- Amazon.co.jp ・本 (327ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488764012
作品紹介・あらすじ
【「本の雑誌」2014年SFベスト第1位】
二つの月が浮かぶ世界で、危険な”霧”の大河に初めての橋を架けようとする人々の苦闘と絆を描いてヒューゴー賞とネビュラ賞をダブル受賞した表題作をはじめ、世界幻想文学大賞など数々の賞に輝く傑作11編を厳選収録。不思議に満ちたこの世界での出会いと別れ、そして孤独と愛を、現代アメリカSF界きっての名手が鮮やかに描く。感動の幻想SF短編集、待望の文庫化。
感想・レビュー・書評
-
「26モンキーズ、そして時の裂け目」「スパー」「水の名前」「噛みつき猫」「シュレーディンガーの娼館」「陳亭、死者の国」「蜜蜂の川の流れる先で」「ストーリー・キット」「ポニー」「霧に橋を架ける」「《変化》後のノース・パークで犬たちが進化させるトリックスターの物語」の11篇収録。
SFというよりファンタジー。「世界がいかに不思議と不条理に満ちているか、それらを鼻先につきつけられた人間はどうするかを書く作家」(解説)。独特の作風で、ちょっと読みにくかった。
「蜜蜂の川の流れる先で」と「霧に橋を架ける」が印象的だった。大量に発生し川状に流れていく "蜜蜂の大群" 、危険いっぱいの "霧" の川。現実にはあり得ない川の存在が、作品全体に奇妙で不思議な雰囲気を醸し出している。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「先駆者となるには、橋となれ」
表題作「霧に橋を架ける」は、お仕事小説であるが、とても幻想的で暗示的であるにも関わらず、読後感は爽やか。
その他に短編が10話。
それぞれ個性的で好き嫌いがわかれるところだろう。
お気に入りは、
「水の名前」「噛みつき猫」「蜜蜂の川の流れる先で」……
人はこの世界の何もかもを知っていると、自惚れている。
そのくせ理解できないものは信じようとしない。
でも、確かにそれはいる。ヒトの理解の外に……。
読んでいて、ふと、感じることがある。 -
本屋でカバー買い.ヒューゴー賞,ネビュラ賞,世界幻想文学大賞受賞,というカバーの文句は伊達ではなく,とても良い本に巡り会えたと思う.
SFと思って読むと間違いで,むしろ,南米の作家の書く小説の,奇妙な風合いに似たところがあって,変な設定を舞台にしているところは確かにSFといえるのかもしれないのだが,その設定を「そういうものである」という前提で物語が紡がれており,何か解決や注釈が与えられることはない.
その舞台に登場する人物達が,その設定に巻き込まれる(決して右往左往する訳ではないが.何しろ,元からそういう世界で,急にそこに放り込まれた訳ではないのでなので)様が描かれている. -
帯に惹かれて購入。この頃はネビュラ・ヒューゴダブル受賞って結構珍しくなくなったのかなぁ。
とりあえず色々取り揃えてますよ、という短編集。面白かったです。
「26モンキーズ、そして時の裂け目」
なんかやられた、って感じの最後。うん、いいねぇ。最後のお客さんが良い。カラッポになった後のバスタブが揺れる場面とか視覚的に訴えてくる感じがやけにリアル。それにしても猿が26匹。確かに獣臭そう。
「スパー」
エロくないエロ(笑)でも極限状態で人間何もする事が無いと何をしてるんだろう?とかちょっと考えてしまう。思考の海に潜るってのも生理的欲求なんだろうか、とか考えてしまった。
「水の名前」
ふんわり不思議。誰とでもどこでもつながれる携帯機器の発達のおかげで生まれたちょっとしたおとぎ話、みたいな。なんか都市伝説みたいな不思議なお話。
「噛みつき猫」
ウチの姉もものすごい噛みつき猫飼ってるけどそうか、アレは怪獣だったのか。この子のネコと違って姉の猫は腕に穴があくレベル。猫の牙の毒(というか口内雑菌)は侮れないらしい。
「シュレディンガーの娼館(キャットハウス)」
ハイセンスなギャグ、という感じ。色々なハザマで居るんだか居ないんだかという空間で出会う。きっと物凄い魅力的なモノが存在してるのかな。
「陳亭、死者の国」
中国昔話とか訓話にありそう。それにしても金もない死にかけの老人に何で若い女性が連れ添っていたんだろうか、という素朴な疑問が残る。
「蜜蜂の川の流れる先で」
死にかけの相棒と共にミツバチの川をたどる。ファンタジー色の強い作品。痛みや病気の無い国に老いた動物は連れて行ってあげたいな、と切実に思う。
「ストーリー・キット」
作家さんって作品をこういう風に作るのかなぁ。
「ポニー」
少女は可愛くて綺麗で甘ったるい感じがするけれども結構エグイ(笑)本当にきれいでカワイイものを可愛いまま愛しているのは実は男性の方かもしれないなんて思わせる作品。
「霧に橋を架ける」
表題作。いいなぁ、これ。
職人が自分の仕事に誇りを持って打ち込めるって素晴らしい。その為に事故があり、環境が変わり、人は変わる。良いことばかりではないけれども(勿論)でも作ることに誇りを持てる何かを創造するって素敵だなぁ。橋がかかりあれほど強大だと思った恐れる何かが小さく見える所に悲しみを覚えるところが特に好き。イメージ的に何故か黄昏色のお話。
「《変化》後のノース・パークで犬たちが進化させるトリックスターの物語」
う~ん。動物の安易な擬人化には私もソレは違うんじゃない、と思う方だけどこんな感じになるかなぁ?と首を傾げてしまう。人間は人間の子どもが自分よりも賢くなったからといって家から追い出したりはしないじゃない?(煙たがるかもしれないけど)後、猫ってもう少しズボラでいい加減だから多分もう少し民家の周囲をグルグルしてエサとかもらってるような気がする。
言語を操れる知性と今現状でのサバイバルは違うと思うので今現在でも大分頭の良いペット達がさらに賢く立ち回る事になる気がするんだけどどうかなぁ。
少し前に野生動物が人間の居住区域で繁栄しているという番組を見たばかりなので環境に適応できる種はもう少したくましく、したたかに生き延びていくような気がするし、そうあってほしい。
というわけで全短編物凄い良いなぁって感じでは無いけど面白かったです。他の作品も読んでみたい。後書きにもあったけれども喪失とかなんとなく物がなしいイメージがある作品が多い気がしました。斜陽、というか。 -
作者の創造力のたくましさはわかるんです。でも好きか嫌いかでいえば、どうも苦手な内容でした。
-
面白かったです。SFですが、ファンタジー感もある世界でした。「霧に橋を架ける」での、霧や「でかいの」の不穏さと、橋を架ける事業の…なんと表現したらいいのか、漂う無常感を感じました。橋が完成した後の世界がより良くなるとあまり思えなかったからかな。。でも1番好きなお話でした。「蜜蜂の川の流れる先で」「《変化》後のノースパークで犬たちが進化させるトリックスターの物語」は犬好きにはちょっと辛いものがありました。でも不思議で良かったです。他の作品も読んでみたいです。
-
2017年1月10日読了