卒業したら教室で (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
3.82
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本棚登録 : 343
感想 : 35
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488473082

作品紹介・あらすじ

伊神さんの卒業から丸一年、市立高校にまた卒業の季節がやってきた。今年は柳瀬さんをはじめ、仲のよかった先輩たちが高校を巣立っていく。そんな、しんみりとしたある日の放課後、秋野麻衣が、おずおずと不思議な出来事を目撃したと相談に来た。鍵のかかった真っ暗なCAI室のパソコンに向かって、誰かが何かをしていたらしい。調査の結果、書道室をはじめ部室棟でも同様に謎の人物の出現と消失の情報が寄せられる。卒業生でもある教師によると、神出鬼没で出現する「兼坂さん」という市立七不思議の一つだと分かるが……。トリックメーカーである著者が贈る、〈市立高校シリーズ〉最新作。

感想・レビュー・書評

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  • 前作が短編集なのにとっても大掛かりな仕掛けだったので、今作は…と身構えていたら。
    目次の時点で「搦手がすぎる!!」
    今回も立派に最終巻っぽいまとめ方で、そのお約束もまた、たまらないです。

  • 「推理大戦」がおもしろかったので、勢いで市立高校シリーズを再読。二年ほど前に出たこの最新作、初読の記録を見たら、☆三つのレビューなしにしている。あれ?好きなシリーズなんだけど、なんでかなと思いつつ読み出して思いだした。そうだ、何回か挿入される「異世界ものラノベ」風の章が全然ダメで(苦手なので読まないという意味で)、斜め読みで終わったんだった。今回もそこだけとばしそうになったけど、いやまあとりあえずと、気を取り直して読んでみることにした。

    そうしたら、そのラノベ風が意外にも結構楽しめたのだ。やっぱり力のある方が書くと違うんだなあ、当たり前だけど。キャラがたってるし、アニメの絵面にしたらすごく決まってそうな場面の連続。シリーズ物だったら続きが読みたいかも。ただし、ジャンルSFと違って、ほぼタイムトラベルと言っていい世界間移動の設定は大ざっぱで、一つの時空に複数の同一人物が存在することの処理もゆるい。ラノベでそれを言うのは野暮なんだろうけど。

    このラノベ風の章は、高校時代葉山君とミノの周囲にいた誰かが書いてネットにあげたもので、卒業十二年後の二人が、モデルとなった当時の事件を思い出し、誰が書いたのか推理するという設定になっている。高校での事件当時と、十二年後の二人の会話、作中作であるラノベ、この三つが章ごとに切り替わる。また、作中作に「まえがき」がついていて、自分をかつての女子高生だと言い、それはいいいのだが、ラストの章の前に「あとがき」があって、それがその「まえがき」に対応しているようないないような、全体の「あとがき」でもあるようなないような、人を食った作り。事件そのものの「真相」も二重底になっていたりして、「推理大戦」もそうだったけど、なんとも過剰なまでのサービス精神に、お腹いっぱい。



    (この後は内容に大きく触れます)

    最初読んだ時、あ~今回はダメだわと思ったのは、ラノベ苦手以上にどうしてもひっかかることがあって、しかもそれが「事件」の真相の中心にあったからだ。いやあ、生徒の留年を担任と校長以外知らないって、私の経験上ありえないと思うよ。卒業式の日の教室にいるはずのない生徒が紛れこんでるのに気がつかないというのも同様。著者のミステリには結構強引なのがあって、それはそれで嫌いじゃないけど、これはないでしょ。

    他にも疑問がいくつか。
    ・あの「異世界もの」を読んで、「この作者は事件の真相を知っている!」と思うかなあ。自分たちがモデルだとは気づくかもしれないけど。どこらへんが「真相」に当たるのかわからない。
    ・この小説をネットでみつけたのはミノの友人だとあるけど、当人ならともかく友人がモデルってわかるかな。難しいんじゃないかな。
    ・これは自分がほのめかしに疎いからだけかもしれないが、ミノの奥さんって誰?葉山君の「うちの人」はたぶんあの人だと思われるけど(そうだよね?)、ヒントがほしい。「トケイソウ」ってどこかで出てきてたかなあ。誰か教えてほしい。

    目次にはない(!)第六章できれいに幕は閉じて、普通はこれでシリーズ終了だと多くの人が思うはず。でも「あとがき」では終わりじゃないって言ってる。でもでもこれって普通のあとがきじゃないし、やっぱり終わりなんだろうか。もう二年新作が出てないしなあ。高校時代がたった三年で終わるように、もっとあったらと思うくらいでいいのかもしれないけれど。

  • これで完結というわけではないそうですが、柳瀬さんを含む主人公の1つ上の世代の卒業を描いており、1つの区切りとなる作品となりそうです。
    このシリーズでは複数に時間軸を描くことがよくありますが、この巻では高校時代、12年後、そしてファンタジー世界の3軸で描かれます。長編ですが、ミステリー要素があちこちにあって飽きませんね。

  • 今まで印象が薄く、パッとしない感じだったあの人がメインというか犯人。普通って何?あの人とは世界が違う?どんな人も特別な存在、特殊なスキルがなくても同じ人間なんていないのだから。
    そんな世界でも自分だけの特別な誰かがいてくれるだけで幸せなんだろう。

    今回は、別次元の世界と交互に展開される話で、かなり特殊。不思議な感覚で共通する人物を追っていく。

    また伊神さんの今までの行動の理由も説明される。確かに不自然で違和感を覚えていたが、その感覚さえもリードされていたとは。
    あとがきにも記されていたが完結編ではないとのことだったので、続きも楽しみ。
    このあとがきも、誰のあとがきであったのか不自然な感覚に恐われた。

  • 柳瀬さんの卒業を控えて現在進行形のように書かれる過去パート、実際の現在である未来パート、そこに挟み込まれる小説世界。なかなかに情報の整理に忙しい。
    未来パートまであるとなんとなくシリーズ完結のムードが漂うが、あとがきによると、完結ではないらしい。
    過去パートの解決部分で明かされた事実を踏まえて、シリーズ全作を読み返したくなる。

  • 目次から驚いて何が起きるのかと思ったら、現在・作中作・未来が交互に語られていた。
    卒業しても学校の事件を解決しに来てくれる伊神さんについてあんな背景があったとは。
    全然推理では無く、漠然と作中作を書いているのはあの人だろうなと思ったのは何でだろう。勘。

    高校生活の甘酢っぱさが炸裂しているが、12年後の葉山くんと一緒に暮らしているのって、柳瀬さんですよね?

  • 市立高校シリーズ第七弾。今作では目次を見ればわかるが異世界の章がある。勿論ちゃんと理由と意味があるので安心されよ。それにしても今作で本格的に葉山くんに探偵役が回ってきたんだなぁ、と第一作から読んでいた私なんぞは地味に感動してしまった。成長したなぁ葉山くん。そうして葉山くんと柳瀬さんの関係にも…。今回の事件のトリックは全体的に、今までの市立高校シリーズを読んで親しんでいた人ほど謎に嵌ってしまうもののような気がする。それもこれも伊神さんが名探偵すぎるからだ!

  • 市立高校シリーズ8冊目。柳瀬さんの卒業をひかえた3月のある日、CAI室で不審な人影(電源も入ってないディスプレイに向かってキーボード操作をする)が目撃される。
    市立高校名物「七不思議」の八番目の怪異「兼坂さん」の調査に乗り出す葉山君達はーー

    本を開いてまず目次を見てびっくり。「異世界」の文字に、「あ、作中作の方向で今回はきたのね」って予測はできますが、一瞬本を閉じて表紙を確認しなおしちゃいますねw
    「現在」と「未来」と「フィクション」をぐるぐると巡りながら徐々に明らかになっていく物語と、八番目の事件にどこか感じる違和感を最終的に綺麗に着地させててお見事でした。
    青春モノとしても、葉山君の内心の葛藤と「卒業式」というイベントの(伊神さんの卒業式編を一度過去作でやってますが)、この学年、タイミングだからこその心の機微を堪能いたしました。はー甘酸っぱい。

  • 市立高校シリーズの続編がまだえるなんて思ってなくて嬉しい。コロコロと変わる解決編に転がされるのがまた楽しい。後書きの後に最終章とか反則だろ、と突っ込みつつ、それもまた楽しい。

  • ついに読んでしまった。
    読んでしまうのはもったいないという理由でずっと先延ばしにしてしまっていたが、やはりそうするだけの面白さだった…。
    誰かと本書のことについてぜひ話したいけれど、話す相手がおらず、そもそも友人も少ないなあと思って、何だか悲しくなってしまった。。。
    ミステリとしては、いわゆる多重解決もののような要素があると思われた。作中作の中にも、それはそれで謎と解決編があり、構成としても、シリーズ中でも屈指の凝りようだと思った。
    一方、このシリーズの魅力は登場人物たちの関係性によるところも大きいと思うが、その点でも大きく進展があった。私にとっては何といっても柳瀬さんと葉山君がどうなったのか…が一番気になる。私としては変にほろ苦い結末…とかはいらないので順当にぜひお願いしたい。これからもシリーズをずっと続けてほしいし、伊神さん、柳瀬さんにもまだまだ事件に関わってきてほしいと思う。
    また、作中作の作者をめぐる最後の謎解きについては、意外だったし、むしろこれまでのシリーズの中ではあまり感じなかったようにも思った。いつからそうだったのだろう。
    著者のあとがきも(今回、そこも含めてメタ的に小説の一部になってしまってるが)相変わらず面白かった。

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著者プロフィール

1981年千葉県生まれ。2006年『理由あって冬に出る』で第16回鮎川哲也賞に佳作入選しデビュー。「市立高校」シリーズ、「戦力外捜査官」シリーズ、「楓ヶ丘動物園」シリーズなどの人気シリーズの他に『難事件カフェ』『迫りくる自分』『きみのために青く光る』『シャーロック・ホームズの不均衡』『レジまでの推理~本屋さんの名探偵~』『101教室』『彼女の色に届くまで』『100億人のヨリコさん』『名探偵誕生』『叙述トリック短編集』『そこにいるのに』『目を見て話せない』『生まれつきの花 警視庁花人犯罪対策班』などがある。

「2023年 『育休刑事 (諸事情により育休延長中)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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