たたり (創元推理文庫 F シ 5-1)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (332ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488583019

感想・レビュー・書評

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  • 大好きな『シャイニング』が影響を受けたと聞いては読まずにはいられない作品。大好物の屋敷モノ!
    「中心線がずれていて、三半規管に影響を及ぼす」「屋敷に取り込まれる」などの描写がたまんない、読んでいるだけでウットリ至福。
    間取り図を描きたくなるほどのややこしさや、図書室、温室、塔まである豪華さが最高。
    でも、主人公のネルが屋敷に取り込まれていくあたり、モンタギュー夫人とアーサーの登場でなんだかドタバタ劇の様相…。
    ラストは予想できてしまっていたけれど、まさかそんなお粗末ではないはず…と思っていたのですが(^^;;
    博士もツメが甘すぎ、アカんやろ(笑)。
    なによりもネルに感情移入できず、どうせなら屋敷に取り込まれるのは、セオであってほしかったと…いやむしろ、私なら…そう思う時点で、私もすっかり丘の屋敷にスピリッツを持っていかれてますね。
    所詮、調査団は他所者。結局おたおたするだけで、屋敷の凄みが勿体無かった。
    ここはぜひ、ダドリー夫妻の語り口で違う視点からこの物語を読んでみたい☆
    特にダドリー夫人が魅力的。料理の腕、働いている部屋、仕事内容…と気になる点がいっぱい♡
    人間よりも屋敷に感情移入してしまった私なのでした┐(´ー`)┌
    いろんなタイトルで訳されているけれど、どれもしっくり来ないんだよなぁ…。『丘の屋敷』が1番マシだけれど、作中に出てくる「丘」、別になくてもいい気もするし(^^;;
    半端ないリーダビリティなだけに、読んでいる最中どんどん期待値上げすぎてしまったかな?

  • 注:思いっきりストーリーにふれています。


    子供の頃(小学校低学年の頃だったか?)、自分が幽霊になった夢を見たことがある。
    その時は、幽霊になって、街を一人(?)でうろつくしかないその心細さに目が覚めてから怖くてしばらく泣いていた記憶が(爆)
    幽霊を見ること、幽霊に祟られることより、自分が幽霊になってしまうことの方がよっぽど怖いんだなぁーと思ったのだが…。
    でも、そんな単純な話ではなくて、むしろそれを救いと思ってしまうという、人の生というのはそのくらい奥深いものなんだなぁーというのがこの本を読み終わってのまずの感想。

    ただ、考えてみればそれはあるのだろう。それも普通に。
    ていうか、誰の身にも起こりうる事なんじゃないだろうか?
    実際振り返って見ると、それは確かにあった。憶えている限り2度。

    生きていれば、“ハレ(非日常)”と“ケ(日常)”がある。
    地味で面白いというよりはむしろ不快なことも多い“ケ(日常)”よりは、キラキラ楽しい“ハレ(非日常)”を求めるのは誰しものこと。
    とはいえ、非日常である“ハレ”を日常のこととしてしまうと、キラキラした“ハレ”はうっとおしい“ケ”に変わって、人を蝕んでしまうということか。
    以前読んだ誰かのエッセイに、“旅が日常になってしまったツーリストは旅に蝕まれていく”みたいなことが書いてあったのを思い出す。

    この本は、自分を省みさせられたり、周りの人を思い起こさせるという意味で、『春にして君を離れ』に似ている(ストーリーは全然違うが)。
    ただ、『春にして君を離れ』は、「人間なんて、独善的にしか生きられないじゃん」と著者のあざとさ(上手さとも言うw)を感じてしまうのに対し、こっちはそこはかとなぁーく身につまされるうら寂しさがあり、その意味で怖い(幽霊の怖さとは全く違う)。

    アマゾンのレビューで、“日常で嫌なことを抱えている人は読まない方がいい”みたいに書いている人がいたが、確かにそうかもしれない。
    読んでいて、過去の自分のしてきたことの捉え方をネガティブな方向にひっくり返されるところがあるのだ。
    もちろん、「そんなことねーよ」と言っちゃえる人もいるだろう。
    でも、それは、それこそモンタギュー夫人のような“普通程度に心臓に毛が生えている”普通の人(ホメ言葉ねw)だからであって。
    というか、そもそもそういう人はこの本を手に取ってみようなんて思わない(この本に出遭わない)んじゃないだろうか?
    なんて思う。

    結局、エレーナにとって他の三人は良い人すぎたのだろう。
    人間は、良い人に囲まれるのが当たり前になってしまえば、それすらもストレスになってしまうということなのか?
    そう考えると、エレーナにとって(他の三人にとってめ)ストレスな存在であるモンタギュー夫人が最初から加わっていれば、あんな結果にはならなかったのかもしれない。
    良い人たちの思いやり過剰というのは、逆に人をスポイルしてしまう面があるということなのだろう。

    途中から出てくるモンタギュー夫人は、いわゆる『春にして君を離れ』の主人公的人物として描かれている。
    実際、モンタギュー夫人はエレーナに対して、モンタギュー夫人なりの優しさや思いやり(あくまで『春にして君を離れ』の主人公的な)を見せる。
    それこそ、モンタギュー夫人の言う通りにしていれば、あのようなことにならなかったとも言える。

    そんなモンタギュー夫人だが、面白いのはダドリー夫人とのやり取りだ。
    エレーナやモンタギュー博士たち4人とのやり取りでは杓子定規で愛想の欠片もないダドリー夫人だが、モンタギュー夫人とはウマが合うのか?モンタギュー夫人がダドリー夫人を手伝って普通におしゃべりをしているシーンがあるのだ。
    それは、自分本位同士はむしろ仲がいいということなのか?(そんなことあるのか?というか、むしろそんなもの?w)。
    というより、実はダドリー夫人というのはごくごく普通の人で。むしろ、エレーナが危うい人であるように、(エレーナにとって良い人である)他の3人も多分に危うい人たちだったということなのか?

    そう考えると、確かにセオドラも感情の振れ幅が大きすぎるように思うし。
    なにより、常に夫人に尻敷かれていたモンタギュー博士が、最後だけエレーナ自身が運転して帰るよう強く言ったのは妙だ。
    ただ、モンタギュー博士がエレーナにそれを強いたからこそ、エレーナは(エレーナ自身にとっての)救いを得ることが出来たと言えなくはない。
    しかし、それは自殺の肯定になるわけで……
    はたして、モンタギュー博士は最後の最後までエレーナに優しかったということなのか?それとも、予想もしなかった出来事なのか?
    というか、エレーナにとっては、どんな結末がハッピーだったのだろう!?
    いやはや。なんとも、ネガティブな思考に陥ってしまう小説だ(笑)


    それはそれとして、この本。実は最初、家にあったハヤカワのモダンホラーセレクションの『山荘綺談』で読み始めたのだが、どうも読みづらくて。
    ネットで見たら創元の訳の方が読みやすいとあったので、こっちを読んでみた。
    とはいえ、ホラーにハマったきっかけはハヤカワのモダンホラーセレクションなわけで。昔と比べ、いかに読解力や想像力が衰えているかということを痛感した。

  • 意外なことにオーソドックスな屋敷ものホラーの図式が踏襲される前半から次第に作者らしい妄念に囚われた人物がフォーカスされるところがなんとも恐ろしい。変なマーダーバラッドみたいなのが登場するが元ネタはあるのかな。作品の謎に言及し作者の狙いを考察した解説も面白かった。ついつい独特な空気感ばかりを強調してしまいがちだが、テクニカルな面も見逃せないのかもしれない。

  • 奇妙な噂ばかり知られる<丘の屋敷>に、研究者モンタギュー博士の一声で、三人の協力者が集められる。不気味に歪んだ屋敷が彼らの前に怪異を繰り広げるなか、ポルターガイストを経験したことで呼ばれた協力者の一人エレーナは、恐怖しながらもふしぎな安らぎを感じるようになる。

    ちょうど震災の時に図書館から借りていて、そのときは読まずに返してしまったけれど、古本を見つけたので購入。一年かそこら積んでいてようやく読了した。シャーリィ・ジャクスンは『ずっとお城で暮らしてる』(創元推理)がとても好きで、本作も面白かった。終盤失速したかと思ったけどわっという間もあっという間もなく急加速して終わる。派手なホラーではないのに心底から冷気を浴びているようなこわさがある。個人的にはエレーナとセオドラが百合っぽかったのでちょっとときめいた…。

  • スティーヴン・キングが激賞したと桜庭一樹の本にあったので、読んでみました。
    確かに…すっげぇ怖いです。
    心霊学を研究しているモンタギュー博士が、いわくつきの館「丘の屋敷」を借りて滞在し、招いた客にレポートを書いて貰おうと企画。
    招待に応じたのは対照的な女性エレーナとセオドラ二人のみ。
    館の相続人の若い男性ルークと4人で過ごす数日。
    迷路のような作りの建物で、開け放ったドアも必ず閉まってしまう。
    子供部屋にはなぜか冷気が…
    怪しげな出来事が起こる中、それでもこれまでに人は死んでいないと滞在を続ける4人。
    教授の夫人とその友人が乱入するように現れ、そして…
    「シャイニング」に影響を与えたとか。
    ホテルが舞台ではなく、理屈抜きでじわじわと…もっと女性心理に迫る感じ。
    「たたり」は最初に映画化されたときの邦題。1959年の作品。

  • ブクログさんオススメホラー、またまた読んでみました。翻訳文学のホラー、格調高すぎ。怖くないです。それらしい現象出てきますが、これは人間心理を描き出す側面の方が強いように思います。なんだか、気の毒になってしまいました。、

  • 2019/06/03-06/11

  • 終盤の、自分(主人公)の存在が希薄になり、まるで屋敷と一体化しているような描写が秀逸。
    まさかの「実は存在しないキャラ」かと思ったら、違ったので良かった。

    海外ホラーの典型「因果関係のない呪い」だったがは、最後に拍子ぬけ、というわけでもなく、大変面白く読めた。

  • 幽霊屋敷と噂される「丘の上の屋敷」の調査のために集められた男女三人。屋敷で起こる不思議な出来事や人間関係から、主人公の孤独で傷つきやすい心は少しずつ揺らぎ、そして屋敷に安らぎを覚えていく。
    じわじわと怖い作品。心理描写が丁寧で、主人公女性の心理に感情移入できるかどうかで評価が変わりそう。
    結局、心霊現象があったのかどうかはわからないけれど、居場所を求めたい弱さや周りに理解してもらえない辛さがひしひしと伝わってきて、非常に印象に残る作品。

  • どこまでが怪異でどこからが狂気なのか。
    登場人物たちの密かな弱さや無意識の狡さを触媒に、気づかぬうちに、屋敷のそこかしこに悪意が生まれる。
    本当に邪悪だったのは屋敷か、それとも。

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