- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488473082
作品紹介・あらすじ
伊神さんの卒業から丸一年、市立高校にまた卒業の季節がやってきた。今年は柳瀬さんをはじめ、仲のよかった先輩たちが高校を巣立っていく。そんな、しんみりとしたある日の放課後、秋野麻衣が、おずおずと不思議な出来事を目撃したと相談に来た。鍵のかかった真っ暗なCAI室のパソコンに向かって、誰かが何かをしていたらしい。調査の結果、書道室をはじめ部室棟でも同様に謎の人物の出現と消失の情報が寄せられる。卒業生でもある教師によると、神出鬼没で出現する「兼坂さん」という市立七不思議の一つだと分かるが……。トリックメーカーである著者が贈る、〈市立高校シリーズ〉最新作。
感想・レビュー・書評
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前作が短編集なのにとっても大掛かりな仕掛けだったので、今作は…と身構えていたら。
目次の時点で「搦手がすぎる!!」
今回も立派に最終巻っぽいまとめ方で、そのお約束もまた、たまらないです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「推理大戦」がおもしろかったので、勢いで市立高校シリーズを再読。二年ほど前に出たこの最新作、初読の記録を見たら、☆三つのレビューなしにしている。あれ?好きなシリーズなんだけど、なんでかなと思いつつ読み出して思いだした。そうだ、何回か挿入される「異世界ものラノベ」風の章が全然ダメで(苦手なので読まないという意味で)、斜め読みで終わったんだった。今回もそこだけとばしそうになったけど、いやまあとりあえずと、気を取り直して読んでみることにした。
そうしたら、そのラノベ風が意外にも結構楽しめたのだ。やっぱり力のある方が書くと違うんだなあ、当たり前だけど。キャラがたってるし、アニメの絵面にしたらすごく決まってそうな場面の連続。シリーズ物だったら続きが読みたいかも。ただし、ジャンルSFと違って、ほぼタイムトラベルと言っていい世界間移動の設定は大ざっぱで、一つの時空に複数の同一人物が存在することの処理もゆるい。ラノベでそれを言うのは野暮なんだろうけど。
このラノベ風の章は、高校時代葉山君とミノの周囲にいた誰かが書いてネットにあげたもので、卒業十二年後の二人が、モデルとなった当時の事件を思い出し、誰が書いたのか推理するという設定になっている。高校での事件当時と、十二年後の二人の会話、作中作であるラノベ、この三つが章ごとに切り替わる。また、作中作に「まえがき」がついていて、自分をかつての女子高生だと言い、それはいいいのだが、ラストの章の前に「あとがき」があって、それがその「まえがき」に対応しているようないないような、全体の「あとがき」でもあるようなないような、人を食った作り。事件そのものの「真相」も二重底になっていたりして、「推理大戦」もそうだったけど、なんとも過剰なまでのサービス精神に、お腹いっぱい。
(この後は内容に大きく触れます)
最初読んだ時、あ~今回はダメだわと思ったのは、ラノベ苦手以上にどうしてもひっかかることがあって、しかもそれが「事件」の真相の中心にあったからだ。いやあ、生徒の留年を担任と校長以外知らないって、私の経験上ありえないと思うよ。卒業式の日の教室にいるはずのない生徒が紛れこんでるのに気がつかないというのも同様。著者のミステリには結構強引なのがあって、それはそれで嫌いじゃないけど、これはないでしょ。
他にも疑問がいくつか。
・あの「異世界もの」を読んで、「この作者は事件の真相を知っている!」と思うかなあ。自分たちがモデルだとは気づくかもしれないけど。どこらへんが「真相」に当たるのかわからない。
・この小説をネットでみつけたのはミノの友人だとあるけど、当人ならともかく友人がモデルってわかるかな。難しいんじゃないかな。
・これは自分がほのめかしに疎いからだけかもしれないが、ミノの奥さんって誰?葉山君の「うちの人」はたぶんあの人だと思われるけど(そうだよね?)、ヒントがほしい。「トケイソウ」ってどこかで出てきてたかなあ。誰か教えてほしい。
目次にはない(!)第六章できれいに幕は閉じて、普通はこれでシリーズ終了だと多くの人が思うはず。でも「あとがき」では終わりじゃないって言ってる。でもでもこれって普通のあとがきじゃないし、やっぱり終わりなんだろうか。もう二年新作が出てないしなあ。高校時代がたった三年で終わるように、もっとあったらと思うくらいでいいのかもしれないけれど。 -
これで完結というわけではないそうですが、柳瀬さんを含む主人公の1つ上の世代の卒業を描いており、1つの区切りとなる作品となりそうです。
このシリーズでは複数に時間軸を描くことがよくありますが、この巻では高校時代、12年後、そしてファンタジー世界の3軸で描かれます。長編ですが、ミステリー要素があちこちにあって飽きませんね。 -
市立高校シリーズ第七弾。今作では目次を見ればわかるが異世界の章がある。勿論ちゃんと理由と意味があるので安心されよ。それにしても今作で本格的に葉山くんに探偵役が回ってきたんだなぁ、と第一作から読んでいた私なんぞは地味に感動してしまった。成長したなぁ葉山くん。そうして葉山くんと柳瀬さんの関係にも…。今回の事件のトリックは全体的に、今までの市立高校シリーズを読んで親しんでいた人ほど謎に嵌ってしまうもののような気がする。それもこれも伊神さんが名探偵すぎるからだ!
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市立高校シリーズ8冊目。柳瀬さんの卒業をひかえた3月のある日、CAI室で不審な人影(電源も入ってないディスプレイに向かってキーボード操作をする)が目撃される。
市立高校名物「七不思議」の八番目の怪異「兼坂さん」の調査に乗り出す葉山君達はーー
本を開いてまず目次を見てびっくり。「異世界」の文字に、「あ、作中作の方向で今回はきたのね」って予測はできますが、一瞬本を閉じて表紙を確認しなおしちゃいますねw
「現在」と「未来」と「フィクション」をぐるぐると巡りながら徐々に明らかになっていく物語と、八番目の事件にどこか感じる違和感を最終的に綺麗に着地させててお見事でした。
青春モノとしても、葉山君の内心の葛藤と「卒業式」というイベントの(伊神さんの卒業式編を一度過去作でやってますが)、この学年、タイミングだからこその心の機微を堪能いたしました。はー甘酸っぱい。 -
市立高校シリーズの続編がまだえるなんて思ってなくて嬉しい。コロコロと変わる解決編に転がされるのがまた楽しい。後書きの後に最終章とか反則だろ、と突っ込みつつ、それもまた楽しい。