大日本帝国の海外鉄道

著者 :
  • 東京堂出版
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784490209112

作品紹介・あらすじ

日本統治下にあった台湾、朝鮮、樺太などに敷設した鉄道は、どこを通り、どんな列車が走っていたのか。また、現地の通貨、内地と異なる切符、時差や旅館など、当時の人がどのような鉄道旅行をしたのかを詳しく解説。

感想・レビュー・書評

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  • 日本の植民地支配下における鉄道について記載されています。丹念に調べて書いているので、知らないことも多く、楽しかったです。

    この本を読んで知ったこと。
    ・満州だけではなく、中国に渡航するのもパスポートが不要だったこと
    ・時差があり、その時差も都度都度変わり、32分とかいうすごく中途半端な時差のところもあったこと
    ・各地とも、内地発の周遊券がすごく充実していたこと
    ・各地に相応の私鉄があったこと。金剛山、阿里山と言った著名な山岳観光地は私鉄だった
    ・南満州鉄道は、満州の一部を担っていたにすぎなかったこと
    ・満州国成立以前の通貨のめちゃくちゃぶり


    と、鉄道を通して、当時の状況の一端がわかります。
    欲を言えば、樺太についてはもう少し記述があるといいかと思いました。

  • 戦前、大日本帝国の影響下にあった台湾、朝鮮、関東州、満州、樺太、南洋群島の鉄道事情について。鉄道マニア向けというよりは、当時の観光客であったとしたらという目線で書かれているのでとっつきやすいし面白い。
    戦前の日本の今よりも広かったというのは知識として知ってはいても不思議な感覚。

  •  台湾・朝鮮・関東州は交通網が整備されて治安も悪くなく、特に前二者は観光旅行の売り込みも結構なされていたようである。満洲は鉄道網はあれど満鉄附属地以外は治安に不安。樺太にも鉄道は作られたがそれほどメジャーな行先ではなかっただろう。南洋諸島ではさすがに産業鉄道のみ。当時の雰囲気が活き活きとわかる本、とまでは言えないが、鉄道マニア以外でも楽しめるだろう。瀋陽駅、旧ソウル駅をはじめ当時の建造物が今も残るところもあり、過去と現在の連続性に思いをはせることもできる。
     また、現在では日本人は日本国籍と旅券を持ち、日本国外では通関が必要で日本円が通じない、ということに何の疑問も持たないが、当時は必ずしもそうではなかったことを知った。

  • 「地球の歩き方」戦前版とでも言うべき本、面白かったです!
    ボリュームとしてはやはり満州が一番多いのですが、朝鮮・台湾はもちろん、樺太や南洋諸島にまで触れているのは唸らされるところです。
    船便から現地の交通、宿泊事情や運賃まで、謎に実用的すぎて、どうすればよいのやら。著者のこだわりぶりが気持ち良く、楽しく読ませていただきました。写真も多く、よりイメージがかきたてられます。

    昔、大連からハルビンまで列車の旅をしたのですが、この本を読んでいればもっと楽しめたかも。

  • ちょっとびっくりするぐらい面白かった。

    外地の鉄道といえばもちろん満鉄なのだけど、それ以外の台湾、朝鮮、樺太から南洋の産業鉄道まで網羅されている。
    割引切符について妙に詳細だったりして、著者の鉄道好きっぷりが伝わってくる(種本の『旅程と費用概算』(JTB)がそうなのかもしれない)。
    下関から釜山に連絡船で渡って、そこからハルピン行きの特急に乗り、シベリア鉄道で欧州へというルートは胸熱である。連帯運輸をしていて、東京発ロンドン行き、という通しの切符も買えたらしい。新幹線の「ひかり」「のぞみ」は、当時の鮮満直通急行の名前だったそうな。
    満州は鉄道付属地の特殊権利をめぐる紛争地だったが、終戦時点では全中国の鉄道路線の半分以上が満州に集中していたという。ロシアの東清鉄道に乗り換えるときは、当時ロシアはユリウス暦だったので23分の時差と13日の日付戻しがあったとか、軌道幅が違うので乗り入れもできないとか、話題満載である。今のチベットや新疆も北京時間だけど、他国(内地)の標準時に合わせるのは、噴飯ものだっただろうな、とも思った。

    1934年建設の撫順駅はウィーン分離派様式で現存していると書いてあったので、まじ、と思って検索したら今はこんならしい。
    http://blogs.yahoo.co.jp/yosihei8jp/50075342.html

    分離派というのは、こういうキリッとしたのを言うのであって、現状の内観の酷さはまったくもって残念なことである。当時がどうだったのかはかなり気になる。
    http://www.linea.co.jp/info/detail/iid/600


    台湾の山岳鉄道は今にでも乗りに行きたいし、樺太にもいつかは行きたい。
    そういえば、昔、卒論で新京の都市計画やりたかったのを思い出した。もちろん既往の研究があるので駄目だしされたけどw

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著者プロフィール

昭和50年、東京生まれ。早稲田大学法学部卒業、筑波大学大学院ビジネス科学研究科企業科学専攻博士後期課程単位取得退学。日本及び東アジアの近現代交通史や鉄道に関する研究・文芸活動を専門とする。平成7年、日本国内のJR線約2万キロを全線完乗。世界70ヵ国余りにおける鉄道乗車距離の総延長は8万キロを超える。平成28年、『大日本帝国の海外鉄道』(現在は『改訂新版 大日本帝国の海外鉄道』扶桑社)で第41回交通図書賞奨励賞を受賞。 『鉄道と国家──「我田引鉄」の近現代史』(講談社現代新書)、『旅行ガイドブックから読み解く 明治・大正・昭和 日本人のアジア観光』(草思社)、『宮脇俊三の紀行文学を読む』(中央公論新社)、『アジアの停車場──ウラジオストクからイスタンブールへ』(三和書籍)、『「日本列島改造論」と鉄道──田中角栄が描いた路線網』(交通新聞社新書)など著書多数。日本文藝家協会会員。

「2022年 『アジアの一期一会』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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