体的に暗い話だが、過去の強盗事件の犯人が、今の事件の犯人という構図のフーダニットなのだが、正直あんまりトリックもロジックもない。ハードボイルドとして読むには、ちょっと登場人物の個性と魅力が足りないと感じた。やや退屈でした。

  • イギリスの作家「ジム・ケリー」の長篇ミステリ作品『水時計(原題:The Water Clock)』を読みました。
    「ジム・ケリー」の作品は、『凍った夏』以来なので、約2年ぶりですね。

    -----story-------------
    11月、イギリス東部の町イーリーで氷結した川から車が引き揚げられた。
    トランクの中には銃で撃たれた上、首を折られた死体が入っていた。
    犯人はなぜこれほど念入りな殺し方をしたのか? 
    さらに翌日、大聖堂の屋根の上で白骨死体が見つかり、敏腕記者の「ドライデン」は調査をはじめるが──。
    堅牢きわまりない論理、緻密に張られた伏線。
    CWA図書館賞受賞作家が硬質の筆致で描きあげた、現代英国本格ミステリの傑作。
    解説=「杉江松恋」

    *第4位『2010本格ミステリ・ベスト10』/海外ランキング
    *第9位『IN★POCKET』2009年文庫翻訳ミステリーベスト10/翻訳家&評論家部門
    -----------------------

    2002年(平成14年)に発表された作品で、沼沢地帯の都市・イーリーを舞台にして、週間新聞『クロウ』の記者「フィリップ・ドライデン」が探偵役となり活躍するシリーズの第1作です、、、

    本シリーズは第4作の『凍った夏』以来2作品目です。


    イギリス東部の沼沢地帯の都市・イーリー、痺れるような寒さの11月、凍りついた川から車が引き揚げられる… トランクには銃で撃たれた上、死後に首を折られた氷漬けの死体が入ってた、、、

    犯人はなぜこれほど念入りな殺し方をしたのか? さらに翌日、今度は町のシンボルである大聖堂で大事件が発生… 修復工事中の大聖堂の屋根の雨樋から白骨死体が見つかったのだ。

    人口1万人強の小さな都市で、ふたつの事件が前後して起きたのは偶然なのか? そう疑問を抱いた敏腕記者の「ドライデン」は、サーカス団の火事、市の記念式典等の日常の出来事も精力的な取材を進めながら、本件についても取材独自に調査を始める… そして、1966年に発生した未解決の強盗・殺害未遂事件との関連性に気付き、当時の容疑者や関係者に取材を進めていくが、真相に近づいた「ドライデン」に何者かの妨害の手が迫ってくる……。


    一見、事件とは無関係と思える取材に事件解決のヒントが隠されていたり… と、巧く張り巡らされた伏線が、一気に明らかになる終盤は圧巻ですね、、、

    先に読んでしまったシリーズ第4作の『凍った夏』ほどではなかったけど、それでも面白かったです… デビュー長篇にしてはクオリティが高いと感じましたね。


    以下、主な登場人物です。

    「フィリップ・ドライデン」
     週刊新聞「クロウ」の上級記者

    「ローラ・ドライデン」
     ドライデンの妻

    「ハンフリー・H・ホルト」
     ドライデンのお抱えタクシー運転手

    「キャシー・ワイルド」
     ドライデンの同僚

    「ゲーリー・バイモア」
     ドライデンの同僚

    「セプタマス・ヘンリー・キュー」
     週刊新聞「クロウ」の編集長

    「ビル・ブラッケン」
     週刊新聞「クロウ」の編集主任

    「ロイ・バーネット」
     市長

    「リズ・バーネット」
     市長婦人

    「ジョー・ペチェレンゴ」
     デクランの親友

    「アンディ・スタッブズ」
     イーリー警察署部長刑事

    「ブライアン・スタッブズ」
     元イーリー警察署副所長。アンディの父親

    「ジョン・タヴェンター」
     聖ヨハネ教会の牧師

    「ホレーシオ・ブルーム」
     タワー病院の神経科医長

    「ジョシュ・ネネ」
     建築業者

    「ジョー・スミス」
     サーカスの冬季管理人

    「ベン・トーマス」
     労働党議員

    「グラッドストーン・ロバーツ」
     カシドラル・モーターズの経営者

    「レグ・カム」
     カム造船修理所の経営者

    「ポール・カム」
     レグの息子

    「シア・ユウ」
     中華料理店店主

  • 積読崩し㊥ 10年積んでたw

    ハンフリーが良いキャラですね。
    なんだかね、彼が出てくるとほっとしますね。
    癒しキャラですね。
    ドライデンがクソ真面目なというかちょい重い系だけにね。まぁ、彼は色々背負ってるから余計なんでしょうけれど。
    いや、ハンフリーだって、色々あるのよ。

    氷の下から見つかった車の中から、殺害された遺体が見つかった。
    その数日後、1966年の強盗事件の犯人が大聖堂で見つかった。事故なのか自殺なのか?
    捜査の結果、車の中から見つかった遺体も、1966年の事件の犯人の一人レグ・カムだという事が判明する。
    関連性はあるのか?
    大聖堂でみつかった遺体はトマス・シェパード。
    彼のことを調べていたら、なんだか核心に近づいちゃったみたいで、狙われるドライデン。
    彼は警察じゃなくて記者なのに、警察より捜査が進んでる・・・

    その内容と引き換えに、過去の自分の事故にまつわる開示されていない情報をもらえるように働きかける。
    なかなかに、渋られる。

    1966年の強盗事件の捜査を率いていたのは、ブライアン・スタッブス。
    今、捜査を率いているのはその息子、アンディ。

    大聖堂で見つかった遺体トマス・シェパードを犯人だと、指紋が見つかったとしたのは、ブライアンだが、それはねつ造だと言う事がわかってくる。
    そして、彼はそのころから、すでにアルコール中毒だったということも。

    トマスはその日、市長の妻のリズと出かけてたのに。
    強盗しなくても、競馬で一山当ててたのに。
    あの時、ブライアン副署長が、指紋を捏造しなければ、
    ブライアンは今も生きてたかもしれないって事だよね・・・
    犯人にしたてあげられて、それを分かった上で、本当の犯人たちと取引していなければ・・・。
    本当の犯人の一人は、トマスの兄。
    兄がいたから、トマスも取引に応じたんだろか。
    兄は、ちゃんとトマスが逃げられることを信じていたし、生きてるとずーっと思ってた。アメリカで新しい人生を手に入れて、その為には過去を捨てなければいけないから、だから自分とも連絡を取っていないんだ、と。

    結局は、今回、レグ・カムを殺した人物が、強盗で奪ったお金を独り占めしていて、そして、カムから事件のことがバレる可能性が出てきたことで、彼を始末した。
    ピーターと、当時呼ばれていた男は誰なのか?

    犯人は、そうでしたか。
    全くわかってなかったwww
    布石は置かれてるっていうけど、私、そっちより、ドライデンの事故の方に気が行ってたかしら?
    そっちは、なんとなく予想してた通りでした。
    ほら、タイトルが「水時計」だしさ、絶対、絡んでると思うじゃない?

    犯人と対決は、危険すぎるよ、本当に。
    主人公というのは、無謀な人物のことであるなぁ。
    トマスのお兄さんビリーに感謝だぞ。
    自分も大けがしてんのに、助けてくれたんだもん。
    まぁ、感謝は示されていたけれども。

    アンディ部長刑事は、今回なんとか色々頑張ったけど、
    それ以前の事件のことで、結局降格なんですね。
    お父さんの悪行もあり、ちょっと不憫な気がせんでもない。
    ローラは、シリーズ通して、回復していったりするんかなぁ・・・それは、読んでのお楽しみか。

  • <新聞記者ドライデン>シリーズ第一作目。著者自身もジャーナリスト、尚且つ本書が作家デビュー作とあってか、登場人物のバックグラウンドや作中に登場する地域の風土に加え、記者としてのデイリーワークの描写も緻密で、諸々過剰過ぎる作風ではあるが、作品そのものは手堅い作りのミステリー。作中に散りばめたサブエピソードもきっちり本筋に取り込む構成も技巧的。叙述が行き届き過ぎていてテンポ感は悪いが、じっくり腰を据えて読みたいシリーズ。職業柄とはいえ、多面性があり過ぎるドライデンの人物造詣が今ひとつ好きになれないのだけれど。

  • 出版社のホームページを見て。

    正直、今そのHPを読み返してみても、
    何を嗅ぎつけたのかわからなかった。
    が、読み進めてみるとなんとも言えない、心地よさを感じた。
    既視感でもない、懐かしさでもない、それに近い何か。

    次々と立て続けに起こる事件を追うという意味ではフロスト警部を、
    変わった相棒を持つという意味では特捜部Qのカール警部補を、
    同時に思い起こさせる新聞記者のドライデン。

    川から引き揚げられた車のトランクから出た死体、
    大聖堂の屋根で発見された死体、
    30年以上前給油所で起こった強盗事件、
    ゲイであることを告白したため打ち捨てられた牧師、
    沼沢地を襲う洪水、
    そして、ドライデン自身の自動車事故。
    大小さまざまな謎が渦巻く流れのように集結してくる展開は、
    美しいといっても許されるだろう。

    それにしても、
    フロスト警部やカール警部補と共通するこの「憎めない」感じは何だろう。
    真実を求めるプロフェッショナルだからなのか。
    仕事一辺倒の生活破綻者だからなのか。
    女性に対するナイーヴさゆえなのか。

    最も印象的だったのは、市長夫人の新婚時代のひと夏の恋だった。

  • ケリー2003年発表の処女作。地味ながらも繊細な文章で、舞台となる地方都市イーリーの冷たくも美しい情景を描き出している。凍結した川から引き揚げられた車に身元不明の他殺体が発見される冒頭から、嵐の中で殺人者と対峙する終幕まで、物語の底流には淀んだ水がうねり、渦巻く。主人公ドライデン自身が水に呪われた存在で、不慮の事故によって運転していた車が水没、同乗の妻のみが長期にわたる昏睡状態へと陥っている。新聞記者でありながら、取材には旧友のタクシーを利用。そのトラウマが追い掛ける殺人事件と絡み合うことで物語に厚みが増し、単なる謎解きから脱している。だが、事件の鍵となる多くの事実は知己の刑事からもたらされているため、記者としての力量が感じ取れず不満が残る。ただ、過去と現在を繋ぎ真相を探っていくプロットは緊張感に満ちており、陰影のある世界観にも好感が持てた。

  • 情景描写が細かくて、初めはなかなか集中して読めなかった。じめじめした沼地の雰囲気は伝わってきた。
    細かい伏線が後々まで活きてくるのが面白かった。
    続編があるそうなので、妻の容態も気になるし、翻訳されていたら、また読もう。

  • 新聞記者を主人公にした本格ミステリ。
    ミステリ的な部分もさることながら、自然の描写が素晴らしいところが英国ミステリらしい。ややストーリーの進み方がのんびりしているきらいがあるものの、構成に破綻などは見られず安定しているのが持ち味かな?
    本文中でも言及されているが、新潮クレスト・ブックスから出ている『ウォーターランド』の描写に似ている部分がある。こちらも矢張り沼沢地を舞台にしている。

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