六の宮の姫君 (創元推理文庫) (創元推理文庫 M き 3-4)

著者 :
  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (283ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488413040

感想・レビュー・書評

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  • これをミステリーと呼ぶのかどうか?大学の卒論でヒロインが友人・正(しょう)ちゃんこと高尾正子、江美ちゃんたちと芥川のこの作品を研究し、菊池寛の同名作品に到達する。二人の作家の交友と微妙な関係を探し当てていく書物探索の旅という小説。そして実は北村氏自身の卒論でもあったという解説!「男もすなる」土佐日記が登場するが、北村氏自身が紀貫之を真似たかのよう!

  • 佐藤夕子氏の解説によれば
    この「六の宮の姫君」は作者が
    早稲田大学第一文学部時代に
    ものした幻の卒業論文のタイトル
    という側面も事実としてあるそうだ。

    この作品は普通のミステリー愛好者
    にはお勧めしにくいが、大学で国文を
    専攻しようと考えている人や、さして
    考えもせずに国文学科に入ってしまい、
    卒業論文なるものを書くということが
    どういうことかも皆目見当すらつかない
    という気の毒な人になら、お薦めできる。

    ただし、シリーズ一作目から虚心に、
    ただ作品の謎解きの論理展開を楽しみ、
    その手法に少し慣れ、かつ面白いと
    思えた人にだけ。

    国文学の研究とはこのようなものだ。

    人に与えられた問いかけではなく
    文献を読み漁り、資料や史料にあたり、
    観察に次ぐ観察を積み重ねる中で、ふと
    浮き上がってくる謎。

    それまで無闇に行ってきた「読む」と
    いう作業に、少なくとも順路と出口が
    あるかもしれない闇を手探りで進みつ
    戻りつするだけの知的興奮とほのかな
    期待が伴うようになる。

    それを楽しいと思わない限り
    国文学研究などという選択は
    過ちだと思った方がいい。

    どれほどの確信と自負を持って
    このレビューを書いているか?

    この作品が私の国文学科在学当時に
    出版されていたら…私はもっと
    謎解きを精緻に行いつつ、それを
    心ゆくまで楽しめたろうに…。

    そんな仮定法過去で悔恨を口にする
    ほどに。

    国文学研究の道筋がそのまま
    ミステリーの王道をゆく。
    稀有な名著だと私は思う。

    小説家にしか書き得ない研究指南書。
    私はこの作品に没入して
    半日を過ごした。

  • 難しいけど読みやすい。

  • やっぱり今回は難しい。

    分かったのは菊池寛の作品に触発されて芥川龍之介が新たに書き下ろしたこと。キャッチボール。

  • 「私と円紫さん」シリーズ、第4弾。
    3冊目に続き、こちらも長編。
    “私と卒論”
    だんだんと成長していく「私」
    恋愛なんて汚らわしい、そんな時間があったら本を読む…みたいな感じだった初期の「私」に比べると、ずいぶん色気づいたものだと思う。
    いや、大学4年にして未だ“恋に恋する”ような段階であるのだが…
    そこが「私」らしい。

    さて、この本はどっぷり文芸である。
    まるで、芥川龍之介と菊地寛が主人公の話を「私」が語っているような感じだ。
    解説にもあったように、『研究』というものも、謎解きなのだ。
    それが推理小説として、創元社から出ているというのも凄いのだけれど…
    非常に難しかったです、と正直に言いましょう。

  • 「文学部か、いいなあ」
    「なぜです」
    「思い残すことがないでしょう」
    大学生の主人公が友人からこう言われる。本編のストーリーとは関係ないけど「好きだから文学部なんでしょ」。羨ましいセリフだ。後先考えて学部選択する昨今の風潮は嫌いだ。大学は知的好奇心に奉仕する場所なんだと信じてる。
    しかしタイトルからして芥川がテーマになっていることは自明なのだが、それが分からなかったボクには高尚すぎるな。

  • 芥川龍之介作の六の宮の姫君と菊池寛の謎解き
    教科書で知ってるが、極一部しか読んだことがない。
    が、読んでみようと思う。

    円紫さんが今回は手助けだけで、私が謎解きをするのも楽しめる。

  • そしてシリーズ最高作。
    六の宮の姫君と男、
    芥川龍之介と菊池寛、
    わたしと円紫さん
    王朝、近代、現代の時間を越えてドラマの歯車がぴしりと噛み合う。

  • 何と芥川龍之介と菊池寛の謎を解くという高尚な話。分からないことが多いのが悔しい。でもやめられない。芥川を読み直すかな。

  • 最終学年を迎えた「私」は卒論のテーマ「芥川龍之介」を掘り下げていく一方、田崎信全集の編集作業に追われる出版社で初めてのアルバイトを経験する。その縁あって、図らずも文壇の長老から芥川の謎めいた言葉を聞くことに。「あれは玉突きだね。…いや、というよりはキャッチボールだ」―王朝物の短編「六の宮の姫君」に寄せられた言辞を巡って、「私」の探偵が始まった…。

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著者プロフィール

1949年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。大学時代はミステリ・クラブに所属。母校埼玉県立春日部高校で国語を教えるかたわら、89年、「覆面作家」として『空飛ぶ馬』でデビュー。91年『夜の蝉』で日本推理作家協会賞を受賞。著作に『ニッポン硬貨の謎』(本格ミステリ大賞評論・研究部門受賞)『鷺と雪』(直木三十五賞受賞)などがある。読書家として知られ、評論やエッセイ、アンソロジーなど幅広い分野で活躍を続けている。2016年日本ミステリー文学大賞受賞。

「2021年 『盤上の敵 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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