ネクロスコープ 下 (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488589097

作品紹介・あらすじ

死体そのものから情報や記憶を奪取する死骸検術(ネクロマンシー)を扱うソ連の特殊工作員ドラゴサニは、更なる力を手にするため祖国ルーマニアへ赴き、異形の存在から吸血鬼族(ヴァムフィアリ)の秘密を探り出そうと目論む。そしてイギリスでは、死者の魂と交流することでその能力を身に宿す死霊見師(ネクロスコープ)として覚醒したキーオウが、若くして死んだ母の霊からその死の真相を聞き出し、己の能力を用いて復讐を遂げる決意を固めていた。それぞれの野心と悲願は、やがて英国やソ連の超常能力を用いた情報戦の局面を大きく左右するまでに膨らんでゆく。巨匠ラムレイ渾身の傑作。

感想・レビュー・書評

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  • クトゥルフ神話大系で火星シリーズを展開した(個人的私的見解(笑))タイタス・クロウ・サーガの著者、先頃逝去したブライアン・ラムレイ追悼の意を込めて、このネクロスコープ上下巻を読んだ。

    善玉と悪玉、二人の主人公の話が交互に展開する。悪側は遺体に触れそれを壊すことによって死者の記憶や能力を手に入れる死骸検師(ネクロマンサー)。善側は死んだ人間と会話しその知識や能力を受け継ぐことの出来る死霊見師(ネクロスコープ)。物語の三分の二くらいは二人の人物像を描く言わば助走段階で、これで物語が終わるのか心配になるほどのゆったりとしたペースで進むのだが、一旦ジャンプしてしまうと驚きのチェンジ・オブ・ペース、善側の主人公の能力が単なる死者と会話することから、あれよあれよという間に全能ともチートとも言えそうな強力なものになり、一気呵成にクライマックスに突き進んで瞬時にすべてを畳んでしまう。その様は、なるほどブライアン・ラムレイらしいといえばらしい感じで納得であったし、正直それを楽しんでいる自分がいたのでした。さらにこのシリーズ、全16巻にもなるという大河になってしまうというのだからラムレイ恐るべし、である。いつか日本語で読めますように(祈)。

  • ・ブライアン・ラムレイ「ネクロスコープ 死霊見師ハリー・キーオウ」(創元推理文庫)を読んだ。上下あはせて700頁超、結構な長さである。この作品、「一九八六年に発表された、新生ラムレイの第四作、『ネクロスコープ』こそ、ラムレイが専業作家としての地位を確立した最初の傑作なのだ。」(宮脇孝雄「解説」下374~375頁)といふ。ラムレイは「一九六八年にラヴクラフト風の短篇『深海の罠』でデビューした」(同372頁)さうであるから、この時点で既に相当のキャリアがある。ただし、それは副業であつて、作家を本業としてはゐなかつた。 自作年譜に、作家活動を「これまで楽しみのために(そして、ほんの少しの収入のために)やってきたこと」(同374頁)とあるといふ。それが一九八〇年に 陸軍を辞めて専業作家となつた。その第1作長篇は売れなかつたらしい。第4作に至つて売れた。本書である。ラムレイはクトゥルーといふ図式が私の頭の中にあるので、この第4作をそれほどの作品だとは思へない。クトゥルーらしきものはあるかと思ひつつ読んだけれど、遂にそれはみつからなかつた。まだクトゥルーを書いてゐなかつたのか、あるいは書いてゐたけれど本作で触れなかつたのか、これは私には分からない。作家たる者、いくつかのシリーズ等を持つてゐるはずである。そのいくつかの1つが本作だと言へるのであらう。さう、本作はシリーズ第1作となつた。「発表当初には誰も予想しなかったことだが、このシ リーズは全五巻でいったん終了したかに見えたものの云々」(同377頁)といふわけで、結局「全十六巻プラス中短篇の大河シリーズに成長し」(同前)たさうである。そんなになる魅力があつたのであらう。私にはよく分からない。
    ・本作の内容をかいつまんで言へば、東西冷戦下における死霊諜報合戦とでもなるだらう。この死霊といふところがネクロスコープにつながるのだが、これは主人公キーオウについてのこと、つまり西側である。では東はといふと、それがボリス・ドラゴサニである。ソ連の心霊的諜報機関のナンバー2に当たる人物であらうか。この二人が最後に対決するのである。その結果は、当然、正義は勝つ、つまり西側の諜報機関のキーオウが勝つのである。ただしこのドラゴサニ、そん なやわな者ではなささうである。名前に注目していただきたい。ドラで始まる。このドラ、ドラゴンのドラではなくドラキュラのドラであるらしい。つまり、吸血鬼の血をひくのがドラゴサニであつた。「ネクロスコープ」は見方を変へれば吸血鬼譚になるのである。どちらかといふと、こちらの筋で始まり、以下もこちらの筋が多い。だから、私などはこれは吸血鬼譚かと思つてしまふのだが、どうなのだらう、吸血鬼譚なのであらうか。「吸血鬼というのは、実は、当時のホ ラーのトレンドで」(同375頁)とある。だから、単純に吸血鬼を取り込んだだけかもしれない。しかし、ドラゴサニは〈父〉からネクロマンサー、死骸見師の力があることを教へられ、ヴァムフィアリ族のことを教へられる。ヴァムフィアリといふのはどうやら普通のヴァンパイアとは違ふやうで、「シャイターンそのものがそもそもヴァムフィアリなのだよ」(上240頁)とある。シャイターンは魔王サタンであるらしい。ラムレイそんな神話まで用意してこの物語を作つ たのである。しかし、この東西冷戦の様が私にはおもしろくない。緊迫感がない。ここは本筋ではないのかもしれない。しかし、ここがおもしろくなくなつたら 物語が成り立たないのではと思つたりする。二人が出会ふまでの物語、これが巻一といふものであらうか。物語は続くのである。

  • もう何でもアリじゃん!クトルゥフものってこんな感じなの?

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