- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488589028
感想・レビュー・書評
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天才エドガー・アラン・ポーとは異なる次元で、幻想文学の礎を築いた奇才H・P・ラヴクラフト。稀有なその創造力が生み出した虚構の体系「クトゥルフ神話」(クトゥルー)の世界観は、独自の魅力に満ち、「素材」としての汎用性も高いため、優劣に関わらず今現在も数多の模倣者を生んでいる。
一時期から日本でも「伝奇ホラー」という名称で浸透しマニアックな読者を掴んでいるのだが、その大半は粗悪な模造に過ぎず、未知のモノに対する人間の根源的恐怖を描く幻想文学の神髄からは随分と掛け離れた作品も多い。単なる妖怪退治と同様の漫画的ヒーロー小説が、「原点」となるラヴクラフトの世界に通じているとはいえないが、異形の文学に惚れ込んだオーガスト・ダーレスらの助力によって、曲がりなりにも数多の現代作家へと継承され、「原典」へと遡る機会を与えていることは間違いない。
「地を穿つ魔」は、経歴的にも本流に近いとされている英国の小説家ブライアン・ラムレイが、1975年にスタートした「タイタス・クロウ・サーガ」の第1弾。主人公を邪神と対決する霊能力者として設定し、一種の英雄談ともなっているようだが、本作を読む限りでは中途半端な印象だ。軸は当然ながら「クトゥルフ神話」に基づくもので、復活の兆しを見せる邪神らが西欧の地中深くから姿を現すのだが、手記などの伝聞を主体とする構成により緊張感と迫力に欠ける。
恐らくまだ序章に過ぎないのだろうが、主人公らが事情に通じているらしい素振りは見せるものの、その「特殊能力」を使って闘うことはなく、征伐隊として立ち上がった何らかの組織がどこか遠くで戦闘を繰り広げているといった展開が続き、肝心のタイタス・クロウの存在意義がさっぱり伝わってこない。さらに、実体化した「邪神」らと人間が闘うという設定そのものに無理があると述べれば元も子もないのだが、「創世記」に誕生した化身らは、いとも簡単に生身の人間によって打ち砕かれていくのである。一端は闇の中へと放り込まれたという「邪神」らは、いったい地上で何をしたかったのだろうか。
下手にリアリティを出そうとするよりも、極端に劇画調で創り上げた方が断然面白い物語になるだろう。娯楽小説に徹し「クトゥルフ神話」を積極的に組み込んでいる F・ポール・ウィルスンは、その好例であり、エッセンスを生かし切っている詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
クトゥルーの神々が暗躍しはじめ、対決していくタイタス・クロウのシリーズ。
クトゥルーを超自然的とはいえ、生物として捉えるこのシリーズ。いきなり、モンスター・ハンター的展開になってくるので、自分としてはかなりのスケール・ダウン感はある。 -
というわけでいよいよタイタス・クロウの本格的な活躍が始まり
ますよ!(笑)。
とうとう、彼と親友のド・マリニーはCCD(カメラの素子ではなく
クトゥルフ眷属邪神群の略)と対決を始め、そのための全世界的
組織、ウィルマース財団に所属することに。そして核兵器と水攻め
で低い存在とは言え旧支配者のひとつシャッド・メルに致命的な
一撃を食らわせるのだ!
うーむ。コズミックホラーと言うよりはヒロイックファンタジー
だろうか。舞台や装置としてクトゥルフ神話に登場する書物や
地名、人物などが頻出することもあり、決して読んでいて面白く
ない本では無いのだが。クトゥルフ神話群にならって手記という
方法を採用しているのがこの作品ではかえってマイナスになって
いる気がするな。ここまで突き抜けるのなら、もう開き直って
行けるところまでどんどん行って欲しい感じ。
一応続きます(笑)。 -
クトゥルーものと伝奇を組み合わせたものなんだけど、面白くないとはいわないんだけどクトゥルーらしさ見たいなのが足りない感じ。シリーズ化する予定だったみたいだけど続きが出てないところを見ると売れなかったのね。
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今なお活動するラヴクラフトフォロワーの一人、ブライアン・ラムレイの書くヒロイックサーガ。
クトゥルー神話をベースとしたこの話は、ぜひラヴクラフトの後に読んでほしい。
短編集『事件簿』の『妖蛆王』が読みやすく、オススメ。 -
クトゥルーな話。4針の時計は私も欲しい。
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一冊ずつが完結してるのかと思い購入したタイタス・クロウ・サーガ。面白かったです。
ラストで「ええっ」となりました。続きが気になります。
文体的にはラヴクラフト全集に近いものがあります。気軽に読める一冊ではないので、星を一個減らしてみました。
内容的には面白いです。 -
全体のストーリー展開はロングというよりはダーレツ的ですね。
始めはロングの「アーカム計画」をイメージしていましたが、顛末的には全然違いました。
えらく灰色決着という感じですが…続巻してると考えるならいいかな。
邪神vs人間ってのは結構陳腐に見えがちなんですが、ド・マリニーの手記的な話のもって行きかたは好みだったので、それなりに楽しく読めました。
…んー…正直短編の方が面白いですね。
ラヴクラフトもそうなんですが、気の利いたオチがすとんとあって、それによって絶望に突き落とされる感じが好きなんで。長編だと一言のオチまでが長すぎて難しくなっちゃってたりするもんですよね。
ラムレイ氏の小説は日本語に翻訳されていない話も多いと聞きます。一刻も早く、続きが日本語版になることを望みます。
内容についてはですねー。これだけは言わせて頂きたい。
…ウィルマート氏は財団設立させる位何かを得ていたということはないのではないでしょうか…?
…いや、狂気の山脈は未読なんでなんとも言えませんが、それでも狂気の山脈は確か古のもの乃至ショゴスの話では…なかったかなー…曖昧だなー…
闇に囁くものはミ=ゴの話ですしー…封印された邪神たちそのものには触れてないんじゃー…?いや、わかんない。どうなんだろう。
個人的には、もっとーこう…なまじ頭が良い人だったからこそ「人は知らなくてもいいこともある」って思って何もかも隠蔽とかしそうな根暗な性格な人だとばっかり思ってました。
…ん。いや、否定はしてないんですがね。いいと思います。設定は。好きだし、ウィルマートさん。
ただ、やっぱり人によってキャラクターの印象って違うもんなんだなーって。
最後に、タイタス・クロウ サーガを読むにあたって、読んでおいた方が楽しめるんじゃないかなーと思える短編名をメモ。
「銀の鍵の門を越えて」
「時間からの影」
「闇に囁くもの」乃至「狂気の山脈」
ここら辺読んでおけば登場人物に対する「お前誰だよ」的な突っ込み乃至不信感は拭えるかと。
ちなみに、私は時間からの影を未読なために最後までピースリーが怪しい人物にしか見えませんでした(笑)
どんな人物でも怪しんでしまうのは悪い癖です。 -
低級旧支配者群を、人間の知恵と勇気で殲滅していくという凄い話です。
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エエーッていう終わり方。タイタス先生あんま役にたってな…い!