雨に殺せば (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (305ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488442026

感想・レビュー・書評

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  • 冒頭───

    やっと帰り着いた。ガスストーブのスイッチを入れ、次いでポットのコンセントを差し込む。コートをベッドの上に放り、縒れたネクタイを外しにかかった時、電話が鳴った。壁の時計を見ると、もう午前一時半、非常識だ。すぐに出るのも業腹で、しばらくようすをみることにした。
    汗じみたワイシャツのボタンを外しながらバスルームへ行き、水道の栓をひねった。ワイシャツと靴下を洗濯機に放り込み、つまり私の夜毎の儀式を終えて部屋に戻れば、まだ電話は鳴っている。


    大阪府警捜査一課の黒マメコンビの第二弾。
    第二回サントリーミステリー大賞佳作賞受賞作。
    黒川氏はこの作品で、第一回に続いて佳作賞を受賞した。
    氏にとっては、おそらく二番目の作品なのだろうが、相変わらず二人の上方漫才風の会話にテンポがあって心地よい。

    現金を輸送していた銀行員二人が、阪神高速道路の上で何者かに拳銃で殺害、強奪されるという事件から物語は始まる。
    その後、容疑者と疑わしき人物の自殺などが相次ぎ、捜査は困難を極めるが、愛すべきマメちゃんのポワロ並みの名推理が冴えわたり、事件の真相と犯人の正体に一歩一歩近づいていくという展開。
    ただし、事件の謎の解明と動機や理由などについては、第一作のほうが面白かった気がする。
    今回の事件解明にたどり着くまでの動機やアリバイ、話の進め方には強引さと粗が見え、作品の完成度としては、やや物足りない。
    舟券を100万も買ったら目立つんじゃないのか?

    それでも、まずまず面白いエンタメミステリーだったので、これからも黒川作品を読み続けるぞと誓う私なのであった。

  • 黒川博行の「大阪府警シリーズ」のごく初期の作品。大阪湾にかかる港大橋の上で三協銀行築港支店の現金輸送車が襲われ、約1億円が強奪される。銀行員2人は射殺された。事件の2日後、今度は築港支店の行員・川添がマンションのベランダから飛び降りて死亡。川添は前日、現金強奪事件について事情聴取を受けた行員の一人だった。川添の死は自殺と断定されるが、その後この事件の背後には、予想だにしない企みが隠されていた事が明らかになっていく…。銀行が融資をしていた大手の「碧水画廊」。どうやら川添はこの件に関して「浮き貸し」と「両建預金」と呼ばれる不正に手を染めていたようなのだ…。詳細→
    http://takeshi3017.chu.jp/file9/naiyou3627.html

  • クライマックスでは「名探偵」風の謎解きも見せてくれるけれど、本筋は一昔前の社会派を思わせる、リアリスティックな警察小説で、地道な捜査の描写が大半を占める。けれども社会派の多くがまとっていた暗さや辛気くささはほとんど感じられずに、からっと乾いて明るい。大阪弁の掛け合いの魅力と言ってしまえばそれまでだが。

  • 現金輸送車が襲われ銀行員二人が射殺され、関係者と思われる行員が自殺。更に…。今では行員が現金輸送車で給料を運ぶなど考えられませんが、時代ですね。黒まめコンビは少し設定が変わっていますが、あまり違和感はないです。それよりマメちゃんの鋭さが想像以上で驚きました。相変わらず漫才のように途中に挟まる二人の掛け合いがいいテンポを生み出して読みやすいです。今回は二課の岡崎部長がとっても素敵で、また銀行関係の専門用語や仕組みもとても分かりやすく説明してくれました。派手な作品ではないですがラストまでしっかり楽しみました。

  • サスペンス。今の作風とはずいぶん違います。謎解き。ちょっと自分の好きな黒川博行ではないかな。

  • 黒川氏の初期の作品。黒まめコンビ第2弾。
    銀行の色々がよく分かった。拘束預金とか今もあるのかな?

  • 銀行は一般顧客に対しゴミとしか思っていないってことが改めてわかった。

  • 2016_06_28-0063

  • 黒川博行の黒マメコンビシリーズ。
    著者の初期作品群の魅力は、軽快で歯に衣着せない会話や主観描写と、対照的に緻密なロジックを器用に導入している点、そしてバラエティ溢れる事案や業界エピソードである。
    中でも本作は、刑事コンビの捜査とその進展が、非常に自然であることから、同時期の作品でも特に完成度が高いと思われる。
    パズラー的な要素はないが、読み物としてのミステリとして、お手本のような作品だった。
    4-

  • 疫病神シリーズのほうが面白いかな。

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著者プロフィール

黒川博行
1949年、愛媛県生まれ。京都市立芸術大学彫刻科卒業後、会社員、府立高校の美術教師として勤務するが、83年「二度のお別れ」でサントリミステリー大賞佳作を受賞し、翌年、同作でデビュー。86年「キャッツアイころがった」でサントリーミステリー大賞を受賞、96年『カウント・プラン』で推理作家協会賞を、2014年『破門』で直木賞、20年ミステリー文学大賞を受賞した。

「2022年 『連鎖』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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