天啓の殺意 (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
3.35
  • (25)
  • (90)
  • (133)
  • (28)
  • (6)
本棚登録 : 1039
感想 : 85
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488449025

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 落ち目の作家、柳生から持ち込まれた犯人当てリレー小説。問題編だけが編集者の花積明日子に渡され、解決編を書く作家まで指定したのにそれを書かないまま柳生は失踪する。問題編に既視感を覚えた花積が調べた所、過去の未解決事件そのままで登場人物も皆実在。この小説の意図は?花積は独自に調べ始め犯人にも当たりがつくが新たに事件が起きる。思った展開が次々打ち消されこれしかないよね、という所まで来てからの騙しっぷりが見事。ちゃんと始めから提示してたよ!と前作同様読み流してしまい悔しい。解説でまた感心するけど思い切りネタバレなので絶対先に読んではいけない。

  • 推理小説作家が問題編を書いたあと、リレー形式での連載を提案。解答編を別の作家にという趣向だったが、問題編が実在の事件を前提としたものであることがわかり、また、関係者が次々と殺されていく。
    ヒントがちりばめられており、これだと思って読み進めるが、どんでん返しの連続。このスタイル好きですが、振り回されている感じがなんとも言えない。

  • 犯人当てリレー小説を残して消えた作家。そしてその内容の謎を探る編集者明日子。
    もしや犯人は…?と真相の直前で気づき、真相編を読んで、叙述トリックなるほどーと思わされた。途中で気になってたところもちゃんと伏線回収されてたし、面白かった!

  • 面白かったです。
    作者先生に完敗、乾杯。
    読み進めやすく、イメージも沸きやすい文章だと思います。
    でも、真相には全くたどり着けませんでした苦笑

  • ミステリーの問題編と解答編とを別々の作家が描く。 推理作家・柳生照彦から提案された企画は順調に進んでいくかと思われたが提出された問題編は半年前の事件をそのまま告発したものだった。 そして失踪する柳生照彦と殺されてゆく事件関係者。 問題編から犯人は「あの人物」しか成しえないと結論づけられるが・・・。

    作中作の終わりを誤認させる壮大なプロットトリックである。 一章の「事件」が作中作で二章の「追及」から明日子による捜査が始まってるように見えるが実際は「追及」も柳生氏による原稿で作中作である。 これにより明日子を探偵役として偽装する強烈なトリックである。

  • 違和感は所々感じてたけど読み進めれば忘れてしまうくらいの小さなもので、想像した結末通りなら嫌だなとか思ってた浅はかな自分を殴りたい。普段あんなところまで真剣に見ないので、なるほど!と感心した。叙述トリックがやめられないw

  • 去年多くのミステリー賞を総なめにした洋書の「カササギ殺人事件」正直その作品の完全な上位互換だと感じた。
    もちろん事件そのものに関してはそれぞれのストーリー、キャラクターが存在しているが、この作品の方が先に世に出てることを考えるとカササギ殺人事件の要とも言える枠組みは、この小説にまるまる見ることができる。
    複雑さ、発想といいこの小説の方が優れていると感じた。
    またこれも人気の小説シリーズの「悲しみのイレーヌ」の要のトリックとも共通していると言え、2つの人気の洋小説のいいとこ取りをしたような贅沢さを感じた。パクリとも思われそうであるが、どちらもこの「天啓の殺意」の後に出版されているため、この小説の凄さをより痛感した。
    その複雑さゆえに、内容を理解するのに時間がかかったが、正直舌を巻いた。

  • 本屋で偶然見かけた本。本格ミステリ、どんでん返しものはまず犯人が当てられない私はまんまと騙され、意外性に驚いた。ただ、推理小説を読み慣れていない人や昔ながらの時系列推理小説に頭が慣れていないと良く整理できず、
    結果トリックの隠れ蓑になってしまうのかな、と。リズムが良くページをめくる手が止まらないことは保証する。

  • 『カササギ殺人事件』を読んでひどく衝撃を受けた私は、あちこちにすすめまくっている。
    相手から「面白かった」「すごかった」などの感想を聞いては、してやったりとニヤニヤしている。

    しかし今回は、私がニヤニヤされる番だった。

    ふらりと本屋に立ちよって、辺りをのんびり見ていた私の目に、赤と青のあの目立つ表紙が映った。
    「第1位」「4冠」などと書かれた黒い帯もまぶしく光る。
    目立つ場所に積まれた様子に、さもありなんと頷いた私は、その傍らに、暗い灰色の本が積まれていることに気づいた。

    『天啓の殺意』 中町信

    奇妙な印象を持ったのは、表紙カバーが二重になっているからだった。
    もとの表紙に、まさに捻りを加えて、さらに挑戦的な煽り文句さえ加えてある。
    出版社がこれをするのは、なにか力を入れたいきっかけ、理由があるからだと聞いたことがある。
    たとえばドラマ化、映画化。
    そうした場合は出演者の写真が載ったりするのだが、そうした派手さは微塵もない。

    本屋のPOPを見れば、
    「○○○」だの「×××」だの、『カササギ殺人事件』を読んだものならば、無視できない文言が書かれているのだ。

    気になる。
    どうしても気になる。

    その場に足が張り付いてしまった。

    本を手に取った。
    動けた。
    レジに向かった。
    買った。

    そして読んだ。

    素晴らしい。


    『カササギ殺人事件』の傍らにこの本を置くよう仕向けたのは、出版社か、書店か、どちらだろう?


    発案者はニヤニヤするがいい。
    その策に私は見事にはまった。
    そして、それに感謝している。

  • 非常に手強い叙述ミステリ。例によって本作品も二度楽しめる作りとなっているが、一度目だけでも十分面白い。フーダニットものとしての完成度は高く、この段階ですでに二段落ちを用意してあるという手の込みよう。
    起承転結の転の場面で「おや?」といぶかしんでいると、一気に二重底に叩き落された。そしてお決まりの、ページを繰って問題箇所を確認する敗北者のマヌケな行為。この行為は久方ぶりだったので、非常に爽快だった。
    某名作の変形バージョンとでも言うのだろうか、作中作なしでは完成し得ない素晴らしい構成である。プロット作りに時間をかける作者らしい計算されつくした騙しの仕掛け。しかしこの仕掛けは危ういバランスの上に成り立っていることも事実で、慣れた読者ならば、犯人像から逆算してショートカットで真相に辿り着くかもしれない。そこまでして作者を出し抜いたところで、微妙な後味の悪さが残るだけだろうと思うのは私の穿った見方かな? 
    気を楽に、そして先入観なしで読むと、万華鏡のように変化する“真相”の連鎖にめまいと快感を覚えるはず。やはり本格には“キレ”と“意外性”がないとつまらない。

全85件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1935年群馬県生まれ。早稲田大学文学部卒業。 66年に「闇の顔」で第1回双葉推理賞候補になる。『新人賞殺人事件』(後に『模倣の殺意』に改題)で単行本デビュー。叙述トリックを得意とし、『空白の殺意』『三幕の殺意』『天啓の殺意』などの著作がある。2009年逝去。

「2022年 『死の湖畔 Murder by The Lake 三部作#2 告発(accusation) 十和田湖・夏の日の悲劇』 で使われていた紹介文から引用しています。」

中町信の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×