時の娘 ロマンティック時間SF傑作選 (創元SF文庫) (創元SF文庫 ン 6-3)
- 東京創元社 (2009年10月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488715038
作品紹介・あらすじ
時という、越えることのできない絶対的な壁。これに挑むことを夢見てタイム・トラヴェルというアイデアが現れて一世紀以上が過ぎた。時間SFはことのほかロマンスと相性がよく傑作秀作が数多く生まれている。本集にはこのジャンルの定番作家といえるフィニイ、ヤングらの心温まる恋の物語から作品の仕掛けに技巧を凝らした傑作まで名手たちの9編を収録。本邦初訳作3編を含む。
感想・レビュー・書評
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タイムトラベルものの短編集。
往年の名作ばかりで、タイプの違うものを取り揃えてあります。
SFにしてはかなり読みやすい方。
ロマンチックなのがやっぱり好きかな。
これは日本人の特性らしい?
「夏への扉」や「たんぽぽ娘」がオールタイムベストにいまだに入るのは日本だけだそう。
「チャリティのことづて」ウィリアム・M・リー
1700年のマサチューセッツ。
11歳の女の子チャリティは熱にうなされ、不思議な光景におびえる。250年後に同じ土地で、高熱を出したピーターと、互いに見ているものが繋がったのだ。
魔女狩りにあいそうになったチャリティに知恵を貸すピーター。
そして‥?
「むかしをいまに」デーモン・ナイト
人生をさかのぼっていく男サリヴァン。
彼だけではなく、この世界ではそういうことになっているという設定?
どうやら死んだところから始まり、長い結婚生活の後に出会いがあり、出会う前の孤独がやってくる。
技巧的な小説ですが、なくなった母親が生きているのと出会う喜びで締めくくられるのが感動的。
「台詞指導」ジャック・フィニイ
若くて美しい映画女優ジェシカと列車に同乗することになった台詞指導係ジェイク。
実はジェシカには役に必要な経験も演技力もなく、撮影が困難なのは目に見えていた。
今はない古いバスを撮影に使うことになり、深夜に衣装を着て、試運転に乗り出す。台詞指導係も車掌の服で。
ジェシカはそのとき出会った男性に一目ぼれされるが、実はバスは過去の時代に入り込んでいた。
そして撮影当日‥?!
「かえりみれば」ウィルマー・H・シラス
ミセス・トッキンが30歳のとき、15歳にさかのぼってしまったという話。
もっとうまくやれたのにと教授に話したことがきっかけだったが。
15歳のときの学校の勉強が意外に大変で、すっかり忘れているため大変な目に遭う。
一週間の出来事だったが‥
「時のいたみ」バート・K・ファイラー
妻のサリーのもとに10年をさかのぼってきたフレッチャー。
36際にしては急にふけてしまったが手当をして身体も鍛え、おかしくはないぐらいになる。
妻の危機を助けるために戻ったのだと気づくが‥?
「時が新しかったころ」ロバート・F・ヤング
白亜紀後期にタイムトラベルして調査にやってきたカーペンター。
トリケラトプスに見えるトリケラタンクに乗っている。
子供が二人いるのに気づいて仰天。誘拐されたという姉マーシーと弟スキップは、その時代の火星人だという。
当時の火星は生物が住める環境で、文明が非常に進んでいたというのだ。
子供らを守りながら恐竜と誘拐犯と戦い、出来るものならカーペンターのいる時代に連れて行きたいと思いながら、やむなく別れを覚悟する。
ところが‥?
これが好き~!
「時の娘」チャールズ・L・ハーネス
三人の男を愛したと語り始める女性。
その母親は、未来を予言する能力がある占い師として富豪になった。
娘はそんな母を嫌っていたが、新聞の見出しをひたすら暗記するという妙な教育を受けていた。
行方不明の父親の事を聞いたところ‥
原題は「クロノスの子供」といった意味で、クロノスは時の神。
「出会いのとき巡りきて」C・L・ムーア
ありとあらゆる冒険をして生きてきた荒っぽい男エリック。
時間旅行を発明したというダウ博士の提案に乗り、時間旅行に出る。
スモークブルーの瞳をした印象的な美女に、さまざまな時代でめぐり合うことになった。
同一人物というわけではなく、生まれ変わり‥?
そして‥
「インキーに詫びる」R・M・グリーン・ジュニア
失った音楽的才能を捜し求めて、過去へ旅をするウォルトン。
過去の自分と出会うことが可能らしい設定。
うまくいかなかった恋人モイラも絡み合って登場する。
ちょっとジョナサン・キャロルを連想する酩酊感で、目まいがします。こういうのをキャロルは好きだったのかな。
とても良い企画だと思うけど、ただ「時の娘」というタイトルはいただけない。ジョセフィン・テイの名作に乗っかり過ぎ!あれはSFじゃないし~
原題はこう訳さなければならないタイトルではないしね。
とはいえ、ツボにはまりました!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
タイムトラベルを扱った中短編集で、
表題作は有名なミステリ小説とは無関係。
収録9編の初出は1930年代後半から
1970年(を少し過ぎるくらい)までだそうで、
いずれも古きよき強く優しく懐の深いアメリカのイメージが
横溢している。
編者のセンスのなせる業とはいえ、
やはり、いい時代だったんだろうなぁ……と、
しみじみ。
以下、特にハートを鷲掴みにされた作品について。
■ウィリアム・M・リー「チャリティのことづて」
同じ町に住む現代(1965年)の少年と、
265年前(1700年)の少女の心の交流。
二人は厚い時間の壁に隔てられ、
決して触れ合うことはできない。
ムズムズするほど奥床しくてチャーミングな
ロマンティックSF!
■ジャック・フィニイ「台詞指導」
1960年代、ニューヨークで
40年前の禁酒法時代の映画を撮影するチームが
往時のスタイルの大道具・小道具を集めて
準備していたら時間の捩じれが起きて、
40年前のニューヨーカーたちと接触、
その中の一人は……という、
フィニイらしい、優しさと残酷さが詰まった切ない佳品。
原題"double take"の意味は
意外な物事を見過ごし、または聞き流した後で
気がついてハッと驚くこと。
まさにソレ!
■ロバート・F・ヤング「時が新しかったころ」
タイムマシンで白亜紀を調査するカーペンターは、
誘拐犯の手から逃れた火星人の姉弟
マーシーとスキップを助ける。
長大な距離と時間を超えて成就した純愛に
不覚にも落涙(!)。
■ロバート・M・グリーン・ジュニア
「インキーに詫びる」
音楽評論家ウォルトン・アスターは
少年時代の愛犬インキーの死の真相や
その他の真実を知るため、過去へ遡ったが……。
覆面作家(正体不明)の技巧的な一品。 -
ロマンティック時間SF傑作選として、9編収録されている。
『ビブリオ古書堂の事件手帳3』にあった『たんぽぽ娘』を探していて手にとった本書。
おもしろい作品があった。
ロバート・F・ヤング『時が新しかったころ』
『たんぽぽ娘』の作者。この作品もおもしろい。
ロマンティックです。タイムトラベルです。
カーペンターは過去にさかのぼり白亜紀後期の研究をしている時に大火星からやってきた姉弟を助けることになった。
追ってから姉弟を助けた先の別れには…
時を越え、文明も超えてのめぐり逢いに心響く。
『たんぽぽ娘』を俄然読みたくなった。
チャールズ・L・ハーネス『時の娘』
表題作品。
母は未来を予言できる富豪。
そんな母を嫌う娘。
母が愛した3人目の人を娘も慕うようになり…
よくあるタイムトラベルものかと思いきや…結末はおもしろい。
C・L・ムーア『出会いのとき巡りきて』
エリックは波乱万丈の人生を過ごしてきた30歳。
何かが満ち足りない日々を過ごしている中、ウォルター・ダウという科学者に会い、後戻りできない時の旅へ出かけることを決意する…
過去と未来を行きつ戻りつのすれ違いに感情をくすぐられた。
もともと『時』に関する小説が好きです。
うーんとなる作品もあったのですが、取り上げた3つに出会えただけでも満足。
なんか王道的作品をじっくりと読破したくなりました。-
「夏への扉」でタイムトラベルにのめり込んだ私も、
「時」をテーマにした本に目がないのです!
これは読まずにいられません♪
「夏への扉」の他...「夏への扉」でタイムトラベルにのめり込んだ私も、
「時」をテーマにした本に目がないのです!
これは読まずにいられません♪
「夏への扉」の他、「ゲイルズバーグの春を愛す」とか、
日本の作家さんなら「この胸いっぱいの愛を」とかが好きですが
desicoさんも読まれましたか?(*^_^*)
2012/07/09 -
「夏の扉」も「ゲイルズバーグの春を愛す」、「この胸いっぱいの愛を」すべて読んでない ^^;
チェックしよ!「夏の扉」も「ゲイルズバーグの春を愛す」、「この胸いっぱいの愛を」すべて読んでない ^^;
チェックしよ!2012/07/09
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すごく当たりだった。
時間SFは、切ない感じがそもそも好きなのだが、そんな話が集められててもうもう、満足です。
『時を駆ける少女』とか好きな方にはおすすめ。
『時が新しかったころ』(ヤング)がとても好き。
ベタなんだけど。こういう関係が好き。
ハッピーエンドじゃないのもあります。ビターな感じの。それもまたあっけないような儚い感じが綺麗です。
越えられない時間という壁があるからこその意外性、諦念、切実さなんでしょうか。-
「すごく当たりだった。」
望んでも夢に見ても、どうにもならないから憧れが強くなるのかなぁ、、、と甘ったるく感じているのですが、とっても素敵で...「すごく当たりだった。」
望んでも夢に見ても、どうにもならないから憧れが強くなるのかなぁ、、、と甘ったるく感じているのですが、とっても素敵です。
甲乙付けがたいですが、敢えて選ぶとすれば、私はフィニイの「台詞指導」です。。。2013/01/16
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何のために時を超えるのか
それはもう一度、会いたい人がいるから
とするとまあ、タイムトラベルと恋愛ものと相性がいいのは当然なのかもしれません。
表題作の『時の娘』がすごい。最後の展開に、ぞっとするようなそれでいて爽快感があります。
一番好きだったのは『時が新しかったころ』ですね。伏線なんてもんじゃない。時間と空間を超える壮大な愛。
『出会いのとき巡りて』は、本当に魂の形で何度でも出会う話。見つめ合えばそれで分かる。最高。
短いお話もあれば、中編クラスの少し長めのものもあります。
SFが好きな方にはとてもおすすめです! -
『A Message from Charity』/『チャリティからのメッセージ』/william M.Lee
『Backward,0 Time』/『むかしをいまに』/Damon Knight
『Double Take』/『台詞指導』/Jack Finney
『Backward,Turn Backward』/『かえりみれば』/Wilmar H.Shiras
『Backtracked』/『時のいたみ』/Burt K.Filer
『When Time Was New』/『時が新しかったころ』/Robert F.young
『Chiled by Chronos』/『時の娘』/Charles L.Harness
『Tryst in Time』/『出会いのとき巡りきて』/C.L.Moore
『Apology to Inky』/『インキーに詫びる』/Robert M.Green,Jr.
題名通り恋愛を絡めた時間SF
というより時間という距離を味付けにした恋愛短編集
SFという意味であまり期待してはいけない
『たんぽぽ娘』のRobert F.youngが象徴的か
上から順に
・少年少女の淡い恋 意味は違うけどメルヘンな感じで微笑ましい読後感にごまかされた魔女狩りが暗い ★*3
・逆回しものの典型 丁寧な描写で水準作 ★*4
・思い入れない日本人からすれば全体に描写を削った方が良いとは思うが小説としてはこの本で一番上手いか ★*3
・軽い法螺話 引き際が上手くまとまり良い良作 ★*4
・いかにもな短編 大人な苦さに対して純愛とやらを一緒に飲み下すと消化不良な気がする ★*3
・訳者解説にあるように『夏への扉』『たんぽぽ娘』をとても好む層がいるようだがよくわからない ★*3
・タイムバラドックスものはパズルゲーム過ぎて物語にならないと思う ★*3
・男の浪漫みたいな印象だが女性作家作らしい 障害があることに燃えるのであって恋愛対象はどうでもいいらしい ★*3
・はいはい高踏高踏 ★なし
総じて恋愛ものに興味がないのであまり楽しめなかったということか
この作者の他作品も読んでみたいと思うものはなかった -
海外の時間SFの短編を9編収録したアンソロジー。
時間を越えた恋愛などの王道のものから、タイムパラドックスを使った技巧的なものまで幅広くあります。でも個人的には恋愛系のものの方が面白いのが多かったかな。
一番印象的だったのはロバート・F・ヤングの「時が新しかったころ」。この作品は長編化されていて、僕はすでに長編版を読んでいたのですが、改めて読むとやっぱり面白いし、ロマンティック! タイムスリップというテーマに加え、舞台となる時代が白亜紀なので恐竜が登場し、さらには宇宙人が登場し、その宇宙人を追う悪人が登場し…、と非常に贅沢な設定をたくさん使いながらもそれらが上手く収束し最後のロマンティックな結末につながります。物語の骨格がこれほどしっかりしている作品ってそうそうないんじゃないかな、と思います。
そのほかの恋愛系では「チャリティのことづて」「出会いのとき巡りきて」前者は時代を超えてテレパシーでつながりあった男女の物語、後者は生まれ変わりがテーマとなり、どちらも王道の展開で安心して読めます。
ちょっと変わったところでは表題作「時の娘」は、母娘のドロドロとした恋愛の争いがタイムパラドックスと結びついていく秀作です。
「かえりみれば」はだれでも一度は想像したことがある、「あのころから人生をやり直せたら」という願望がちょっとユーモアと皮肉交じりに捉えた短編でこちらも面白かったです。
恋愛とはいかにタイミングが重要か、そして恋愛において時間はいかに残酷か教えてくれるジャック・フィニィの「台詞指導」も「時が新しかったころ」と同じくらいこのアンソロジーの中では気に入っています。今、告白しようか、もしくはプロポーズしようか迷ったりしている人、また告白、プロポーズされるのを待っているすべての人のこの短編を強くおススメしたいです! -
ほんとにロマンティック!だいたい私は形而上学的なのとかディストピアとか救いのない話を好む傾向があり、しかしそれに後ろめたさも感じているというめんどくさい系なので…やはりロマンティックなのも知らねばならぬ!という気持ちで。うーん、だだ甘~。私は好きじゃないけど、こういうのが好きな人が多いのは良くわかる、みたいな。無理矢理好きなのを選ぶなら<かえりみれば>と<時の娘>。時の娘、結局時間を一回りして憎悪を繰り返さねばならぬ感じがとても好き。ロマンティック研究は諦めよう。
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色々な作家の時間SFが9作集められている短編集。
「ビブリオ古書堂の事件手帳3」の「たんぽぽ娘」を探していて行き当たった本です。この本には当の「たんぽぽ娘」は載っていないのですが、ロバート・F・ヤングの別の作品が掲載されています。
私はSFにそれほど精通している訳ではないのですけど、時間SFっていうジャンルは好き。ロマンティックなお話しは特に。
今回の9作品のうち、ロバート・F・ヤング以外の作家さんは、聞いた事もなかったのですが、「ロマンティック時間SF傑作選」と名づけられているだけあって、どの作品も「時間」を軸としたロマンティックなお話しで、なかなか楽しめました。
ただ、ちょっと言い回しとか、取っつきにくい作品もあったかな。
9作の中では、
ウィリアム・M・リー 「チャリティのことづて」
ウィルマー・H・シラス 「かえりみれば」
ロバート・F・ヤング 「時が新しかったころ」
が良かったです。 -
タイトル通り、時間がテーマのロマンティックなSF短編を集めた本。
もう!もう!
「時が新しかったころ」(ロバート・F・ヤング)が最高!!
好みど真ん中で、めちゃくちゃキュートで温かくて、ラストは足をじたばたさせたかったくらい。
大好き!
「台詞指導」(ジャック・フィニィ)も胸がしびれた。
様々な色の小説が選ばれているので、好みかどうかはそれぞれ分かれるが、それは別にしてどれも上質なのは間違いなし。-
「もう!もう!」
時間が絡むだけで、こんなに素敵な話が生まれるんだと、ジンワリした気持ちになっています。
第2弾「時を生きる種族」は読ま...「もう!もう!」
時間が絡むだけで、こんなに素敵な話が生まれるんだと、ジンワリした気持ちになっています。
第2弾「時を生きる種族」は読まれましたか?それから早川書房の「ここがウィネトカなら、きみはジュディ」も。。。2014/04/30 -
>nyancomaruさん
おすすめありがとうございます、嬉しいです!
どちらも未読です、読みたいリストに入れました^v^
他のレビュ...>nyancomaruさん
おすすめありがとうございます、嬉しいです!
どちらも未読です、読みたいリストに入れました^v^
他のレビューへのコメントもありがとうございます、とても嬉しく拝読しました。
くまのプーさんは、ケストナーとともに持って行ったうちの20冊の内の1冊です♪2014/05/01
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