- Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488523077
作品紹介・あらすじ
栄華をきわめた都市の誕生から滅亡までを描く「サルナスの滅亡」、過去を探し求める男の遍歴「イラノンの探求」など13編、さらに巻末には初期作品5編、またラヴクラフトが書簡に書きとめた夢を抜粋した「夢書簡」を収録。
収録作品
「サルナスの滅亡」 「イラノンの探求」 「木」 「北極星」 「月の湿原」 「緑の草原」 「眠りの神」 「あの男」 「忌み嫌われる家」 「霊廟」 「ファラオとともに幽閉されて」 「恐ろしい老人」 「霧の高みの不思議な家」
感想・レビュー・書評
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第7巻にはラヴクラフトの小説の基になった夢の内容を手紙としてまとめた「夢書簡」が収められており、その他初期作品、小説として完成に至らなかった「断片」が収められている。「夢書簡」を読んでみると昔の人が見た夢の詳細な内容に驚かされる。私も時々夢を見るが、こんなにはっきりした夢を見ることはなくなった。様々な文明の利器に囲まれて生活していると、夢を見る力も衰えていくのか、そんな気分になった。初期作品、断片では小説として粗削りなところがあるが、舌足らずなところが逆に想像力をかきたててくれて結構楽しめた。
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文庫版全集の完結巻。ここまで到達するのにずいぶんと
かかったが、とりあえず完結してもらえたことに多謝。訳者
あとがきにもあるように、職業翻訳家の仕事環境がどんどん
悪くなってきていることに不安がよぎる。活字中毒患者と
しては寂しい限りだ。出版社には頑張っていただきたい。
さて肝心の本の内容だが、ラヴクラフトという作家に
ついてこの7巻を読んで思ったことがある。前にも書いた
ことだが、ラヴクラフトという作家は決して文章を書く
才能にあふれていたわけではないだろう。原文を読んだ
こともないし、英語の文章の善し悪しがわかるわけでは
ないのだが、翻訳家の苦労を読むにつれ、そんな気がする。
それでもなお彼の作品に魅力があるのは、彼の見ていた夢の
力に負う物が多いのではないだろうか。見た夢の内容を
描いた書簡などを見るとどうしてもそんな気がしてしまう。
小説として形を整えた文章よりも、単に夢の素描である文章
の方が生々しく輝いている、そんな気がするのだ。そこには
夢を見ることの多い私の、そうであって欲しいという願望も
含まれてはいるのだが。 -
短編が多く、読みやすいのだが話としてはなんだか物足りなかった。
"夢書簡"では、明らかにランドルフ・カーターの陳述であったり、小説の元ネタとなったらしい。そんな夢をみるものかと思いながら、面白かった。 -
「眠りの神」のみ
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最終巻読了。理屈はない善悪もない、ただ襲いかかる旧支配者、太古の異形の神々。その名を口にしてはいけない。エジプト、アメリカ、アフリカ、ヨーロッパ世界各地で起こるこの不条理の恐怖神話。その着想をラヴクラフトは夢から得た。最終巻はその夢書簡や資料を含む。「逃げろ、そこから逃げるんだ!」しかし、絶対に逃げられない。自分を守る手段もない。夢の中でもラヴクラフトは不条理に追いかけられる。
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完結巻だからなのか、既刊からこぼれたものを拾い集めて編集した感はある。しかし、決して駄作凡作ばかりというわけではない。
小説の原型となった、夢の内容を書き起こした手紙を収録した『夢書簡』は、夢の描写が緻密でなかなか面白かった。物書きの練習に夢日記をつけるのも良いのかもしれない。
最後に収録された『断片』。要は序章のみ存在する未完作品なのだが、実は完成していたが本編を何者かに奪われて、後年に原稿がオークションに出されて、落札された原稿を巡って――という物語またはTRPGシナリオが既にありそうだ。特に『Azathoth』。
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『サルナスの滅亡』(ドリーム・サイクル)
かつて、ムナールという地があった。そこに遊牧民がやって来て、トゥラー、イラーネク、カダテロン、そしてサルナスという都市を建設した、そのサルナスから遠くないところには以前よりイブという都市があり、そこには面妖にして醜悪な存在が住んでいた――。
(イブの住人にサルナスが滅ぼされる話かと思いきや、その通りなのだがその前に――。)
『月の湿原』
友人のバリィが買い戻した古城。そこに近い湿原には、手を付けたり干拓を試みようとしたりすると呪いが降りかかるという伝承があった。もちろんバリィもわたしも意に介さず、干拓作業は予定通りに始められたのだが――。
(神話生物か、神話生物かと思わせる存在は出てこないが、その結末に、そこがかつてサルナスもしくはイブだったのではないか、と勘ぐってしまった。)
『忌み嫌われる家』
かつて商人一家が、不可解で異常な衰弱で全滅したという、いびつな植物が蔓延る朽ちた家。好奇心と迷信を払拭したいという思いから、許可を得て一晩その家に泊まり込むことにしたわたしと伯父が体験した恐怖とは――。
(明言はされていないが、『宇宙からの色』の前身みたいな内容だった。) -
サルナスの滅亡★3
奢れるものも久しからず…サルナスという都市が、例の海洋人種を滅ぼし発展したが、仕返しされた。
イラノンの探求★3
イラノンだけ時間の流れが違ってたんだね。理想都市アイラ…姶良を想起しちゃう。
木★3
芸術家とその作品を失わせた嵐は、宇宙的な何かが引き起こしたものなのだろうか?
北極星★2
見張りの役目を睡魔に負けて疎かにし、故郷が滅びた夢を見たようだ。
月の湿原★3
何かが湿地の古代都市を封印しているのだとしたら、干拓計画を立てただけで実行を未然に防ぐとはすごい知覚力。
緑の草原★2
話の流れはあまり頭に入ってこず、ただただ、孤独感や疎外感を感じた。
眠りの神★2
精神病の男の話。彫像を友人だと思い込んでいる。
あの男★2
ニューヨークすら魔の都市に。
忌み嫌われる家★3
fallout4で出て来る「光りし者」はこれが元ネタだろうか?そう考えたら面白く読めた。
霊廟★3
ただの狂人なのか、本当に霊的な出来事があったのか。
ファラオとともに幽閉されて★1
くよくよした主人公だ。結局生きてて何もされてないのに。
恐ろしい老人★2
魔法使いの爺さんだったのね。
霧の高みの不思議な家★2
やっぱり、あんまり大したことは起きないね。