れんげ野原のまんなかで (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488482022

作品紹介・あらすじ

新人司書の文子がこの春から配属されたのは、のんびりのどかな秋葉図書館。ススキ野原のど真中という立地のせいか利用者もまばら、暇なことこのうえない。しかし、この図書館を訪れる人々は、ささやかな謎を投げかけてゆく。季節のうつろいを感じつつ、頼もしい先輩司書の助けを借りて、それらの謎を解こうとする文子だが…。すべての本好き、図書館好きに捧げるやさしいミステリ。

感想・レビュー・書評

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  • 門井慶喜さんのビブリオ・ミステリー『おさがしの本は』の解説で他のビブリオ・ミステリー(図書館を舞台にしたミステリー)として紹介されていた1冊です。

    秋庭市の中央図書館に勤める今居文子の目を通して語られる、第一話霜降・花薄、光る。から第五話清明・れんげ、咲く。までの連作短編集です。
    『おさがしの本は』は主に書名当てだったのですが、こちらは、日常の謎から殺人事件も入っています。

    図書館員は文子と文子が密かに好意を持っている、能勢さん。最古参の女性司書、日野ツルの3人のみ、あとはアルバイトの学生と、他に秋庭市にたくさん土地を持っている、昭和5年生まれの秋葉氏、常連客の元文学少女の初老の女性深雪さん。能勢さんの妻と喘息持ちの娘の6歳のあずさちゃんなどが主な登場人物です。
    第一話で能勢さんが図書館の庭にレンゲの花の種を蒔きますが、それが第五話への伏線となっていき、タイトルの『れんげ野原のまんなかで』も最大の事件と大きなかかわりをもちます。
    所々に、本の書名は出てきますが(『クローディアの秘密』『万葉集』『床下の小人たち』など)、それ程多くなかったのが、期待していたので残念でした。

    • やまさん
      まことさん
      こんにちは。
      いいね!有難う御座います。
      「蛍草」は、葉室麟さんの本を読むときの入門書としてはとても良い本です。
      わたし...
      まことさん
      こんにちは。
      いいね!有難う御座います。
      「蛍草」は、葉室麟さんの本を読むときの入門書としてはとても良い本です。
      わたしは、しばらくしたらもう一度読んでみようと思っています。
      やま
      2019/12/16
    • まことさん
      やまさん♪こんばんは!
      こちらこそ、いつもありがとうございます。
      葉室麟さんって、最近亡くなられた方ですよね。やまさんのおかげで、時代小...
      やまさん♪こんばんは!
      こちらこそ、いつもありがとうございます。
      葉室麟さんって、最近亡くなられた方ですよね。やまさんのおかげで、時代小説に少し詳しくなれます。
      2019/12/16
  • 全部で五話の物語となる連作ミステリです。

     第一話 霜降 ― 花薄

     ある時から小学生の利用者が増え始めた秋葉図書館。そして、彼らは閉館後の図書館に残ろうと司書たちの目をかいくぐろうとしているのだが……。

     もちろん、そんなことが出来るはずもなく、日々、閉館時間に追い出されてしまう。

     それと同時に古着の忘れ物があったり、外にカップラーメンが詰め込まれたギターケースが置いてあったり。

     だれが、なんのために、そんなものを図書館へ忘れたり、置いていったのか?

     そして、子供たちが閉館後の図書館に拘るのは何故なのか?

     ほのぼのでした(*^^*) ヒントはネタバレになるので言えませんが、私もおなじことを考えたことがあります。今もやってみたいです(∀`*ゞ)エヘヘ 

     第二話 冬至 ― 銀杏黄葉

     元大学教授で図書館経営学を教えていたという寺田という老人が秋葉図書館へやってくるようになった。図書館の批評を書いているということに文子たちは緊張する日々を迎えることになる。

     そして循環バスが図書館に通るようになったために、老人の利用が増えるように。

     その一人、深雪さんは常連に。彼女はとても本好きで、写真集が好き。(彼女の言葉から『万葉秀歌』と出たときはひぇ! とか言ってしまった。私も持ってる岩波新書のベストセラーですね。本の中の登場人物なのに湧き上がる親近感!)

     彼女が図書館を利用するようになったある日、彼女が読んでいた本の中に洋書をコピーしたものが挟まれていた。

     そして、そこから始まる洋書絵本が抜き出されて、ご丁寧に並び直されていたのだ。何故? 

     これは暗号なのかもしれないと調べ始める文子たち。

     その結末は……。

     ドイツ語ができて、万葉集がわかり、そして図書館で使用する分類記号までわかる人物がある人へ仕掛けた謎。

     ほんのり切ない物語です。

     第三話 立春 ー 雛支度

     ある日、この秋葉図書館の土地の元の持ち主だった秋葉さんが慌てて図書館へ飛び込んでくる。その手には図書館から出てはいけない本の借主の住所・氏名・借りた本のリストだった。

     慌てて、借主へ連絡を取る文子たち。だが、そのリストの人物は一人も図書館を利用していなかった。

     では、誰が、何のために、偽名で本を借りたのか、そして、その本はどこにあるのか?

     心が痛むような物語でした。

     第四話 二月尽 ー 名残の雪

     秋葉市ではめったに振らない大雪の日、文子はアルバイトの男子学生と二人で図書館にいた。

     すでに交通手段もなくなり、近所に住んでいる男子学生を帰したら、文子は図書館で一晩を過ごそうと思っていた。

     そこへ、先輩の能勢から連絡があり、秋葉氏の家で一晩泊まることになった文子。

     その晩、共に食事をしながら秋葉氏が語ったのは雪女を見たことがあるという話だった。

     彼と妹が見た雪女とは本当にいたのか?

     大地主ならではの歴史の物語でした。八雲の作品みたいと思いながら読んでました。(雪女も八雲作ですけどね)

     第五話 清明 ー れんげ野原

     秋葉図書館のれんげ野原がローカル誌で話題になっているという。

     そんな時に秋葉図書館の物ではない児童書が返されてくる。

     この持ち主は、何のために、今頃になってこの本を帰してきたのだろう?

     そのなぞ解きとれんげの花一面の美しい風景に包まれて物語は終わります。

     どのお話にも親しい本が出てきていて、おお! 読んでるわ、とか、これ大好きだった! とか思いながら読み進めていました。

     書店は大河、図書館は海という作者の森谷さんの言葉が胸に染み入る一冊です。こちらもシリーズになっているようですので、ゆっくり読み続けたいなぁと思うのでした。
     第一話で扱われている児童書が私の大好きな作品でうれしくなってしまって、その勢いのまま、読み進めていってしまいました。

     こういう作品って素敵ですよね(*^^*)

  • 図書館や本にまつわる謎をとく、作品紹介にある通りの『やさしいミステリー』でした。
    図書館に関連する謎が出てきますが、謎の幅も広く楽しく読めました。

  • 図書館の司書さんたちに関わる日常の中のミステリー。他の本で似た物があったなというのもあったかな。ほのぼの系で終わるのかなと思っていたら最後ちょっとびくっとした!
    『床下の小人たち』読んでみたいと思った。

  • 地方の図書館を舞台にしたミステリー。雪の描写があったから割と北の方かと思ったけれど、結構簡単に都内に行けているからどこなの???と混乱したくらいで、あとはとても良かった。図書館ならではの『本にまつわる』ミステリー。カード乗っ取りのあたりはウワァ~…となっちゃったけれど、アル中の祖母の話も割とウワァ…という内容だったわ。ところで能勢さんに対する恋愛感情、唐突すぎない?!

  • 司書さんに勧められて。
    あまりミステリーは読まないのですが、日常の中にあるささやかな事件という感じでワクワクしながら読めました。
    なにより能勢さんが好みのキャラクターすぎて終始ニコニコしてしまった。文子の気持ちが分かります。

  • ミステリというにはほのぼのしてる内容だが、ジャンルはミステリ。
    ススキ野原の真ん中という僻地に建てられた図書館を舞台に、日常的に起こるささやかな謎を解く話。
    図書館ならではの謎が多く、色んな本が登場する。

  • 図書館モノは好き
    本のあらすじや一節を聞いただけで題名が解るスーパー司書に会いたい

  •  平台に置かれているのを見てタイトル買い。
     題とイラストから連想できる通りの、ちょっとした「日常の事件簿」―――ではあるのだけど、舞台が市立図書館であるだけに、個人的な「図書館」あるいは「図書室」の思い出や思い入れがあると、記憶の味付けがされてより楽しく読めるかも。

     凄惨な殺人事件も、派手な誘拐事件も出てこないかわりに、主人公の女性司書さんの「ほのかな恋心」が、それこそ本の遊び紙のように挟まれる後半を読んでいると、もーちょっとこの思いのたどる先を見届けたいかも、とも思った。
     古今東西過去現代を問わず、本…… 小説のテーマとしてもっとも多くとりあげられているのは「恋愛感情」であるのだし(笑)。

  • 立地条件のゆえんか、利用の少ない秋葉図書館。ススキ野原に囲まれた静かな図書館で、日々起こる謎を解明していく連作ミステリー(?)。
     殺人事件や誘拐が起こるわけではなく、日常業務の中でおこるちょっとした謎解き。
     ありそうでなさそう、なさそうでありそうなエピソード。このまんまではないけれど、似たようなエピソードは市立図書館レベルでは多発しています。
     共感をおぼえつつ、わが身を振り返る図書館羊です。

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著者プロフィール

1969年静岡県生まれ。日本画家・屏風作家。筑波大学大学院芸術研究科美術専攻日本画分野修了。渦巻きをモチーフにした屏風制作を行う傍ら、神社、寺院,協会への奉納絵画をライフワークとして続ける。 主な奉納・収蔵作品大徳寺聚光院伊東別院 墨筆による「千利休座像」軸一幅/駿河総社静岡浅間神社四曲一双屏風「神富士と山桜」。主な出版物 絵本『おかあさんはね、』(ポプラ社)/絵本『メロディ』(ヤマハミュージックメディア)/絵本『サクラの絵本』(農文協)/詩画集『国褒めの歌巻一』(牧羊舎) 
自身の日本画制作に加え、寺社奉納絵画、絵本制作、コラム等の執筆、講演会等を行う。人と人、人と自然、人と宇宙が穏やかに調和する日本文化の特質を生かし、新しい世界に向けたパラダイムシフトを呼びかけている。静岡ユネスコ協会常任理事。

「2020年 『ジャポニスム ふたたび』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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