崖の館 (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
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感想 : 98
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488467012

感想・レビュー・書評

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  • もっと早く読めば良かった一冊。

    舞台は断崖にそびえる雪に閉ざされた洋館。

    いとこという幼少時からの家族同然の血縁の中での疑心暗鬼が魅せる、もっと早く読めば良かったという思いが押し寄せる、そんな物語だった。

    絵画消失、密室事件、転落事故、そして二年前に転落死した千波の残した日記が見つかったことから、海鳴りに呼応するかのように増す不穏な空気、不安感と数々の悪意が更に物語へと引き摺り込む。

    犯人は朧げにわかるものの、それぞれの推理、知られざる一面、過去が、今が明かされていく過程、そして何よりも人の濃密な心理を楽しめた。

  • 雪に閉ざされた崖の館。数年前に不可解な死を遂げた美少女。従兄弟達が再び館に集まったところで新たな事件は起きる。
    余りにも少女趣味的というか少女漫画的なゴシックミステリだが、推理合戦や手記に散りばめられた伏線によるフーダニットなど、古典らしいらしさ溢れる小説。1977年という時代背景も考えると、本格冬の時代の佳作だと思う。

  • 佐々木丸美の話には、よく少女特有の残酷さが書かれる。その残酷さが単純ではなく色々と形を変えて語られるところが面白い。主人公・涼子の語りはリリカルで、それに崖、館、海、死者の伝説、日記帳とあらゆる少女趣味なモチーフが絡まって謎解きへとぐいぐい進んでいく様子は圧巻。この語り口は好き嫌いが分かれると思うのですが、私は非常に好き。

  • 本当なら1977年の表紙を載せたいところです。
    再新刊のあとがきはいただけない。
    作者に大変失礼千万である。
    デビュー当時のあとがきは 作者の苦悩と書く衝動に
    溢れている切なさが たまりません。

  • 佐々木丸美という作家は評価が極端に分かれる作家だと思う。
    駄目な人は全く近寄りもしないが、好きな人はまさしく文字通りにのめり込んでいく。
    かくいう僕も、高校時代に「崖の館」をカバー買いして以来、ある種麻薬的と言っても良いほど美しい文章に魅せられて、少ない小遣いの中からハードカバーを買い続けたクチだ。
    特にあのリフレインがいけない、気がつくと頭の中でくるくると回り続けることになるのだ。
    したがってこの本に関してだけは、残念ながら冷静なレビューは出来ないと思われる、とにかく読んでみて、あのリフレインに感性が共鳴するかどうか確かめてみるしかないだろう。
    最近、創元推理文庫で佐々木丸美の殆どの作品が復刊された。
    性懲りも無くまた買ってしまったが、この年齢になって読む勇気がなかなか出ない。
    今でもあのリフレインは頭の中でくるくる回るだろうか?

  • 休暇中、資産家のおばの元で過ごす恒例行事のため、
    冬の嵐の中、崖の上にそびえる館に集まった5人のいとこたち。
    2年前におばの娘・千波が崖から転落死したときと同じように不審な現象が起こる。
    そして新しい犠牲者も。

    誰が千波を殺したのか、なぜ?というのがメイン。
    最近の小説ではまったく見ない、美麗さがぎゅっと凝縮した文章。
    昭和の香りがする(70年代に書かれたから当然…)。
    他の小説の3倍くらいの密度がある。

    トリックはうーんという感じだけど、
    やはりこの人の小説は心の機微を追いながら、
    世界観を楽しむのがよい読み方なのではないかと思う。

    なんかふわふわする不思議な読後感。
    割とさらっとひどいことが書かれていたりして、
    登場人物それぞれに感情移入しながら読むとやるせない気持ちになる。

    心を遣って読むから、疲れた。

    http://www.horizon-t.net/?p=876

  • これは面白い…
    読み始めると止まらなくなります。舞台にひきこまれる。
    私には珍しく、行きつ戻りつ推理しながら読んだミステリ。

    地の文が一人称なこともあって、「はっきりとは語られていないけどよく読むとわかる」ということがいくつもあって、何回も読み返さずにはいられない。

    この著者の作品、高校のときに担任の先生が絶賛してた、たしか。
    著者が亡くなるまで復刊できなかったんだなあきっと。
    でもこれは読めて嬉しい。

  •  ミステリにおける信頼できない語り手問題。
     京極堂シリーズの関君に対し「あいつが語り手じゃなかったら謎が解ける気がする」といった友人を思い出す。(ちなみに私も友人も京極堂シリーズは大好きだ)
     抒情的で乙女チックかつ冷静な語り手の涼子は関君よりはミステリとしては公平な気もする。しかし、本作はミステリというよりは、ジュブナイルだろうか。少年少女が何かを通して成長する物語。

  • どうしてこの本を買うことにしたのか覚えてないけど、購入リストにあったので買いました。

    私には千波ちゃんが許してるようには思えなかったけどなぁ。犯人の独白とラストには、えー・・・という感想。

    文学とか芸術についての登場人物の考え方は、正直ちょっとめんどくさいな、と思ってしまった。

  • 数年前に読んだ本だけど読み返してみた。

    独特の儚い雰囲気と甘い(私が勝手に思っているだけだけど)文章がとても好き。
    ミステリーなのにトリックや犯人よりも先に幽霊を思い浮かべてしまうような静かなイメージの不思議な館。

    男女平等が謳われる今の世の中では受け入れられない人もいるかもしれないけど、この本に出てくる「女の子なんだから」みたいな価値観や会話も私は嫌いじゃない。

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