暗黒神ダゴン (創元推理文庫 F ラ 1-12)

  • 東京創元社
3.06
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  • Amazon.co.jp ・本 (249ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488523121

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  • H・P・ラヴクラフトの世界観を背景に書かれた怪奇小説。クトゥルー神話ファンならば、題名と表紙で「ダゴン…深きもの…おぞましい儀式…」というような連想が可能だと思う。だが、確かにダゴンには言及されるし、魚っぽい人物も登場するし、おぞましい儀式も行われるのだが、クトゥルー系作品によくみられる宇宙的恐怖の襲来は無い。主人公がのたうちまわながら自分探しを行う描写に力を割いた結果、コズミック・ホラーとは異なる生理的嫌悪感と恐怖感を満たそうとした小説だったのだなあという感想である(以下、自分向けのまとめとネタバレ含む)。
    主人公の父親はどうやら何らかの事情でおかしくなってしまったらしいが、どうもそれを幼少期に見たらしい(見たのか後付けで見たように感じているのか微妙な所)と思っている主人公は、学問の末に職と結婚によって世間体と人並みの生活を手に入れていた。しかし、相続した先祖伝来の農場に戻ってきたとき、その世間体と自分の内面に存在するものがぶつかり合い、結果的に世間体をすべて放棄することになる。表の世界とのアンカーだった賢い妻を殺害するという形で。このあたり、何かになろうと努力したけれども結局なれなかったうえに自分よりも優れた人間が存在することへの絶望感からのドロップアウトとも取れるだろうか。ここまでで大体半分弱。その後はなんだかよく分からない魚っぽい娘の言いなりになって酒を飲んで珍奇な行動を繰り返した挙句にゆかいな仲間によってダゴンの生贄にされておしまい。この一連の描写がくどくどと気持ち悪い上に長いのだが、まともだった人間が完全に狂気に陥るまでのプロセスと捉えればよいのかなと思う。そして結局狂気の果てに自分にとって心地よい場所に収まることができた訳だが、まあそのあたりも判然とはしない。途中、ダゴンについて主人公自らが語る箇所との対比で考えるとよいのかもしれない。クトゥルーものとしては、なんだかんだ相続した農場には結局どれだけの秘密が隠されていた(主人公の系譜からもっと示唆は与えられないのか)と思っていたので、あっさりフェードアウトしてビックリなのがひとつ。登場人物が急に現れてどういう関係性かよくわからなかったり、存在感ある感じの人物が一切関わってこない急な入退場の激しさにビックリなのがもうひとつ。著者が詩人らしいので、なにかこう文学的な難解な解釈と描写でクトゥルー神話体系をリブートしてみたということになるのかな? 解説はレビヤタン神話がどうこうと色々と教えてくれているが、結論からすると、心が弱っている時に読むべき本ではない。主人公の行動に少しでも共感を覚えてしまったらおしまいだ。

  • 古い屋敷を相続した牧師のリーランドは屋根裏で鎖に固定された手錠と謎めいた古い手紙を見つける。冒険も悪夢もたいてい屋根裏から始まる。妻を殺したい衝動に駆られ、魚のような容貌の少女が現れ…。まさにクトゥルー世界のオマージュ。狂気なのか、太古の神なのか。秘密を知ってしまった者に襲いかかる、畳み掛ける恐怖。対処法なし。ただ逃げるのみ。

  • ラヴクラフトの本よりはかなり読みやすい文体だった。
    話の筋があるというよりは雰囲気で読ませていく感じだった。
    最後の解説も話の筋よりは根本の考察に言及していたし。

  • 偶然見つけたので購入した一冊。表紙を見てちょっと笑っちゃいました。
    読んでいて感じたのは、読みやすいということでした。ラヴクラフト全集やタイタス・クロウ・サーガに比べて読みやすいです。
    しかし、内容は?と問われれば唸ります。クトゥルフ神話に関連してるし要素も入ってることは入ってるけど、そこまで、というわけでもないです。
    ラストには思わず首を傾げてしまいましたが、読みなおしてみて納得できました。ああ、そういうことかと。
    内容的には星三つ。

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