人魚は空に還る (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
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感想 : 82
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  • Amazon.co.jp ・本 (298ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488421113

感想・レビュー・書評

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  • 表紙を見て今流行のBL風味なのかもしれないなあ、と恐れながら購入したがとんでもない。
    とても心地よい物語がつまっていた。

    気取るわけでもなく、しったかぶりの知識をひけらかすわけでもなく
    淡々と綴られる小さな物語たち。
    いろんなものが繋がって、「ああ、そういうことね」と
    作者の頭に蓄えられた様々な出来事や事実がきれいにまとまっている。


    読み終え、実に「気持ちのよい男たち」だ、と某映画の台詞を呟いてしまう。


    最近、これが小説を名乗って出版されていいのかと疑問に思うものに多く出会っていたため、なんだかほっとしたよ。
    ぜひ続編を読みたいと思う。

  • イケメン天才絵師とお人好しの雑誌記者と愉快な仲間たちが帝都で起こる事件の謎を解く。
    絵師殿は最初引きこもりなのかと思っていたが結構アクティブだった。
    佐野が結構好き。
    ロータスのその後が気になるので続きが読みたい。

    表題作を読んだ期間にロトのCMに出てた米倉さんを見て、花遊鞠子のビジュアルイメージが確定した。笑

  • ホームズ&ワトソンものは少なからず読んできたつもりですが、これは新しい!
    「思わせぶりイヤミホームズ」「読者以下の推理力しかない卑屈ワトソン」の定型を覆す、「腰の低いホームズ」と「上から目線な美男絵師ワトソン」です(笑)。
    いやー、ビックリしました( ^ ^ )この部分は、ミステリスキーなら楽しめるカタストロフィではないでしょうか(笑)。何が面白いって、ワトソンに役を譲りたがるホームズのヘタレっぷりや、自分の画力と美貌を武器に事件にズカズカ口を出すワトソンの強かさですよ(笑)。

    誰も死なない謎解きものと言えば最近は「日常の謎」ものが人気ですが、今作は失踪・盗難・密室からの消失ときて、極め付けは怪盗と予告状! これは日常の謎ではないよね~(笑)。

    ガチガチな様式美に拘りすぎて人間描写に違和感があるミステリや、キャラ小説が書きたかったのかと訝りたくなるような謎解きは「ついで」扱いのミステリが多い中、これは読み物として純粋に面白いです。キャラクタが強いのに、うるさくない。その上、謎も魅力的。

    時代設定を「明治」にしながら時代考証や当時の生活感を書き込みすぎず、読者の想像に世界観の構築を概ね委ねる書き方も好印象です。

    この作家が本格物を書いたら面白いだろうな~と期待しつつ、でもデビュー作がこれってことは、今後もこの系統で書いていくんだろうな~と予想。いや、読むけどね!笑



    ○点灯人…コンクールで多額の賞金を手に入れた少年が失踪した。彼は「金は全て使った」と言い残して姿をくらませたが、果たしてそんな大金を何につぎ込んだのか?

    ○真珠生成…宝石商から盗み出された真珠の粒の一つが、芸者の金魚鉢から不意に発見された。自分も発見者になって懸賞金を手に入れようと、街はにわかに金魚鉢ブームとなるが…。

    ○人魚は空に還る…見世物小屋で人気を博した人魚が、さる夫人に買い求められることになった。人魚の最後の希望は観覧車に乗ること。ところが、客車が頂上に着いた途端、乗り合わせた男の悲痛な叫び声が上がり、不思議な泡が下界へと降り注ぎ、戻ってきた客車の中からは人魚の姿はかき消えていた(意外なゲストも登場)

    ○怪盗ロータス…怪盗を名乗る泥棒が人々を熱狂させていた頃、ある成金のもとに怪盗からの犯罪予告が届けられた。それまでと手法を変えてきた彼の真意は?

  • 表題作「人魚は空に還る」の最後、小川が筆名を明かすところでアッと膝を打った。ただ「赤い蝋燭と人魚」は笑顔になりようのない物語だったと記憶しているのだが。

    すっきりした文章で、全体が穏やかにまとまっている。ミステリを期待すると今ひとつかもしれない。系統としては坂木司さんの作品に近いが、やや及ばない印象。ホームズ役とワトソン役の逆転がキモなので、その新鮮さがどれだけ読ませるか。今後に期待。

  • これは天才絵師の安楽椅子探偵じゃないところがいい。
    時代も明治なら、人付き合いの距離感とか善意なんかが不自然じゃなく受け入れられて、無理矢理な日常の謎ではなくちゃんと事件なところとか、短編でだらだらしていない感じも好みで面白かった。
    続きも読みたい。

  • 明治時代の帝都東京で不思議な事件に巻き込まれるお人好しの雑誌記者と美貌の天才絵師。絵師が探偵役かと思いきや、お人好しで優しい記者が探偵役(しかも武芸にも通じているらしいという)というギャップ。殺伐とした事件ではなく、ちょっと不思議な幻想的な出来事が題材で、人情味があって優しい雰囲気に仕上がっている。事件が当時の時勢を反映しているのも面白い。
    切なく幻想的な雰囲気の第三話「人魚は空に還る」と、鮮やかな怪盗の手口を通して被害者側の行動の謎が明かされる第四話「怪盗ロータス」が好みです。
    読み口は軽めで、登場人物に嫌味がなく読後感が非常に爽やか。
    続編も読みたい。

  • 帝都にも名探偵ホームズが!
    明治の時代のステキな物語

  • しっとりした明治の色香のする文章のなかに、キャラクターが温かみを持って感じられる作品でした。
    まったくの日常というには不思議と不可解にあふれていて、でも人が死んだりはしない――押し付けがましくない人間同士の思いやりに満ちた事件簿。
    人の好さから事件を解決してゆくホームズと、ホームズの活躍をみたくてせっつく見た目はこちらが派手なワトソン――高広と礼の関係が、微笑ましいです。

    ブクログの談話室で見かけて興味を持ったシリーズでしたが、とても自分の好みにあっていて、文庫版3作、3日の内に読みおわってしまいました。
    今月末から、コミカライズがはじまるとの情報もありますし、この先も気にしてゆきたいシリーズです。

  • 不可思議な事件を不本意ながら解いていく記者のお話。
    短編集なので読みやすいですし、レトロな雰囲気も良いです。
    表題の「人魚は空に還る」が一番好きかな。見世物小屋で歌う人魚が本物か否か、探るお話です。

  • 坂木司さんの引き籠もり探偵が好きだったらこちらもお勧めかも。
    ホームズ役がちょっとお人好しで、ワトスン役がやたら不遜ですが。
    時代背景や小道具も好み。
    読む前は幻想小説系も入るかと思いきや、ワトスン氏の美貌以外はそんなこともなかったです。
    続きの「世界記憶コンクール」も読み出し中。

著者プロフィール

1975年生まれ。秋田県出身。2008年、第2回ミステリーズ!新人賞最終候補作となった短編を改稿、連作化した短編集『人魚は空に還る』(東京創元社)でデビュー。他の著書に『クラーク巴里探偵録』(幻冬舎)、『百年の記憶 哀しみを刻む石』(講談社)などがある。

「2019年 『赤レンガの御庭番』 で使われていた紹介文から引用しています。」

三木笙子の作品

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