開化鉄道探偵 (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (325ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488439217

作品紹介・あらすじ

明治12年晩夏。鉄道局技手見習の小野寺乙松は、局長・井上勝の命を受け、元八丁堀同心の草壁賢吾を訪れる。「京都―大津間で鉄道を建設中だが、その逢坂山トンネルの工事現場で不審な事件が続発している。それを調査する探偵として雇いたい」という井上の依頼を伝え、面談の約束を取りつけるためだった。井上の熱意にほだされ、草壁は引き受けることに。逢坂山へ向かった小野寺たちだったが、現場に到着早々、鉄道関係者が転落死を遂げ……。「このミステリーがすごい!」トップ10にランクインした、鉄道ミステリの傑作!(単行本『開化鐵道探偵』改題・文庫化)

感想・レビュー・書評

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  • 明治時代初期の鉄道黎明期を舞台にしたミステリー。まだ建設機械も無いこの時代にこんな風に開拓していたんだろうなとイメージできた。当時の人達が今の日本の鉄道網の礎を築いたと思うと、うーんよくやったなあと思う。ストーリーの方はまあこんなもんだろうなという感じで何となく腑に落ちた感。

  • 鉄道ミステリ、それも明治を舞台にしているということで、珍しく思い衝動買いした。
    井上勝鉄道局長など、実在の人物や史実をベースにした物語で、黎明期の鉄道史を知る一助にもなった。
    ミステリとしては、自分の好きな、いわゆる本格ものではないかもしれないが、それでも多くの人物たちを登場させ、その関係性を丹念に描いて構成していた印象だった。
    ただ、他の方の感想にもあったが、登場する人物のキャラクターは、井上局長のそれが強すぎて、他の印象が薄れてしまった感があった(その井上局長が豪快で面白いので、それはそれで良いけれど)。
    また、著者が、こう言っては失礼だが、意外とご年配の方で、しかも鉄道会社に勤める方という。本書では随所に、鉄道敷設に対する反論と、それでもなお鉄路を通すことへの熱意が伝わってくる。著者自身が鉄道を愛し、誇りを持っていることが、素直につづられているように感じて、好感の持てる作品だった。

  • 時は明治十二年、京都〜大津間を結ぶ逢坂山トンネル開通工事を巡る怪事件に臨むのは元八丁堀同心と見習い鉄道技士の異色コンビ。地味で淡白な作風ではあるが、読み易い文章とテンポの良い筋運びで思わず一気読み。興味を惹かれる設定だけに、欲を言えばもっと物語の奥行きが欲しかったが、著者の実直さが感じられる爽快な作品だった。探偵コンビの後ろ盾となる【日本の鉄道の父】こと井上勝のキャラクターが二人を食う程にパワフルで豪快。善良な人物揃いの脇役陣を少々物足りなく思うものの、日本人単独での鉄道開通に挑む先人達の姿が眩しい限り。

  • なかなか面白かったです。
    いわゆる明治期に鉄道を通して起こる事件とその時代特有の仕掛けなど楽しく読めました。

  • 今私がハマってる作家さんです。
    私、文章の上手い人が好きなんだよね。
    この人、めちゃなめらか。
    鉄道会社で働いてたかたらしく、鉄道ネタ、多し。
    これもミステリーなんですが、鉄道黎明期に情熱を持って鉄道を敷設していった男たちの物語にもなってて、へーっ、でした。

    2022/05/17 更新

  • 登場人物が多い(^ ^; 会社の行き帰りで飛び飛びに読んでいると、誰が誰やら分からなくなる(^ ^; ← 1ミリも作者のセイでは無い

    明治維新から十数年、西洋に追いつき追い越せとしている時代の日本で、鉄道敷設のために日本初のトンネル工事をしている現場が舞台...という、中々特殊な設定。ご一新前後の急激な変化に戸惑う人、薩長の派閥争い、アメリカやイギリスとの複雑な関係...等々、バックグラウンドをきちんと理解できないと、中々作品世界に浸るのが難しいか(^ ^;

    探偵役が、八丁堀で鳴らした同心上がりで、今は宮仕えを嫌って浪人中...というのも、中々特殊な設定かと(^。^; 偏屈なキャラは嫌いじゃないが、いかんせんこの探偵、スロースターというか(^ ^;

    ワトソン役の鉄道技士見習いが質問しても、「もう少し様子を見よう」的な返答でのらりくらりとかわし...てる間に、新たな事件が起きたりする辺り、水戸のご老公のような(^ ^; いや、真実を完全に暴くまで飄々とした態度を崩さないのは、刑事コロンボっぽいのか?(^ ^;

    現代は社会が全体的に「せっかち」になっているからか、このスローペースがちょっといらついて...(^ ^; その分、☆一つ減(^ ^;

    ストーリー全体としては、まぁ面白く読めました。ただ、ちょっと警察が無能扱いされすぎなのが、ステレオタイプな感じがしなくもない。怪しい登場の仕方をしたアヤシイ人が、本当に嘘ついてたりも、ちょっとひねり不足か(^ ^;

  • 推理部分結構面白かった。火薬のくだりとか。
    ワトソン役小野寺の影が薄く、バディものとしては盛り上がりに欠けた感じ。
    シリーズ続編でキャラクターの魅力が増すことに期待。

  • 文明開化の明治12年。活発に行われている鉄道事業のトンネル開通工事で、不審な事件が多発。鉄道局の依頼で、元やり手の八丁堀の同心・草壁と、技手見習いが謎に挑む。御一新後の薩長の政権争いか?鉄道によって職を失う者達の妨害か?それとも…ホームズ・ワトソン的な2人も良かったし、時代背景が上手く活かされていた。後で気づいたら、前に読んで面白かった『軍艦探偵』の作家さんでした。他の作品も読んでみたいけど、まずは『開化鉄道探偵』の続編を読みたいです。

  • 日本最初のトンネル工事の現場で起こる事件を巡るミステリー。
    まず元八丁堀同心が事件を捜査するというのが面白い。時代の狭間の絶妙な和洋折衷感。
    鉄道局長の井上がキャラ立ちまくってて人柄も魅力的。
    鉄道ミステリーではあるが、明治初期において日本人の手で鉄道を敷こうとする人々の情熱が感じられて時代小説として楽しめた。
    いつか我々がつくった機関車を西洋諸国が買いに来るというくだりにじーんときた。

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著者プロフィール

一九六〇年、和歌山県生まれ。中央大学法学部卒業。第十三回『このミステリーがすごい!』大賞隠し玉となった、『大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう』で二〇一五年デビュー。同作はシリーズ化され、人気を博す。一八年、『阪堺電車177号の追憶』で第六回大阪ほんま本大賞受賞。他に『開化鐵道探偵』『軍艦探偵』『江戸の闇風』『途中下車はできません』『鷹の城』など著書多数。

「2023年 『江戸美人捕物帳 入舟長屋のおみわ 隣人の陰』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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