- Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488599041
作品紹介・あらすじ
領主の娘ワーシャは、精霊を見る力をもつ変わった少女だった。だが生母が亡くなり、新しい母がやってきたことで、彼女の運命は一変した。継母は精霊を悪魔と言って嫌ったのだ。さらに都から来た神父が村人の精霊信仰を禁じたため、人々を悪しきものから守っていた精霊たちの力が弱くなってしまった。ある冬、村を寒さと夜の魔物が襲った。ワーシャ精霊を助け、魔物と戦うが……。自由に生きようとする少女の闘いを描く、三部作開幕。
感想・レビュー・書評
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14世紀半ばロシアで、北の豊かな領主の娘として産まれたワーシャ(ワシリーサ)には祖母の精霊を見る力が受け継がれていた。しかし、時代はキリスト教に変わり、新しい美しい司祭によって精霊達の力は衰え、熊と呼称される、まがまがしい力が復活しそうになる。熊と冬の王マロースカ(死の神カラチェン)は兄弟で、マロースカは恐ろしい力を持つものの、人に害はなさない存在。後半、ワーシャは力を復活させたいメドベード(熊)に狙われるが…というところが、この本の概要。昔話の要素を多く取り込み、重厚なフォンタジーだった。そして、長い。三部作なのだけど、この本だけで本編474ページ!こういう民俗的要素取り込んだファンタジータイプの本が好みで、急いで読まなくてゆっくり楽しむ人にオススメします。私は嫌いじゃないけどね、眠くなりやすいのが難。金原瑞人訳だし、続きも読むよ~。しかし、女は健康な子どもを産むのと、家のことやるのが仕事の時代に生まれなくてよかったよ。あと、小夜鳴鳥(ナイチンゲール)なのに馬だったりとか、その辺りの読みなれてる人には多分当たり前の展開が、読みにくさ倍増させてるかもしれません。
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人ではない者を見る少女はその性質も普通ではなかった。少女らしさのない子供。扱いにくい子供 等々。
自然とともにある聖霊は八百万の神々に共通するところがあるような気がする。厳しい自然を生き抜くには神様は一人では足りないのかもしれない。
そして、少女は成長する…… -
図書館で。
骨太ファンタジー。というか、ファンタジーというよりはロシア昔話、と言うような感じかも。絵師さんに思うところは何もないけれども、表紙のヒロイン像は合わないな。ライトさは全くなく、読んでいて「氷と炎の歌」の最初の方みたいだなと思いました。日々の生活が大変で、寒かったり、人が痩せたり生活に苦しむ辺りが。
読んでいて思ったのですが、人は知らない事を恐れたり、嫌う生き物なんだなと思いました。神父は土着の信仰をキリストの教えで上書きしようとする訳ですが、そこには彼の虚栄心や慢心も確かにあるけれども信仰心と人を救いたいという気持ちもあるわけで。新しいものを正とした際、どうしても間違っている、悪であるとされるものや人、価値観や過去と言うものが出てきてしまうんだな、と読んでいて思いました。
頑なに魔除けをワーシャに渡さない乳母も、普通の女性に求められていることに対応出来なそうなワーシャが苦労するだろうことは目に見えていても、あえて嫁に出そうとする父親もです。どんなに彼女が自分たちと考え方や生き方が違ったとしても、持て余していても、知らない世界に送り出すよりは、自分たちが知る世界の方が良いだろうと本気で思っている訳で。彼らは彼女を愛しているし、そこには悪意はないのだろうけれども「知らない」世界よりは、自分の知っている世界の方が長い目で見ればそこに属していた方が良いだろう、という価値観はなかなかに変えられないものなんだろうなぁなんて思いました。
第二部も楽しみです。 -
中世ルーシ世界についてよく調べられているな、とは思うが、人に限らず登場人物が軒並み魅力に欠け、また作品世界も陰鬱さや生活の苦しさばかりが描かれて楽しさに乏しかった。好きな文化圏の話なので続きが出たら買うだろうが…
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物語が動くのが後半からで、それまでは伏線だったり説明だったりが続くのだが面白くなるまでがとにかく長い。(3部作というから仕方ないっちゃ仕方ないが…)
主人公がテンプレみたいに冷遇されてばかりでもうそれでお腹いっぱいになってしまった。
続きを読むかどうかは他にも読みたいものがあるのでちょっと悩む…。 -
第1部
精霊たちの姿を見、会話することができる娘ワーシャが、異端視され魔女と迫害されても自分の世界を信じて困難に立ち向かっていく。ロシア版 精霊の守り人…?
ヒロインのワーシャは美しくない、醜いと形容されるが、美しい緑の瞳と赤みを帯びて輝く黒髪を持ち、その強さと勇敢さで人の心を惹きつける。 これからどんな苛酷な運命が待ち受けているのだろう。
可愛い表紙イラストからしてライトなファンタジーかと思いきや、意外にも重厚なストーリーでかなり読み応えがある。 中世ロシアの陰鬱な農村の暮らし、厳しい寒さと飢え、そして民間信仰などが丁寧に描かれ、なかなかページは進まない…。華々しい冒険活劇というわけでもなく、クスッと笑えるようなユーモアもなく、決して読みやすい物語ではないのだが、登場人物それぞれの心の機微の描き方に深みがあるのは訳者が金原瑞人さんだから? (しかし、ロシア人名は愛称が何通りもあるので慣れていないと時々混乱する。)