殉教カテリナ車輪 (創元推理文庫 M あ 6-1)

著者 :
  • 東京創元社
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感想 : 40
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488435011

作品紹介・あらすじ

憑かれたように描き続け、やがて自殺を遂げた画家・東条寺桂。彼が遺した二枚の絵、"殉教""車輪"に込められた主題とは何だったのか?彼に興味を持って調べ始めた学芸員・矢部直樹の前に現れたのは、二十年前の聖夜に起きた不可解な二重密室殺人の謎だった-緻密な構成に加え、図像学と本格ミステリを結びつけるという新鮮な着想が話題を呼んだ、第九回鮎川哲也賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • すっご……( °_° )
    絵画ってこんな風に解釈していくんだ。
    おもしろ…!!

    新しい世界だ…(ღ*ˇ ˇ*)。o♡



    井摩井美術館に就職した井村正吾は、初老の学芸員、矢部直樹に、ある手記を手渡される。

    そこに記述されていた内容は、ある殺人事件の文書だった。

    絵画を描いた人物による手記だ。

    そこには、二重密室殺人事件の記録が記されていた。

    車輪と少女の絵画の意味は……。


    推理はできませんでした…(^▽^;)
    難しい。
    このトリックわかった人すごい。
    推理せずただ楽しんで読んでいく作品だと思いました。

    毎回言ってる気もするが、素晴らしい構成に拍手(゚∀゚ノノ"☆パチパチパチ

    思いつかんて、こんなに〜!(*゚Д゚艸)

    1作品の中に幾つも仕掛けてきますよね。

    ミステリー小説の冒頭には『見取り図』や『家系図』などが仕込まれていて心躍るのは定番です。

    飛鳥部さんの小説の冒頭には(まだ3冊しか読んでいないが恐らく今後もあるだろう)絵画が仕込まれています。

    この絵画を読み取り、謎を解く…?ヒントのような?役割を担っています。
    それだけじゃないのですが、説明が難しい…。
    奥深く読み取り、妄想を掻き立てるような解釈をしていく様子を読むのがとても面白くて、没頭してしまいました。

    飛鳥部さんは美術教師だそうで、なるほど〜と納得。
    美術の知識をふんだんに駆使していて、講義を聞いているようで非常に面白い。
    興味深い。

    興味深いと感想を書く小説って、私の中では最高と同義で、もっと他の作品も読んでみたくなります。

    ここからこう読み取る?そう展開させる?っていう意外性がとにかく面白い。

    面白かったぁ〜‎߹ㅁ‎߹)♡


    飛鳥部さんに関しては刊行順とか不可能なので、面白そうなの片っ端から読みます!!

    次は『黒と愛』いきます!!ヽ(´▽`)ノ♡

  • よくある「偶然の流れ」で
    今頃ではあるが古書店から購入し、著者のデビュー作を読了。
    飛鳥部氏については例の「事件」に関して様々な意見があるようだが、
    それはひとまず脇に置いて――。

    美術館事務員・井村は、
    気難しそうだと思っていた学芸員・矢部と、
    ふとしたことから気安く言葉を交わすようになり、
    無名のまま早逝した画家・東条寺桂を知る。
    矢部は二年前に企画展の準備をしていて目に留まった作品の
    制作者・東条寺が気にかかって購入者たちを訪ね、
    一枚の絵に隠蔽された手記を読み、
    二十年前の連続密室殺人事件の謎に触れたという……。

    単純に面白かった。
    無骨で自己表現の下手だった男が、
    偶然出会ったミューズを渇仰し、
    絵画制作に没頭するようになったが、
    年少の師であり巫女のようでもある乙女は
    暗い影に包まれていた――といったところ。
    不器用な絵描きたちの魂の交流を
    美しいと思うか「気持ち悪い」と感じるか……が、
    本作の評価を分ける一つの基準になるかもしれない、
    そんな気がする。
    私は美香ちゃんを、
    いじらしくて可哀想な女の子だと受け取ったので、★4つ。

    ところで、
    密室トリック推理合戦にて、洗濯機の話が出てくるところで、
    中井英夫の「聖父子」(@『幻想博物館』)かっ!
    とツッコミを入れたのは私だけではないと思うが(笑)。

  • 復刊版を購入。
    図像解釈学とミステリの融合。
    前半は謎めいた画家の生涯と彼の絵についての謎解き。
    肝心のの密室殺人は後半に発生する。
    先に読んでいた堕天使拷問刑や黒と愛の力業と比較すると本作のトリックはスマートだったように思う。
    途中、人数が変だな?と前に戻って確認したのだが解決パートで合点がいった。
    犯人の葛藤は文章ではなく絵で表現されていた、ということか。

  • 23年振りの再版!!!
    ありがとうありがとう!

  • 図像学とミステリーのコラボ。ミステリーなんだけど、全体的に図像学の話なので不思議な読了感。でもミステリー。

  • 図像学ミステリという新たな可能性を示したデビュー作。図像学という聞きなれない言葉に躊躇するかもしれないが、小説内できちんと解説してくれるので何の問題もない。なかなか面白かったので他作品も読みたい。

  • 表紙をめくったところにあるカラー絵に目が釘づけになり、いろいろなことを隅々まで見ながら想像しました。文字を一文字も読まないうちに取り込まれてまった感じです。「黒と愛」「堕天使拷問刑」を読んできたので一筋縄ではいかないストーリーだろうとは想像していましたが、図像解釈学とは!とはいえ説明がとても分かりやすく絵の解釈の過程はとても面白かったです。絵画の世界にどっぷり浸かっていたら後半はガッツリ本格ミステリ。この融合もとても好きでした。鮮やかに過去の二重密室殺人を解いた後、切ない余韻まで十分堪能しました。

  • 評価が高いのですよね。
    そう。とってもしーなの周りの評価が高くてずっと読んでみたかった本の一冊だったのです


    そして今ではもう本屋さんで売っていない。
    ネットで調べてみると、7000円とか付いてたりするのですよねヒエエ

    ダメ元でブクオフを回っても見つかる分けもなく
    もしかしたら……と、図書館を調べてみると閉架図書扱い。ですが貸し出しはしてる感じ……!!1

    と言う事で図書館で借りれたのですよ!やったああああ!!1



    2日で読んでしまったのですけど
    これは、この評価はネタバレせずにはいられない評価なのです。

    20年前の鮎川哲也賞なのですよね
    それはとっても分かるのです
    20年前のミステリだと思って読めば、とっても斬新!!1ってなるのですよね

    最近多く感じる多重推理を読んでいると
    この『殉教カテリナ車輪』はかなり消化不良に感じるのです


    まず読み始めて、かなり読みやすい文章で
    蘊蓄や説明に関しても、特に苦は感じないまま読み進めることが出来たのです

    が。
    手記なのですよ
    手記に入ってからがモニョる。

    何と言うか、生理的な物もあるのでしょうけど
    どうして手記なのに会話的なの?とモロに感じてしまったのです

    それまでの一人視点はとてもスムーズだったのに
    手記になった途端、手記なのに、まるで実録的な書き方になってしまっているのです
    セリフが入ったり、会話になっていたり。普通にそう言う手記はこれまであったのですけど
    どうしても不自然でむむむm……と思ってしまったのですよ


    手記をモニョりながら読み進めていくと、事件が起きて、推理が始まる。

    この手記のトリックはとても面白かったのです
    恐らく読んでる人たちは、この3章で色々な事を疑問に思ったはず

    しーなもあれこれ推理したのですよ
    カセットテープも、お風呂の換気口も、スポイトも、居ない人説も。
    居ない人説に関しては、奥さんもだし、桂の子供まで怪しんだのです


    そして、手記が終わってからの解決編。

    ミスリードの伏線が、すべてほったらかし!!1
    こんなんありなのですか!?

    例えば。
    例えば、スポイトは一つしかあの日持って来ていないことが判明してて、
    血液の反応は無かった。とか

    カセットテープは、誰かが当日用意したものだから、細工は無理だった。とか。

    一つ一つ、そうやってばら撒いたミスリードをハズレ籤だとちゃんと回収せずそのまま放置。

    20年前はありかもしれなかったのですけど
    昨今の多重推理物を考えると、ミスリードの為の撒餌はちゃんと回収して欲しいのですよ

    そして事実はただの事故だった。とか。


    これは評価できないのです

    あんな恥ずかしい思いして、この本をカウンターに持って来てもらって借りたのに……!11
    ありなのですか!これって!!1

    もう一冊借りてきたのですけど、ちょっと読むのを躊躇ってしまうのですね……
    けど、返却期限前に読まないと……!!1

  • 自殺した画家、東条寺桂が残した2枚の絵の主題とは?
    図像学を用いたミステリ。なるほど。本格ミステリと相性抜群。
    正直、絵画に興味がなく知識不足なので、解釈を全て理解できた訳ではないのだが、『殉教』『車輪』に込められた意味に辿り着くまでの謎解きには、今迄にない興奮があった。
    二重密室トリック…バカミス!!真実もさることながら、とある推理のおバカっぷりにも感激してしまった。○○機大活躍じゃないか。
    ある種の大掛かりなトリック。わたしはこういうのに弱い。よく騙される。気持ちよく作者の思惑にに乗ってしまっていた。
    東条寺桂が絵に振り回されたように、我々も彼の人生に振りまわされるだろう。

    窓辺さんよりお借りしました。感謝。

  • 〇 概要
     憑かれたように描き続け,自殺した画家「東条寺桂」。彼が残した「殉教」,「車輪」といった絵画に込められた主題とは何だったのか?
     彼に興味を持って調べ始めた学芸員「矢部直樹」は,調べていく過程で,不可解な2つの密室殺人事件の存在を知る。
     東条寺桂の手記を交えて描かれる不可解な密室殺人。その真相は意外なものだった。図像学と本格ミステリを結びつけるという新鮮な着想による作品

    〇 総合評価 ★★★★☆
     鮎川哲也賞受賞作らしいというか,昔ながらの創元推理文庫らしいというか,リアリティなどがない,ミステリらしいミステリ。図像学を取り入れ,作者の自筆の絵画の分析をするところは,この作品のオリジナリティであり,ミステリとしては面白い。不可能犯罪のトリックも,叙述トリックを生かした「密室内に犯人がいた」というトリックと,凶器のナイフを一階から二階に投げ,それが刺さって死んでしまうというバカミスチックなトリックで,どちらもインパクト抜群。こういう作風は結構好き。人物描写は薄っぺらく,トリックにリアリティもないので,嫌いな人は嫌いだろう。個人的には好きな作品。なかなか手に入らない作品なので,ブックオフで買えたのは本当にラッキーだった。★4で。
    〇 サプライズ ★★★★☆
     東条寺桂の手記部分の第3章が,矢部直樹の創作であったという叙述トリックは,なかなか面白い趣向。じっくり読んでいれば,気付きやすい,分かりやすい叙述トリックではあったが,素直に驚くことができた。豪徳二の密室トリックは,実質的にはこの叙述トリックがあってのもの(殺害時に室内にいたというのはトリックというほどでもない。)。佐野美香殺しのナイフを2階に投げたらたまたま死んでしまったというのは,バカミスっぽい。作中で井村に「この手記がもし推理小説で,犯人が最初からナイフを投げ上げるような計画を立て,実行し,成功させたりしたらどうでしょう。読者はおそらく納得しません。そんなバカなと思うだけです。…ところが現実の世界ではこういうことが起こりうる」と言わせている。
     車輪の図像による解釈の間違い,「カテリナ車輪」ではなく「イクシーオーンの車輪」を参考にしていたという部分は,驚きというより「ふーん」と思う程度。ただし,カテリナ車輪を作品のタイトルにしているという試みは面白い。
     トータルでのサプライズは,少しおまけの★4

    〇 熱中度 ★★★☆☆
     美術館事務員の井村と学芸員の矢部のやりとりから始まって矢部による東条寺桂の絵画の捜査,そして,東条寺桂の手記となる構成は凝っているが,たんたんと話が進むので,それほど熱中できない。不可能犯罪=二つの密室殺人事件が出てくるのは,後半部分。前半部分は,東条寺桂がなぜ,驚異的なペースで絵を書いたのか?どうして自殺したのか?東条寺桂が残した車輪や殉教といった絵画で描きたかった主題は何か?という謎で引っ張る。熱中度もそこそこ。★3で。

    〇 インパクト ★★★★★
     筆者の飛鳥部勝則の絵がカラーで添付されていたり,その絵の分析をするという作品全体の構成は,なかなかインパクトがある。また,密室殺人のトリックが,一階から二階に投げたナイフに刺さって死んでしまうというバカミスチックなところにもインパクトがある。総合的に見て,インパクトはある。★5を付けたい。

    〇 読後感 ★★★☆☆
     東条寺桂の人生は,波乱万丈であり,筆力のある作家(島田荘司とか…)が描いていたら,そうとういやな読後感になったと思う。しかし,人物描写が薄っぺらいため,心に残らなかった。読後感はよくもないし悪くもない。

    〇 キャラクター ★☆☆☆☆
     人物描写は薄っぺらい。東条寺桂や佐野美香,豪徳二などのキャラクターはアクが強いのだが…。作品全体の雰囲気や構成,トリックはインパクトがあるのだが,登場人物にはインパクトがない。リアリティがなく,作りものっぽいという点もマイナスだろう。

    〇 希少価値 ★★★★☆
     飛鳥部勝則の作品は総じて手に入りにくい。殉教カテリナ車輪は,その中では手に入りやすい方ではあるが。ブックオフで100円で買えたのはラッキーだった。

    〇 メモ
    〇 犯人
     東条寺桂
    〇 被害者
     豪徳二,佐野美香
    〇 トリックなどのメモ
     東条寺桂の手記部分のうち,第3章は,「良経介」の立場になって矢部直樹が創作していた。この部分を東条寺桂が書いたと誤認させることで,読者に東条寺桂には豪徳二を殺害することができなかったと思わせる叙述トリックが仕掛けられている。
     豪徳二殺害の密室トリックは,東条寺桂が密室の中にいて,死体発見時に発見者に紛れ込んだというもの。これは,既に述べた叙述トリックがあるから成立している。
     佐野美香殺害は,東条寺桂がナイフを2階に投げたときに,偶然これに刺さって死んでしまったというもの。これにより豪徳二殺害と同じ凶器で死ぬという不可能犯罪になった。
     殉教,車輪に描かれた主題は,おおむね矢部直樹が推理したとおりだったが,車輪はカテリナ車輪を題材にしたのではなくイクシーオーンの車輪を題材にしていた。義父と佐野美香を殺害したことで,永遠に炎の車輪に縛り付けられた…という罪の告白が主題だったのだ。

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