逆さの骨 (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (453ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488278076

作品紹介・あらすじ

捕虜収容所のなかに向かって這い進んでいたうえ、射殺されていた脱走兵の死体。新聞記者ドライデンは謎めいた殺害状況の真相を調べ始めるが。現代英国本格ミステリの精華。

感想・レビュー・書評

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  • 主人公ドライデンの受難
    『水時計』では「水害」、『火焔の鎖』では「火災」、『逆さの骨』は「土」?

    前二作に比べ前半やや単調ではあるが、このシリーズから匂い立つ感覚には、相変わらず魅了される。

    警察物とは違った「新聞記者」のお仕事を絡めて登場人物から得ることができる「謎解き」とは別の読書感が、心地よい。

    あと一冊が愛おしい。

  • かつて捕虜収容所だった発掘現場で見つかった奇妙な遺体。脱出用と思われるトンネル内を収容所に向かい這い進んでいたのだ。
    ドライデンは新聞記者の仕事とは別に独自の調査を始める。

    時々整理しないと混乱してしまうほど複雑に絡んだ人間関係が読みどころ。
    ところどころ伏線が貼ってあるので事件の真相は途中でだいたい予想がつく。
    それでもそこに至る道筋と、事件とは別にドライデンを取り巻く人間関係の変化は濃密だ。
    時々はっとするような表現があり、被害者の最後の一言などぞくりときた。こういうところ、すごくイイ。
    移ろう関係のなかで、ドライデンと彼の『閉じ込められている』妻がどうなるのかも気になる。

  • 新聞記者ドライデンが主人公のシリーズ三作目。今回は彼の住む田舎町で起きる、遺跡発掘現場で人骨が発見された事から起きる事件を追う。メインとなる謎は、第二次大戦時に起きた事件に端を発しているようで、徐々に分かる真相が興味深い。ただ色んな事が錯綜していて、上手く整理できてない気がする。もっと的を絞って書いたほうが良かったのでは。少し中途半端。

  • 現在の遺跡発掘現場はかつての捕虜収容所施設ということで、埋蔵文化財の他に脱出用に掘られたと思われるトンネルやら白骨体やらが見つかるという、なんとも過去へのロマンに溢れています。
    が、発見された白骨体はなぜか収容所の中へと進んでおり、しかも銃殺されているという不気味で魅力的な謎が提示されており、第二次世界大戦の影が色濃く残る事件と相成って作品世界は哀愁に満ちており大変暗い。

    新聞記者の主人公がかなり忙しいです。白骨体について調べているうちに様々な問題が絡んでくるのではなく、最初から一気にあらゆる問題をどかっと抱え込んでいます。

    章の合間にある過去の物語を読んでいる読者としては想像がつくことでも、主人公はどうしてその推測をしたんだ?と置いてかれることが多かったです。勘ででもいいから、聞きまわっているだけでなく主人公の思考の描写がもっと欲しかったですし、物語の流れがいまいち掴めずテンポよく読めませんでした。

    かつての戦争が現代に新たな事件を呼び起こし、家族や人々の愛憎にまで影響を与えている濃密な人間ドラマは楽しい。

    現代の英国の田舎町が舞台ですが、なんとも古風な雰囲気が漂っており、ゴミ処理場から絶えず立ち上る有害な霧が良い演出効果を果たしています。

    終始息苦しい物語ですが、霧が晴れていくとともに明かされる謎、すべてが白日の下に晒され青空が覗くラストは気持ちがよく、墓石に刻まれた言葉がじん、と胸に響きます。

  • 安定して面白いシリーズ。
    セリフも所々いいのがある。

  • かつて捕虜収容所だった場所で発見された奇妙な骸骨。そして数日後に発見された新たな遺体。果たしてこの場所で何が起きているのか。
    ところどころ掴めないなぁ、と思っていたらシリーズ三作目でした。
    事件自体は続き物ではなく一作ごとで完結しているものなのですが、謎は魅力的でも展開が地味で面白みに欠ける、というのが正直な印象。

  • イギリスの作家「ジム・ケリー」の長篇ミステリ作品『逆さの骨(原題:The Moon Tunnel)』を読みました。
    逆さの骨(原題:The Moon Tunnel)
    『水時計』に続き、「ジム・ケリー」の作品です。

    -----story-------------
    かつて捕虜収容所だった発掘現場で奇妙な骸骨が発見された。
    その男は脱出用と思われるトンネルを収容所に向かって這い進んでいたうえ、額を拳銃で打ち抜かれていたのだ。
    脱走兵にしては謎めいた殺害状況に、新聞記者「ドライデン」は調査を開始する。
    だが数日後、同じ現場で新たな死体を発見し……。
    過去と現在を繋ぐ謎の連鎖と緻密に張られた伏線が魅せる、英国本格ミステリの精華。
    解説=「酒井貞道」

    *第5位『2015本格ミステリ・ベスト10』海外ランキング
    -----------------------

    2005年(平成17年)に発表された作品で、沼沢地帯の都市・イーリーを舞台にして、週間新聞『クロウ』の記者「フィリップ・ドライデン」が探偵役となり活躍するシリーズの第3作です。


    イタリア人の考古学者「アゼーリョ・ヴァルジミーリ」が指揮する遺跡発掘現場で、地下道が発見され、その中から男の骸骨が発見された… そこは、第二次世界大戦時に捕虜収容所があった場所だったことから、遺体は収容所からの脱走を試みた敵国兵士のものと考えられた、、、

    地下道自体も、脱走目的で掘られただろうと推測されたが遺体には謎があった… 彼は地下道を収容所の中に向かっている最中に、額を拳銃で撃ち抜かれて殺されていたのだ。

    しかも、遺体が握りしめていた防水布の袋からは、真珠のネックレスと銀の燭台が出てくる… 彼はいったい誰なのか!? 当時何があったのか!? 興味を惹かれた週間新聞『クロウ』の記者「フィリップ・ドライデン」は、警察とは別個に、ジャーナリストとして捜査を開始する、、、

    捕虜収容所に囚われていたのは、ドイツ人捕虜やイタリア人捕虜であったが、このうちイタリア人たちは、戦後、少なくない者が周辺地域に住み着き、コミュニティを形成した… 現在、そこでは、捕虜の子どもたちの世代が中高年を迎えており、「ドライデン」は、彼らから当時の情報を集めようとする。

    一方、調査の過程で、1944年に沼沢地の外れにあるオスミントン屋敷に泥棒が入り、使用人が殺されて美術品が盗まれていたことが判明する… 当時、まず犯人として疑われたのはイタリア人捕虜たちであった、、、

    「ドライデン」は、真珠のネックレスや銀の燭台は、その屋敷からの盗品ではないかと考えて、当時のイタリア人捕虜たちが事件の鍵を握っているに違いないと確信を深めていく… ごみ処理場からと思われる有毒な霧の発生、ごみ処理場で毒殺された三頭の犬の発見、発掘現場での夜盗団、老婦人の公営アパート強制退去、そして発掘現場での新たな殺人事件 等々、「ドライデン」は、イーリーで発生する様々な事件の取材に携わりながら謎めいた事件の真相に近づいていく……。


    メインの事件と繋がる事件や全く無関係の事件… 記者として、様々な事件に関わりつつ、入院中の妻「ローラ」や義父との対応、お抱えタクシー運転手「ホルト」の体調不良の介抱など、「ドライデン」の周囲にはいろんなことが発生します、、、

    プライベートな部分も含め、「ドライデン」の生活がしっかり描かれており、シリーズ作品としての愉しさもしっかり織り込んでありましたね… 今回は、逮捕されたごみ処理場の所有者「マー・トランチ」の愛犬「ブーディッカ」の勇気ある行動も印象的でした。


    以下、主な登場人物です。

    「フィリップ・ドライデン」
     週刊新聞「クロウ」の上級記者

    「ローラ・ドライデン」
     ドライデンの妻

    「ハンフリー・H・ホルト」
     ドライデンのお抱えタクシー運転手

    「ロジャー・スタットン」
     ドライデンの叔父

    「セプタマス・ヘンリー・キュー」
     週刊新聞「クロウ」の編集長

    「ビル・ブラッケン」
     週刊新聞「クロウ」の編集主任

    「ゲーリー・バイモア」
     ドライデンの同僚

    「アゼーリョ・ヴァルジミーリ」
     考古学教授

    「ルイーズ・ボーモント」
     ヴァルジミーリの妻。医者

    「ジョシュ」
     発掘作業員

    「ジェーン」
     発掘作業員。女子学生

    「セラフィーノ・アマティスタ」
     イタリア人捕虜。故人

    「トーマス・オールダー」
     葬儀屋

    「マー・トランチ」
     ごみ処理場の所有者

    「ラッセル・フリン」
     ドライデンの情報提供者

    「ペペ・ローマ」
     <イル・ジャルディーノ>の店主

    「マルコ・ローマ」
     ペペの父親。故人

    「ジェローム・ローマ」
     ペペの兄

    「ローマン・カサルテッリ」
     イタリア人捕虜の会代表

    「ヴィー・ヒルゲイ」
     ヒルゲイ一族の生き残り

    「S・V・マン」
     東ケンブリッジ博物館学芸員助手

    「ボブ・キャヴェンディッシュ-スミス」
     部長刑事

  • 新聞記者ドライデンシリーズの第三弾。

    発掘現場から発見された遺骨。
    捕虜収容所から脱出用トンネル内で撃ち殺されていたが、
    収容所へ向かっていたように見受けられた。
    死体の身元を確認しようとするドライデン。
    しかし、発掘作業を行っていた教授が殺される。

    寝たきりの妻が、インターネットを駆使して
    ドライデンを助けるようになってきたなと思ったら、
    もう一人の相棒タクシーの運転手ホルトが死んでしまう?
    と心配させられたけど無事でよかった。

    行方不明の高価な絵画は発見されるだろうなとは思っていたが、
    ドライデンの叔父の納屋で発見されたことにして、
    わざとオークションにかけさせたのは面白かった。

  • ローラが急激に回復していて、びっくり。
    ドライデンは、犬嫌いで憶病者という描写があるけど、周りの人間からは、そう見えないと思う。
    兄の横恋慕のせいで、弟(兄によって殺害)と兄本人(弟の元恋人で、現在の兄の妻)が殺される。嫉妬の恐ろしさ。
    今回も、犯行のきっかけや犯行動機が心に残り、すごく良かった。

  • 原題の「Moon Tunnel」。冒頭は、そのトンネルのシーンから。
    前二作と変わらず、叙情と具体のバランスがとても良い。
    淡々と描いているのに、しかも殺人事件が起こっているのに、冷た過ぎず、感情的過ぎず。
    どこか優しい視点をずっと感じながら読めるのだ。
    翻訳も上手なんだろうなあ、と思うよね。

    小さなエピソードをきちんと重ねて出来上がったレイヤー。
    最近、そういうミステリーが好きな自分を発見しつつある。

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