- Amazon.co.jp ・本 (283ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488803025
作品紹介・あらすじ
築21年の三階建て一軒家を購入し、一階部分を店舗用に改築。美容師の美保理にとって、これから夫の譲と暮らすこの家は、夢としあわせの象徴だった。朝、店先を通りかかった女性に「ここが『不幸の家』だって呼ばれているのを知っていて買われたの?」と言われるまでは――。わたしが不幸かどうかを決めるのは、他人ではない。『不幸の家』で自らのしあわせについて考えることになった五つの家族をふっくらと描く、傑作連作小説。
感想・レビュー・書評
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「さいはての家」を読んで、こういう設定の小説初めて読んだ、と思っていたら、次に読んだ本作の設定もほぼ同じでびっくり。
1軒の家が舞台の連作短篇集。章によって住む人が変わって、そして最後につながっていく。
うつくしが丘という住宅街にある3階建ての一軒家。中古住宅のそこを購入し、美容室兼住宅として改装して住み始めた夫婦の物語からスタートする。
隣家に住むのは宮本さんという上品な老女。家と家のあいだに、立派な枇杷の木があった。
隣家の宮本さん、そして枇杷の木がこの短篇集の鍵となる。第1章と最終章がつながり、その間の3つの章もまたその2つをつなげるためのヒントがたくさん散りばめられている。
ミステリではないけど、謎解きっぽくも読める。章の時系列もバラバラなので。
私も中古の借家に何軒か住んだことがあるけど、前の住人の気配というか、片鱗みたいなものを感じることは多々あった。怖い意味ではなく、庭に植わった植物から「緑が好きな人だったのかな」とか、隠れたところにキャラクターのシールを見つけて「子どもがいたのだろうな」とか。
当たり前だけど住む人が変われば家族形態も状況も家の使い方も違って、とある理由から舞台となる家が「不幸の家」と噂する人もいたのだけど、実際は…という物語。
そしてどの家族にも、隣の宮本さんは穏やかに関わっている。
新しかった家はいろんな家族のいろんな思いを通り過ぎながら古くなり、いつか使えなくなり朽ちていく。
たまたまだけど家にまつわる物語を連続で読んで、自分もその歴史の一端なのだな、と思ったりした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
町田そのこさんは、本当に不幸を書くのがお上手。
でもちゃんと救われるから、救いがあるから
悲しい気持ち100で終わらない。
サクサク読める連作短編集でしたー。 -
短篇同士がつながる家。
スルスル読めて、最後まで一気に。
女って大変!な作品たちです。
代表作の52ヘルツのクジラたちを早々に読みたい。 -
ものごとの視点を変えてみる。
少し視点を変えてみるだけで
“不幸”だと思っていたことも
“幸せ”だと捉えられるようになるかもしれない。
自分にとっての幸せ、それは自分にしかわからない。
自分でしっかりわかっていれば、もはやそれでいい。
そんなことを教わった一冊でした。 -
一つの家に歴代住んできた人たちの話。
辛い、苦しいからの幸せの短編集
とても良かった。
けれど辛い部分も多いからこそ、最後はもっと良いところを続けてほしかった。そこが少し不完全燃焼。 -
良い…
良かった…
題名からは「コワイ話?」と思うが
読んでいくと,どんどん先が読みたくなる。
そして,町田さんらしく
その人に寄り添う温かいストーリー
章が変わる度に涙してしまう。
最初から最後まで良かった。 -
町田そのこ作品とは相性が良いようで、本作もとても満足。舞台は一軒の家でずっと変わらないが、それぞれ違う時間の各話が、一本の糸で繋がっていくような構成はとても好きだった。結構胸糞悪い人たちも出てくるししんどい展開も多いが、他の作品同様、上手く浄化して流してくれるので、さらっとした読後感で晴れやかな気持ちになる。どの話も良くて、相変わらず展開が上手いので、泣かされてしまう場面も多かった。エピローグで、ああ、そうか!と気付きニヤついた。
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しあわせは人から貰ったり人から汚されたりするものじゃない。
不幸の家と呼ばれる一軒家に住んだ人々の物語が短編集のようになっている。前の住人へと遡る形で物語が繋がっていく。
最後に譲と惣一が再開する場面が感動的で、じんわり心が温まる小説だった。
特にさなぎの家が泣けた。 -
それぞれの人の心情を丹念に描く小説でした。いろんな人にフォーカスされて話が進むのだけど、あまり納得感がなく・・・・。